「王女様の傷をどう癒せばいいのだろう」果てしなきスカーレット ざむざむさんの映画レビュー(感想・評価)
王女様の傷をどう癒せばいいのだろう
激辛レビューが多くて正直見に行くのが怖かったです。だけど、細田アニメは、子どもに見てもらいたいコンテンツなんで、行かなきゃいけないよな、とも思いました
細田アニメに出てくるヴィランは強くても未熟で心に傷を負っており、これは問題を抱えた子どものメタファーなのだなと、解釈してしまう。主人公は戦っているようで、実はヴィランを救っているという構成が、たとえ君が悪い子でも私は見捨てないというメッセージを私のような弱い親の代わりに子どもたちに語ってくれているような気がして、やっぱ応援しなきゃなと思った次第。
五百年前の英国演劇の翻案だと飲みこんでいれば、おおげさな表現や図式的な人物像などなど指摘されている「欠点」は気にならない。むしろ欠点を改めたら、妙な現代感がスケール感は損なうのではないかと思いました。
古典を下敷きにしたファンタジー史劇として傑作だと思いますし、シュールな構成も刺さる人には刺さると思います。
強くても無敵ではなく、強靱な意志があっても未熟、傷を負って汚れることを厭わないヒロインは今風に魅力的でした。
問題は十分なカタルシスを味わえないという点でしょうか。
つまりスカーレットが救われた感がない。
復讐に取りつかれた狂戦士である彼女は、過去作だとヴィランとして現れるような存在ではないかと思います。説明不足ではありますが竜は彼女の暗黒面だと過去作から推測できます。15世紀の王女は母と叔父に裏切られ、21世紀の彼女(たぶん存在する)もおそらく深刻な家庭の危機に陥っているのではないでしょうか。
元気な男の子も歌姫も現れず、弱々しいパートナーと聞き取れない父の臨終の言葉を頼りに彼女は自分を回復しなくてはいけないのですが、物語上、救済の手立てを表現するエピソードに強さがなく、ハッピーエンドに無理矢理感が醸し出てしまった。
救われないのもまた道ではなかったか。
スカーレットは冥府の戦士として生きていくべきじゃなかったのか?ハムレットだって結局誰も救われず血まみれ惨劇として終幕します。最後に赤髪の少女だけが救われてエピローグを語ってもよかったと思います。これもシェイクスピアによくあるオチ。
ともあれここで救いを提示できれば世の中変わるぐらいの功績だったと思いますので、出来なかったことに怒るのは期待が大きかったのだろうなと受取っています。バッシングがマツリになっている、とは思いたくないですね。
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