「聖は生きている」果てしなきスカーレット ひよりんさんの映画レビュー(感想・評価)
聖は生きている
細田守監督の作品は金曜ロードショーで放送された『サマーウォーズ』しか触れたことがなかった。そんな細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』。
予告を見て「面白そう」という単純明快な理由で観たが、観賞前は全くの予備知識無しで臨んだ為「一体どのようなストーリー展開になるのか」と期待もしていた。
観終えた感想を一言で言えば、素晴らしい。
復讐とは?許すとは?生きるとは?愛するとは?
至ってシンプルなようで難しい哲学的な問いを考えさせられた。
また、16世紀から来た復讐に人生を捧げるスカーレットと現代の日本から来た困っている人を見ると放っておけない心優しい看護師の聖。
時代も住む国も生き方も対照的な2人が同じ世界で同時進行し、親密になっていく描写も良かった。
これほど心に残る作品は最近の中で一番であり、観賞から3日後の今も余韻に浸っている。
そしてこの作品を観た後、一つ思うことがあった。
聖は生きている。
ラストのほうで虚無になり、死んでしまったのでは?と思う方もいると思うが、聖は生きている。
なぜ生きているのか。
聖が生きている理由は4つある。
①虚無=死ではない
公式が使っている作品上での虚無の意味は「その存在が消えてしまう」。
スカーレットとの別れ際、聖の存在そのものは消えてしまったものの、死んでしまった訳ではないので未来で誕生する可能性も否めない。
②別れ際、聖への要求
別れ際、スカーレットは聖へ「未来が平和になれば聖は殺されたりしないよね?そのために私なんでもできることするから!そしたらもっと長生きして!家族を作って、子供を作って、いいおじいちゃんになって!」と願うように要求した。
もしも聖がこれから死んでいくのなら、スカーレットはこのような言葉を投げかけるだろうか?
どう考えても不自然である。
この時のスカーレットは「元の時代に戻って平和な世界を築けば未来で聖は生きている」と思った上での発言だろう。
③元の時代に戻ったスカーレットが平和な世界を築き上げた
映像にもあったように元の時代に戻ったスカーレットは平和な世界を築き上げた。そして世界が平和になったことにより数百年後に誕生した聖は殺されずにすんだのである。
④ 2034年の渋谷
スカーレット・・・16世紀(1501年〜1600年)のデンマークから来た。
聖・・・現代(2025年)の日本から来た。
スカーレットが気を失った時に見た、聖と一緒に踊っている場所・時代は2034年の未来の渋谷という設定で公式は「聖の存在する未来の世界」としている。
聖は2025年に死んでいるのなら2034年の渋谷で軽快に踊っていないのだ。
スカーレットと思しき女性は現代風の髪型と服装なのでスカーレットの子孫なのだろう。
元の時代に戻ったスカーレットは自分の本当の生きる意味を見出し、復讐に囚われていた人生から「子どもを死なせない」、「争いが無い平和な世界」を作り、聖のような心優しい女性としての人生を歩み始めた。
それが2034年渋谷で聖と踊っているスカーレットの子孫の表情が物語っている。
したがって上記の理由をまとめると、元の世界に戻ったスカーレットは王女として平和な世界を築き上げた→世界が平和になったことにより数百年後に誕生した聖は2025年に殺されず、2034年渋谷でスカーレットの子孫と軽快に踊っている。
聖は生きているのである。
ちなみに、スカーレットが目を覚ました時「(聖がダンスを)リードしてくれた」と呟いていたので、踊っていた2人は恋人なのだろう。
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