「細田監督(守)が伝えたい気持ちは伝わった...」果てしなきスカーレット CBさんの映画レビュー(感想・評価)
細田監督(守)が伝えたい気持ちは伝わった...
よき政治を行なっていた父を殺して王位を奪った叔父への復讐に失敗し、生と死・過去と未来が交じり合う「死者の国」で再び復讐に全身全霊を傾ける主人公(デンマーク王女)と、現代日本からきた看護師男性の話。
復讐の旅を進める中で主人公が耳にした、処刑される前の父が言った言葉。「許せ」。いったい誰を許せなのか、なにを許せなのか? そして最終地点でたどり着く「許せ」の真意。それは「こんな父を許せ」でも「どんなひどい相手でも許せ」でもなかった...
監督の思いは、映画館でぜひ観てください。そのメッセージは多くの人に届くと思います。
そして主人公ふたりの声を担当した芦田先生(愛菜)と岡田さん(将生)の見事さを堪能してください。
「ハムレット」は父王を叔父に殺された主人公が、(幽霊となった)父王から「必ず復讐をとげろ」と言われ復讐すべきか生きるべきか悩む話。本作は似たプロットをとりながら、「許せ」という言葉に悩む話。
---------- (以下はネタバレを含むので、まだ観ていない方は観てからどうぞ) -----------
剣を習い民のために「自分は復讐を果たしよい政治を取り戻さねばならないのだ」と思い込み行動し続ける主人公。彼女に最後に訪れる悟りは、「どんな環境下でも、あなたは何かに縛られる必要はないんだよ。あなたが望む姿でいていいんだよ。あなたの人生なんだよ」というものだったと思う。それが「自分を、許せ」という父の言葉。「陰陽師」(夢枕獏)であれば「自らに呪(しゅ)をかけるな」と言うところだろうか。
細田監督は、世界で進む憎しみの連鎖に大きな危惧を抱いているのだろう。このきな臭い時代だからこそ、多くの人に言葉を伝えたかったのだと思う。俺も同感だが、今回の作品は、正直なところ監督が得意なジャンルではなかったように思う。監督には、もっと生活に近いアニメを自由に撮ってほしい。
一方で、様々な新たな取り組みがこなれてないだけかもしれないので書いておく。プレスコアリング (セリフを先に録り絵を後からあわせる手法)」は声優選択上の制約を限りなく減らすだろうし、「モーションキャプチャー (俳優の動きをデジタル的に取り込み動きを表現する手法)」は人間らしい動きを容易に描いてくれるだろう。CGを動画背景として前にアニメを置く手法も取り込み、かなり意欲を見せていると思う。
男性看護師がもうひとつ感情移入しにくい役割になっているのが残念。王女の激しい感情と動きと対比するためがあるのだろうが。スカーレットに投入したエネルギーの1/3くらい使ってほしかったな。
おまけ1
芦田先生(愛菜)は舞台あいさつで「本当の自分を見つけて、自分自身を好きになる話ではないか」と話したそうです。
おまけ2
上手なダンスは描きやすいが下手なダンスを描くのは意外と難しいのかもね。
おまけ3
龍の意味合いはわからなかったな。死後の世界では、善も悪もなく単なる災害として龍の落雷があるということだろうか。多少都合よく起きたとうに感じるきらいはあるが、なにか意味があるのかもしれない。
おまけ4
大量のアニメ映画の予告を観て、現在のアニメ人気を再確認した。コナン、アンパンマン、ドラえもん、プペル、迷宮のしおり、…。中に東野圭吾原作「クスノキの番人」があると聞き、実写ではどうにもうまくいかない東野原作がアニメでブレイクしたらそれはまた嬉しいことだけどなあ、と期待した。
おまけ5
映画館は、割と若者が多かった。「渋谷でのダンスシーン、腹が痛いほど笑えたわ」という女性に「それでもあんた、笑いすぎ」と答えた友人、災難でしたね。俺も若かったら笑ったかもしれないけど。
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