「酷評する程不満はないが、絶賛するにはベタ過ぎる」果てしなきスカーレット ちっちゃなきょゥじんさんの映画レビュー(感想・評価)
酷評する程不満はないが、絶賛するにはベタ過ぎる
ハムレット風に言えば「観るべきか、観ざるべきか、それが問題だ」った作品。細田作品なら「時駆け」「サマウォ」は笑えて楽しかったし、「おおかみ子供」は溺愛してる名作ですが、以降の3作はピンと来ず、劇場から遠ざかりました。本作も悪評が千里を走り、公開から暫く躊躇っていましたが、Radio Showでの塙さんの賛辞に誘われて鑑賞しました。結論から言うと、酷評する程不満はないが、絶賛するにはベタ過ぎるという印象。とは言え、ベタではあるがヒロインの「気付き」で締める素粗な展開は嫌いじゃありませんでした。
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1. 復讐心を煽る世界の中心で、ベタな説教が叫ばれる
死者が彷徨う世界の映像表現も、復讐に駆られるヒロインのやるせなさも、悪くない幕開け。ただ、復讐モノは主人公にどこまで共感できるかが肝。父を死に追い込み、自身に毒を飲ませた相手への恨みは、観客として忖度できる。それでも、父の殺害にも毒を盛るもに直接関与していない部下(っぽい兵士)まで、ヒロインが怒りのままに切り裂くと、鬱憤晴らし?と冷めてしまう。
父が残した「赦せ」の言葉。繰り返される21世紀感覚な聖の説教。脈略なく現代の日本人が登場するのは奇異だが、中世の騎士道では身内が殺されたら復讐こそが正義だった筈で、「復讐の連鎖を断ち切る」なんて近代的主張は、現代人の登場が必要不可欠。キレイ後と馬鹿にされても、暴力に暴力で対抗し続ける限り、連鎖は止まらない。だからどんなにベタでも、Scarletが断腸の想いで剣を捨てる展開には共感。ただ剣を拾った宿敵が雷に打たれて塵となる処は、ベタが連続しすぎて、安田大サーカスまで登場しそうだった。
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2. 心が動いたプラトニック・ラブ
序盤は反発しあう二人だが、聖の分け隔てのない治療や、住人に溶け込む心の壁のなさや、自身に対する気遣いにScarletも心を開く。そして、聖との永遠の別れを察した瞬間に溢れたScarletの想いにキュンとした。それは、恋心までいかずとも、友情には留らず、始めて”恥ずかしい”脇の下を見せた異性に対する想いだったに違いない。
惜しむらくは、恋心が復活後に活かされなかった事。眼下のかなり離れた位置に居る臣民とScarletが、謎に普通の声の大きさで会話できちゃうシーンなんて要らないから、Scarletが数ある求婚を断って独身を通したとか、Scarletが産んだ第一王子には"Hijiri"という風変わりな名前を付けたとかいう後日談がほしかったです。
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