「もやもやした」果てしなきスカーレット 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
もやもやした
細田監督には前から批判的だったのだけどあまりに評判が悪いので気の毒だし、期待値も低くして見る。ところが、死後の世界で現世と同じように意思を持って行動するし、死んでるのに更に死ぬと粉になる。死んでいるのにアホな王に仕えたり、難民生活を送るなどさっさと粉になった方がましではないか。王は王で死んでいるのに、死んでいる群衆を前に演説するなど、誰一人としてそれについて疑問に思う知性はないのか。その世界観を思いついた時点でボツにすべきなのに、そのまま進んでしまうため何が起こっても心に響くものはなにもない。
前から細田監督には、不細工で間抜けな者は死ね、くらいの心根を感じているが、今回はあまり気にならない。また、独自ルールの押しつけが本当に腹立たしくすらあり、ただそのルールがとてもひどいが現実世界ではないので、押し付けられてもそれほど気にならない。
スカーレットが聖の歌に大感動して現代の渋谷に意識がタイムスリップする。すると、渋谷の交差点でインバウンドの迷惑インフルエンサーのように踊りだす。それから避難民たちとの交流でフラダンスをするなど、物語の緩急なのかほっこりさせようと意図する場面が空々しく鼻白む。
聖の歌やエンディング曲など、いい歌でしょ~という押しつけを強く感じる。好みの問題だが、あまりよくない。
スカーレットの父が残した言葉「許せ」について、スカーレットはあれこれ考える。叔父を死ぬほど憎んでいて、その彼を許せなのかと思い悩むが最終的に、自分を許せに落ち着く。なにそれ。父を殺した叔父の罪を許すと、「こうあらねばならない」と厳しくする自分を許すが比較対象になるだろうか。随分軽くなるし、父親がそこまで見越して言葉を残すだろうか。
いろいろ文句を述べたが、格闘場面はとても痛々しくて死後の世界とは思えないくらいいい。
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