「果てしなき」果てしなきスカーレット ブレミンガーさんの映画レビュー(感想・評価)
果てしなき
予告編やポスターが続々出るたびに不安が増していったのですが、一発逆転あると願って鑑賞。
一発逆転は…無かったです…。
今まで観てきたアニメ映画の中でも1.2を争うレベルの大問題作だと個人的には思いました。
全体的に「ハムレット」を細田監督なりに新解釈して、監督の過去作品の要素を盛り込んでいった結果、ストーリーがドッタンバッタンしまくってハチャメチャで、もう最後の方は笑うしかないくらいには酷いなと感じてしまいました。
ハムレットをなぞっているのでスカーレットの父親が殺される過程もあったり、殺した主犯格の叔父を殺そうとして返り討ちにあったり〜とかもあるんですが、その中でゾンビみたいな奴らに襲われて沼に引き摺り込まれる様子はシンプルに謎すぎてちんぷんかんぷんでしたし、結局このシーンくらいしかゾンビは出てこないので必要か?とどうしても思ってしまいました。
様々な時代の死者が死後の世界に集まってくると言われている割にはスカーレットと生きている時代が近い人が多い気がしましたし、現代人っぽいのは聖くらいで、盗賊だったり貧民だったりばっかで、極論言えばスーツ着てる人間とか武士とかマンモスを襲ってそうな原始人とかそういうのは全く出てこないので、死者の世界が舞台装置でしか活きてないのも残念でした。
スカーレットの父親を殺したであろう叔父の部下たちに途中途中突撃していっては、ヒントをもらったり、父親の聞こえなかった言葉の真相を知ろうとする展開もあったりしつつ、そんなものを掻き消すレベルで聖の熱血漢というかバカみたいに突っ込んでいく姿勢が展開のあやをねじ伏せていくので大変イライラします。
盗賊がひたすら貧民を襲うところでやめろーやめろーと言っているだけでボッコボコにされまくるし、騎馬戦で聖が馬を乗りこなせているのはもう置いておいて、戦いを止めに行くと思ったら何にも策なしで突っ込んでスカーレットに助けてもらうとかいうバカプレーの連鎖で頭ガンガンしました。
途中で現代の渋谷に送り込まれた時は、現代と交錯して進んでいくのかなと思いきや、大量の人が踊り狂っている中に聖とスカーレットが何故か送り込まれ、何故かミュージカルを始め、聖とショートカットのスカーレットの謎ダンス、それを見てスカーレットが「もう1人の私?」と言っていましたが、コイツは何を言っているんだ?と観ているこっちの疑問符がバカデカくなりました。
スカーレットは人生をかけての復讐を企てているという壮大な前振りがあったにも関わらず、聖が現れたらどんどん、というかあっという間に懐柔されていき、スカーレットの芯の強いというアイデンティティや修行の成果なんかがバカらしく見えるくらい、穿った見方にはなってしまうんですが、スパダリイケメンに堕ちたようにしか見えなくて滑稽でした。
正直聖のどこに惚れんねん状態で、もうスカーレットもバカに見えてきてしょうがなかったです。
今の今までほとんど出てきてなかった死者が一つの国単位で一気に登場してくる割にはそこまで展開として活きないですし、誰と誰がどう争ってもみくちゃになっているのかも大変わかりづらい絵作りになっていてもう真顔でした。
最後の方の突然の山登りからの2vs2も謎で、ヌッと生えてきた2人の兵士とのバトルかと思ったら、1人は普通に転落していくという、黒く消えていくという設定を突然放り投げていたので困惑が増しました。
叔父との最終決戦も見応えという見応えはもう感じられず、叔父の目を潰すんじゃって勢いでスカーレットが襲うシーンがハイライトで、ひたすら白目になってる叔父が滑稽ですし、完全舞台装置な龍が都合よく叔父に雷を2発ぶちのめしてトドメを刺すあたりもう何を見せられているんだろう状態で、もう放心状態でした。
最後のシーンの聖がひたすらスカーレットに訴えかけるシーンなんかもう笑ってしまって、「生きろ」「生きたい!」の押し問答がパワープレイすぎましたし、脳裏にニコ・ロビンがよぎりまくってもう大変でした。
大切なことを言いたかったんだろうなとは思ったのですが、結局この問答にたどり着くのはなんと浅はかな…と悲しくなってしまいました。
スカーレットが息を吹き返してからの展開も非常に雑で、スカーレットがずっと昏睡状態だったのは置いておいて、なぜ叔父が死後の世界に居たのかの理由が誤って毒を飲んでしまったとかいう間抜けすぎる理由で死んでいましたし、それを見て母親がムキー!ってなってるのはもう観てられなかったです。
そこから女王になって高らかと宣言するシーンもなーんだか安っぽく、まず群衆が多すぎてなんじゃこりゃってなりましたし、ここまでの物語を送ってきて最後のセリフでコロッとおちる群衆チョロすぎない?と思ったままエンドロールに突入していったのでもう置いてけぼりです。
アニメーション自体はとてもクオリティが高く、登場人物の表情や、16世紀の服装や風景なんかの質感のリアルさは素晴らしかったです。
ただ個人的には細田監督作品に3DCGはあまり合わないなと思いましたし、CGと手描きの中間みたいなアニメーションがちらほらあったのはかなりノイズだなと思いました。
声優陣は芦田愛菜ちゃんは成長したスカーレットとは合ってなかったなと思いました。
ガキンチョの頃のスカーレットは合っていたのに、声質そのままで成長してしまっていたもんですから違和感が拭えなかったです。
叫び声がフェードアウトしていってたのもプツッとしていてモヤモヤしました。
岡田くんはばり上手くてスッと入ってきましたし、細田監督作品に関わってきた俳優陣大集合なのは見応えがあって良かったと思います。
既存の言葉を知っている用語と同じ意味で使うのもややこしさに拍車をかけていたなと思いました。
死ぬことを"虚無"と言い換えてはいるんですが、普通に死者の世界とか死んでしまうとか出てくるのに、虚無になりたくない〜とかほざいているので頭が痛くなります。
この作品を細田監督は本当に作りたかったのか、それとも幅を見せようとして失敗してしまったのか、とんでもない作品がまた世の中に現れてしまったなと思いました。
非常に語りがいのある作品ではあると思うので、そういう面では話題になるだろうなと思います。
鑑賞日 11/21
鑑賞時間 18:00〜20:00
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