「3DCGが素晴らしい、キャラクターのアニメーションが素晴らしい、声優陣の演技が素晴らしい、音楽と効果音も素晴らしい…のに。」果てしなきスカーレット kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
3DCGが素晴らしい、キャラクターのアニメーションが素晴らしい、声優陣の演技が素晴らしい、音楽と効果音も素晴らしい…のに。
「美女と野獣」の次は「ハムレット」だった…いったい、どこへ行こうとしているのか、細田守!!
暗殺された父王の復讐に燃えるハムレットをスカーレット王女に置換え、オフィーリアとホレイショーをミックスしたような役回りとして現代の日本人看護師を登場させている。
そして、物語の舞台は死後の世界という、完全オリジナルな世界観を創り上げている。
この創造力は買うが、物語として処理しきれていない感がある。
主要キャラクターは主人公のスカーレット(CV:芦田愛菜)、敵役の叔父王クローディアス(CV:役所広司)、看護師の聖(CV:岡田将生)で、彼らの心理描写、特に復讐心に固まっていたスカーレットが赦しに目覚めるキモの部分に説得力がない。
スカーレットと聖との関係発展も唐突な印象だ。
芦田愛菜の熱演もさることながら、スカーレットの表情・動きのアニメーションが素晴らしいだけに惹き込まれそうにはなるのだが、「いや待てよ、なぜそうなる?」という疑問が頭をよぎってしまうのだ。
スカーレットは登場時点で復讐に失敗して死んでしまっているという意表を突いた設定なのだが、仇のクローディアスも死んでいた…😱💦
父アムレット(CV:市村正親)の処刑に手を下したヴォルティマンド(CV:吉田鋼太郎)もコーネリウス(CV:松重豊)もこの世界にいたということは死んでいるということで、みんな死んでいるのならスカーレットはいったい誰に仇討ちをしなきゃならないのか…。
これではわざわざ死後の世界を舞台にする必要はなかったような気がするのだが、そこで苦肉の策が〝虚無になる〟という死後の世界でさらに死ぬという設定なのだ。
死後の世界というが、〝虚無〟という本当の死に堕ちるか、〝見果てぬ地〟といういわゆる天国的な高みに昇るかの境目の世界なのだそうだ。
これはこれで独自の世界観として面白くはある。
どうやら、細田監督はコロナに感染して悪化するか改善するかという境目を経験したらしく、その体験が色濃く反映しているのだとか。聖を看護師にしたのも、その時に献身的に看護してくれた医療従事者がモデルになっているようだ。
たが、しかし…。
〝ヨーダ〟か〝マモー〟みたいな老婆(なんとCVは白石加代子)を狂言回しとして登場させ、この老婆にチョコチョコ説明させるのがいけない。説明しすぎて説明が成立しなくなっているのだ。いらぬ講釈だったと思う。
聖にケガの手当てをしてもらうことで、スカーレットに聖がもつ献身的な心=赦しが目覚めた…ということだと思うが、こういうところも細田監督の思いが熱すぎて空回りしている。
挙げ句、現世でスカーレットに演説をさせ、臣民にベタに呼応させるのがあまりにも蛇足だ。
これで締めたかったのなら、やはり死後の世界などではなく現世の暴君打倒物語で良かった気がする。あ、それじゃこの映画自体が成立しないか…。
声優陣は、プレスコとアフレコの両方で演じたらしい。
絵コンテだけで声の演技を先行させ、声に合わせてアニメーションを作った部分と、アニメーションに合わせて声を当てた部分の両方があるということだ。
どっちの声を採用したのかは監督のチョイスだと思うが、特に芦田愛菜とスカーレットの演技の融合という点においては、これは成功していると思う。
個人的な好みの問題かもしれないが、3DCGの背景に線画の人物を乗せていることにどうも違和感を覚える。
砂漠や森、土煙や水の表現、特に終盤で出てくる海の風景など、実に見事な3DCGなのだが、実写と見紛うような(実写以上に美しい)背景と、セルアニメ調のキャラクターが融合していないのだ。
『未来のミライ』からか、細田監督作品のCGの使い方に疑問を感じているのだが、技術が発達していることでその違和感は増している。
『スパイダーマン:スパイダーバース』や『野生の島のロズ』などのキャラクターと背景の融合性をみてほしい。
途中、いかにも作り物っぽい渋谷の街で踊って歌う場面が唐突に出てくる。
その前に聖がハワイアンみたいな下手な踊りを披露する場面があり、このお遊びが細田監督の持ち味でもあるのだが、ハマれない人はドン引きしてしまうところだろう。
ロトスコープで作られていると思われるダンスシーンだが、なんだか芦田愛菜が踊っているのではないかと感じさせる気持ち良さを私は味わった。
それにしても…芦田愛菜は歌もいけるとは、恐れ入りました。
コメントありがとうございます。
映像は見るに値するんだから、薄っぺらい哲学なんか捨てて、ストーリーテリングに徹すればもっと評価を得られたと思います。
『ハムレット』とはかけ離れた作品を作るんだったら、なんのための『ハムレット』なんでしょうね。
kazzさん コメントありがとうございます
残念ながら私には、どちらかと言うと商業的な作為をより強く感じます…
余りにもレビュー点数が低く興行的にも大変苦戦しているのでお金を出した側としては少しでも取り戻したいと思うのが普通ではないですか?まぁ勘ぐり過ぎはよくないですが…
kazzさん、コメントどうもありがとうございます。
熱いレビューですね。
作品の評価は、私の場合は好きかどうかです。レビューの仕方も自由ですし、「みんな違ってみんないい」と思います。お氣遣いありがとうございます😆💕✨
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