「素晴らしきスカーレット!」果てしなきスカーレット soupさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしきスカーレット!
脚本がとか、設定がとか、色々酷評されているのでどんなにつまらない作品かと興味本位で鑑賞しましたが…素晴らしい映画でした。死後の世界…多分完全な死後の世界ではなくこの世とあの世の中間地点、リンボー涅槃の世界だと思いますがその描写が素晴らしい。涅槃の世界で死を意識すると本当の死の世界へ行くという設定でしょう。涅槃の世界は実際には肉体や物体のない意識(イマジネーション)の世界なので、突然に人が現れたり、場面が変わったり、変な生き物がいたりなど問題なく観られました。涅槃のほとんどの登場人物がスカーレット世代の人々であることもこの世界がスカーレットの心象風景であることを示しています。唯一、聖だけが例外なのは「時をかける少女」と似ています。導き手である老婆は黒澤明監督「蜘蛛の巣城」のもののけを連想させます。細田作品の主題は自己実現であると思います。これまでの作品も「家族になる」、「母になる」、「父になる」、「兄になる」、「人になる」…などがテーマでした。人になるをやった以上、今度は何を見せてくれるのかと思っていましたが究極の自己実現でした。魂の救済ともいえる本作のテーマは単純なストーリーながら奥深いです。涅槃の世界における景色も人物も出来事も実は全てがスカーレット本人による心象風景であって現実ではないのではとも思います。同時に鑑賞者達も自分だったらどうするのか?殺戮に殺戮を繰り返し、最後に仇討ちをすることで本当に心の満足がえられるのか…それとも…を考えながら観るのも良いかと思います。映画監督の中には自分のトラウマを作品にして自己解消するタイプの方がいます。ティムバートン監督などがその典型であり、彼の初期作品は常に他人に理解されない孤独がテーマでした。それが「マーズアタック」で理解なんて不可能なんだで決着をつけます。細田監督も似たような作風です。本作まで行き着いた先には一体何を作るのか?果たして作れるのか?次回作を楽しみに待ちたいと思います。
追記…これは私の妄想ですが…本作は恐るべき傑作です。以下、もろネタバレです。
以下のことを念頭におけば本作の理解が深まると思います。気になったのはスカーレットが覚醒した後に演説する際の民の数の多さです。あり得ない数の国民がいます。まさに世界に問いかけているようです。あの群衆の数はスカーレットの見ている世界が現実ではないこと示しています。つまりあのシーンでさえ彼女の心象風景です。
1.スカーレットは最後まで昏睡状態で死んではいない。
2.スカーレットはラストで覚醒していないし、憎き叔父も毒杯で死んでいないし、彼女は女王にもなっていない。それは彼女にとっての都合のよい妄想である。
3.スカーレットが常世で見ている世界は彼女の精神世界の深淵であり心象風景である。
4.その風景を見せて導いているのは死んだ父親の魂とこの世の理。
5.聖や未来世界とのつながりは彼女の精神世界である。
6.この映画は復讐心で苛まれた哀れなスカーレットのスカーレットによるスカーレットための魂の救済物語。
7.「未来世紀ブラジル」の妄想シーンが本作の全編になっていると解釈すると分かりやすい。
👏
子供は「こんな大人になりたい」という人物を自分とつなげて、脚本を描きますね。アムレット王は「のびのびと」と返す。そして細田守はのびのび映画の第一弾を作ったかもしれません。細田も守もぶち壊すための映画を:)
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