「天才的アニメーションと不可解な作劇が一体となった怪作「許せない!許せない!」」果てしなきスカーレット pinkarataisoさんの映画レビュー(感想・評価)
天才的アニメーションと不可解な作劇が一体となった怪作「許せない!許せない!」
開始してからタイトルが出るまでの数分間、死の国の描写と彷徨するスカーレットの迫力がすさまじい。低評価の予備知識がなければ傑作を期待していたかもしれない。「めちゃくちゃ面白くなりそう。でも、これからつまらなくなるのかな?」とハードルを下げて鑑賞することができた。結果、最後までがっかりすることはなかった。
しかし低評価もやむなしと思わせる不可解な部分が多い。
「復讐心に苦しむ」→「愛を知る、復讐のむなしさを悟る」→「赦しと解放」
という精神的過程を描くストーリーになるのかな?
となんとなく予想しながら見ていたが、精神的葛藤と変容はあまり説明されない。
王女はずっと「許せない!許せない!」 状態。
彼女に変化を与えるはずの善意の日本人看護師が登場するが、彼がどう効いているのかよくわからない。
ところが、ラストで決定的に影響を与えていたことが分かって驚愕。しかも彼のことを好きになってた。そのうえ、未来に生きる彼が幸せになる世界を頑張って作ると宣言。
唐突に感じたのは自分が悪いのかもしれない。途中少し寝ていたから重要な描写を見逃していた可能性がある。
終盤、唐突に「自分を許す」ことが復讐から解放される方法だとスカーレットが悟るが、突然過ぎて理解不能。こちらはそれまでスカーレットが罪悪感に苦しんでいると思ってなかったのでかなり不意打ち。
「復讐の連鎖を断つ」ことの難しさを毎日感じている観客に対して、納得できる答えを提示できるのか?細田さんはこの問に真摯に向き合ったにちがいない。多分、考えすぎてよくわからなくなったのだろう。その真剣さを感じられたので理解はできなくても不快感はなかった。
自分は「竜とそばかすの姫」の児童虐待への対処が本当にゆるせない派なので、あれと比べると今作は嫌悪感を抱かせないだけずっと良い。
女王就任演説と喝采を送る国民の「お花畑感」も凄烈。しかし、これは過度な楽観主義に対する皮肉の可能性まである。
ストーリーの不可解な部分はあるが
復讐に取り憑かれた美少女剣士が好きな人には120点の映画 。
視覚的にはこれまでの細田作品で一番好きかもしれない。
声優の芦田愛菜さんが批判されているが自分は良いと思った。
面白いし、考えさせられる映画だった。
期待の裏返しの低評価が目立っているが、興味がある人は評価に惑わされずに見てほしい。
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