劇場公開日 2025年11月21日

「細田さんが思いついたものを何でも取り入れた結果、とっちらかって虚無となった。」果てしなきスカーレット somebukiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 細田さんが思いついたものを何でも取り入れた結果、とっちらかって虚無となった。

2025年11月24日
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「時をかける少女」「サマーウォーズ」「**おおかみこどもの雨と雪**」までは細田守監督と脚本**奥寺佐渡子のタッグを組み、宮崎駿の後継者に最も近いと期待されていたが、「バケモノの子」「未来のミライ」「龍とそばかすの姫」と細田守監督兼脚本になってから少し賛否が増えているなか、注目となった最新作。**

物語は・・・

王様の父が叔父によって殺された。娘のスカーレットは父の復讐を誓うが、結果は失敗。死者の世界で目が覚めたスカーレットは復讐心をさらに強め叔父探す中、現代の日本からやってきた聖と出会い共に旅していく。

シェイクスピアのハムレットの要素を取り入れた作品となっているが、ハムレットを知らなくても楽しめる作品となっている。

本作を作った背景として監督は

コロナが明けた後にまた戦争が起こったことについて絶望的な気分になり、「復讐」をテーマとして作品を作ろうと、今だから描ける復讐劇を描くと取り組んだらしい。

確かに絶えず起こっている戦争に対して、あらためて令和だからこその視点は非常に興味深く、大注目していたが、すでに口コミで叩かれているが、物語は正直イマイチだった。

まず良かった点は

空の海、巨大な龍、砂漠のような地上など幻想的で絶望的な死者の国の世界観やデザインは素晴らしかった。

細田映画にでてくる、現実と異なる世界の設定は毎回楽しみやし、今回は特に興味深かった。

現実世界と死者の世界、他の世界など世界のシーンによってセル、CGなど技法を変えるなど挑戦的な表現にも挑んでいる。

シーンによってスカーレット自身のデザインがかなり変わるので違和感は正直拭えないが、悪くはなかった。

また、スカーレットのアクションにはスタントアクションとしてベイビーワルキューレの伊澤彩織も参加しており、アクションシーンはカッと引き込まれる緊張感と没入感を表していた。

ただ、肝心な物語が要素はいいんやけど、ハイライトのようにトビトビになっており、キャラの人物像や物語の展開はほぼうまく描けておらず、「起承転結」の起から一気に結にたどり着いた印象を受けた。

物語としての情景描写が足りておらず、

話の深みやキャラの人物像が理解しにくい。

それなのに、キャラの感情表現だけはシンプルに感じた想いをそのままセリフとして発し過ぎている。

細かい話の内容に関して

ここから先はネタバレになります。

死者の国があまりによくわからない。

人や武器があるのはいいけど、馬など動物がいるのも違和感だった。

じゃあ、全動物たちも一度死んだものは存在するってことなのか?

死者の国に関して、もう一度死ぬと虚無になる以外の説明があまりになさすぎる。

龍が出てきたら、時に雷を落としたり、あれが一体なんなのか、死者の国の神なのか。

次になぜ死者の国でも王(叔父)が城をもっており、王の位置にいたのか。

おそらくスカーレットと同時期に死者の国に来たはずの王(叔父)は城は家来などをすでにもっているチートムーブしていた。

しかも、家来の四天王みたいなやつ全員死者の国にいるってことは死んでいるはずなんやけど、なんで部下がほぼ全滅なんて?

現世の時に実は、スカーレットの復讐によって殺されたならわかるけど、そんなこともなかったので、なぜ全員死者の国揃っているか納得できなかった。

あと、スカーレットが叔父の家来と戦ったあと、もし殺してしまっていたら今のままで良い。ただ、殺さず解放していたけど、そのまま着いていけばいいのでは?って思った。最初のコーネリアスなんて、負けた後にスカーレット達よりも先に城にもどって王と会っているんやから、解散させる意味がわからなかった。そのまま案内させるか、着いていくのが一番早いような。

今作で一番理解出来なかったのはダンスシーン。

細田さん曰く、「龍とそばかすの姫」を通して歌とダンスは映画自体を上げるものであると感じ、本作にも取り入れたらしい。

そもそも「龍とそばかすの姫」は歌が好きな主人公が母の死をきっかけに歌えず、ネットのアバターを通して歌姫になる物語で、歌がテーマになっている作品。

それを歌とダンスがあれば、いい感じになるっしょ、ダンスは自由の象徴だから!って思いつきで取り入れたのが本作な気がする。

フラダンスの部分はまだよいけど、渋谷っぽい街でスカーレットが妄想でダンスするシーンはさすがついていけなかった。

せめて、現世を想像して歌を聞くシーンならまだいいが、なぜダンスをしているのか?みんなで?2人でララランドみたいに踊っているのか?困惑を通り越し、笑ってしまった。

聖という人物像も結局よくわからん。

現代の日本からやってきた看護師の聖は、敵や味方など関係なく、傷ついた人をほっておくことはできず必ず治療する。死者の世界でそんなおめでたい人はおらず、特別な存在になっているが、そもそも看護師を目指した理由がまったく意味がわからない。もし、本音を隠した発言であるなら、どこかで本心が明らかにしてほしかった。

あと、なんで現代人なのにあんなに弓が上手いのか、いきなり馬に乗れるのか。できた当然見たいな動きが全く共感できなかった。(弓道部と馬術部の経験ありなら許す)。

また、戦わず治療に専念する彼が、ある時スカーレットを守るために人を殺すシーンがある。

これまでの聖の人物像を覆す瞬間で、葛藤が強く出てくるのかと思いきや、あっさりと弓を引く。しかも、殺したあとには後悔な悩むことなど一つもしない。

冒頭は工夫していたはずなのに、かなり直接的にもなっているし、治療もしない。

まるで、人を守るためには殺すことも迷わない人間へいつのまにか心が入れ替わったかのような。

後半さらにスピードを増していく物語が進む。火山が噴火し、「溶岩が流れてくるーやばいーっ、あ、頂上ついたね」っじゃないねん!

火山からのつながりはないのか?ただ怒りのように噴火しただけたのか、せめてスカーレットたちと紐付けてくれよって思った。

復讐に囚われてしまったスカーレットは死んでもいいから復讐したいと願うスカーレットがラストには「生きたい」と願う。

心情の移り変わりの描き方は正直足りていないが、そんなことよりもワンピースどハマり世代には、ラストの「生きたい」がウォーターセブンのニコロビンを想起させるシーンだったのも気になった。

(たまたまかもしれないけど)

自分だけかと、思いきや劇場から出る際に全く同じことを感じ、発言している方もいたのでワンピース世代にはあのシーンはひっかかるかも。

ラスト、実は生きている物が「死者の国」にいることが分かるんやけど、なんでなん?。

「死者の国」が実は生死の境目、いまゆる「今際の国のアリス」みたいな世界感なら納得できる。

たどり着いたものだけが、生き返るとかね。

ただ、スカーレットに関しては最初から死んでなかったらしいので、それならなぜ「死者の国」に来たのか、全くわからなかった。

パンフレットを読んだ結果

細野守が思いついたものを全て詰め込んだ結果、とっちらって虚無となった作品だった。

前半と後半の2部作にすれば、もう少し良かった気がする。

脚本の能力がないと言われているけど、これからの細田守監督、スタジオ地図の動きがより気になった一本。

somebuki
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