「作者の手には余ったテーマだったのか?」果てしなきスカーレット Tenjinさんの映画レビュー(感想・評価)
作者の手には余ったテーマだったのか?
自分以外は一人というほぼ貸し切り状態で見ました。平日の午後とはいえちょっと少ないですね。
映像や音は映画らしくゴージャス。CG作画も気にならないし、アクションシーンではその特徴がよく生かされていると思いました。
懸念だった主役二人の演技は思ったよりもずいぶんマシ。芦田さん演ずるスカーレットの、予告編における弱々しい声で印象の悪かった「復讐を…果たさなければ」は地面に倒されて苦しい状態で言った言葉なので、演技としてはむしろ正しい。それ以外の場面でも本職の声優に比べれば発声に不安定さはありますが、感情の乗らない棒演技ではまったくないので、及第点といえるでしょう。
問題はやはりシナリオだと思います。人生や愛といったかなり大きく根本的なテーマに対しての結論が弱いんですね。悪役の叔父王は最後まで悪いままで主人公との和解も何もないし、倒すのは本人じゃないし、何かを成したり成長したりということもない。途中の歌でも出てくるテーマの連呼が観念的なプレゼンテーションにしかなっていません。最後の場面で女王となった主人公の演説に説得力がないのもそのためです。
そういったおとぎ話のような結末でしめるのであれば、16世紀のデンマークという現代と地続きの世界ではなく、架空の世界にするべきだったのではないかと思います。
死者の世界が現実とあまり変わらないのも混乱します。普通に食事したり楽器を弾いたり、あるいは武器で戦ったりしていますが、それらのものや食べ物はどこから得ているんでしょうか。死んでから来る世界なのに、叔父王や王の取り巻きまでが来ているのも変ですね。ここまで差がないのであれば、単に文明の届かない辺境の地にでもした方がよかった気はします。あと、言葉の壁がないというか最初から自動通訳のように意思が通じていたのに、フラダンスの場面だけ急に外国語になっているのはどういう理屈なのかと。
というわけで、粗を探せばいくらでもある不出来な作品なのは確かですが、ここまで客の入りが悪いのは不思議ではあります。前評判の微妙さと公開直後の不評のダブルパンチなのかなあ?
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