「素直に面白かったんですけど・・・」果てしなきスカーレット 椿六十郎さんの映画レビュー(感想・評価)
素直に面白かったんですけど・・・
シェークスピアだハムレットだを知らないと面白くないだとか、逆に知っている人にとっては面白くないだとか、どーでもいい。
生と死、過去と未来が入り混じる混沌世界の中で実によく物語が「わかりやすく」描かれ構成されている。生きるべきか死ぬべきか、許すとは何か、私くらいの年齢になるとこれらの哲学的な「問い」に関して何度か出会い、考えることがある。読み物や舞台や映画も、少なからず良い作品の中にはこれらのテーマが色濃く反映されていることがある。スカーレットも同じだ。混沌とした地獄とも天国ともつかない、未来を生きた者も過去に生きた者も同じ空間に存在するこの世界では、死んだ者がまるで生きていた時のように生活していて、この世界での死(つまり2回目の死)が「虚無になる」という表現が好きだ。皆がこの「虚無になる」ことを本当の「死」として恐れている。この世界観を受け入れられないと作品は意味不明で面白さを感じられないのかもしれないが・・・
難しく考えることはない。作品のテーマのように、自身の心の開放をこの映画からつかみ取ってほしいと思う。
と言いながら、残念だった点を2つ
些細な点として、ラストに近づくある部分から、明らかにそれまでの作画クォリティーが落ちたと感じてしまう点。あれはわざとか?演出か?
もう一つは、スカーレットの声だ。芦田愛菜さんが悪いんじゃない。彼女の声は優しすぎて柔らかすぎて激烈な主人公の生きざまに声が合わないのだ。スカーレットの強烈な人生の歩みの中で腹の底から沸き起こる怒りの声、力強い声には向かないのだ。絶対に負けない!復讐の鬼と化したスカーレットの声は、もっと攻撃的で威圧的でその恫喝に男どもがひるむのもうなずける、そんな声じゃなきゃダメなんだ。その声だからこそ最後に自身を「許す」時の優しい本来の王女としての民を前に語る声が生きるのに。最初からずっと優しい声のままでメリハリが作れない点は、プロの声優さんにすべきだったと残念に思った。これがクリアされていれば、☆5を胸張ってつけられた。繰り返すが、芦田愛菜さんが悪いのではなく、この作品に彼女を選んだ側に問題がある。
追記:ラストシーンでのクローディアスの絶叫を聞くまで、声の主が役所広司さんだと気が付かなかった。あの絶叫シーンで初めて、声が役所さんだと気が付いた。役所さんの声の演技はすごかったことの証明だ(私の勝手な基準ね)
それにしても、よくよくキャストを見ると声優さんが逆に全然いないということに気が付いた。
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