「此岸と彼岸」果てしなきスカーレット としちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
此岸と彼岸
歳をとって徐々に映画館に行くのが億劫になってきたのですが、あまりの酷評の嵐に返って興味をそそられ『果てしなきスカーレット』を見てきました。
ズバリ、お子様の見る映画ではないです。その点、宮崎駿の『風立ちぬ』『君たちはどう生きるべきか』と同じ。
私は一度だけ、最悪の金縛り体験をしたことがあります。その際、体がドブ沼の底へ沈むような「落ちる感覚」と共に、どこの誰かも分からぬ叫び声を「聴き・感じた」のですが、スカーレットが暗殺に失敗後に毒で死にゆく際に体験した「あの状況」はまさしく「それ」と同じ感覚でした。まさか40年前の感覚を呼び起こされるとは思いませんでした。
時代や時の交差する地で巻き起こる現象。脈絡なく現れる敵とか。場面の移り変わりなど。これなどはもはや哲学の話であり、「人とはなんだ?命とはなんだ?」と冒頭から問うてくる、あの老婆と共に見る人が考え、感じるほかないもの。
私は小学生時代に国語の時間で読まされ、気味が悪くて大嫌いだった宮澤賢治の『注文の多い料理店』のことを思い出しました。此岸と彼岸とは、隣り合わせで表裏一体。心象風景の、妄想にして現実の、過去と現在と未来の交差した「あの世」の顛末(ちなみに今は宮澤賢治さん、大好きです。とてつもないイマジネーションの嵐。読むといまだに頭がクラクラしてくる)。
物語の終盤に現れた「門」は、彷徨う「ヒト」にとって固く閉じられた門だが、反射して下方に映し出された門はすでに開かれていた。天国の「門」を閉ざすのは、今の段階の文化・宗教・教養・知性等に縛られた「ヒト」のマインドのせいであると暗示していたのだろうと。
どうやら酷評は主に監督の脚本についてが大多数のようです。私は前作の『竜とそばかすの姫』も大好きだけれども、ちょっとありえない脚本の粗が気になり、それでも何度もリピートしてしまったのでした(エガチャンネルでも江頭2:50さんが分かりやすく解説していてすごいな、と思ったり)。本作品は、前作よりずっと一本筋が通っていましたので「脚本」が悪いとは私は思いません。
まさに仰られる通りで若年層(ここに書かれるレビュアーの層かな。。。)には到底理解不能の話ではあるものの私はこの作品、義務教育課程の人達に是非見て欲しいと思いました。それこそトラウマになるくらいのこの作品の映像で脳内に焼き付けて欲しいと。残念ながら初老の世代にはもはや解決しえない問題をストレートに表現した今作は少壮の世代にこそ観て頂いて世界が少しでも良い方向へ向かっていく事を願わずにはいられませんでした。
ちなみに世間的に酷評だった事は全く露知らず予習は一切せず公開の翌日に観てきた自分ではありますが、脚本がダメとかではなく突拍子もない表現が気にかかった程度で酷い作品とは思いませんでしたね。
一度見ただけでは細かい部分の理解が照合出来なかったので打ち切りになる前にもう一度観てきたいと思っています
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