「書きたいことが纏まらない」果てしなきスカーレット 肩幅さんの映画レビュー(感想・評価)
書きたいことが纏まらない
まだこの映画を見ていない人は、是非、大きいスクリーンかつ、人がスッカスカな平日昼間に見てほしい。
何故なら漏れた笑い声が他の人に届きにくいからだ。
正直、いま私は嬉しくて仕方がない。
数ヶ月に渡り大々的に広告を打った、ある程度の人数が鑑賞するであろう知名度のある、こんなすごい映画を、初日─しかも三連休前─に映画好きな大衆より先に見れたことが。
これからSNSで大きな祭りが始まると信じている。
私はそれを眺めて酒が飲みたい。
書きたいことが纏まらない、ので、とりあえず思いついたように書こう。私はねちっこい性格なので、衝撃を受けた出来事はずっと考え続けてしまう。きっと数年後でも思い出して何か追記することもあるだろう。
まずは個人的にこの映画の良かったところを挙げよう。
一つ、芦田愛菜さんを筆頭とした声優陣の演技が素晴らしかったこと。
二つ、各人の死に方が割と残酷だったこと。
以上だ。
とりあえず、今のところは以上二つのみだ。申し訳ないが、それ以外は基本的に良かったと言える箇所はない。
各俳優陣の演技の良さはもう言わずもがななので割愛する。今の疲れ果てた私の頭では「え〜!みんな上手〜!」くらいしか思いつかない。
恐らく、彼、あの〜彼というかアレと呼びたいが、ヤツは恐らくファンタジー世界で現実的にシビアに人間が苦しむ様が好きなんだろうということは、今までの作品からも察せられる。
私もそこは理解できるので、キャラクター達の死に様は結構良かった。2階から急いで駆け下りて出てきたら既に処刑されていたところ、脇のど真ん中に剣が刺さるところ。
それ以外はダメだった。
絵に関しても、3D映像は綺麗だが、細田守のあの繊細な雰囲気は消えてしまっていて、むしろのっぺりして見えた。映像が綺麗でも、絵が上手く見えない。
「綺麗」と「上手い」は明確に違う。
綺麗だからって上手いわけじゃない。
流石に少なくない本数の映画を見てきて、評論家と言えるほどの審美眼は一切ないし、映画に関わる技法なんかも知らないが、ただ、「意味がわからないけど面白い」ものの存在は感じている。
個人的には舞台演劇とか、宮崎駿の「君たちはどういきるか」なんかも正直全然よく分かってない。何言ってるか分からないけど、面白いものは面白い。
なぜ面白いと思えるかって、作者の思想が一貫していてブレがなく、それがそのままキャラクターやストーリーにも反映出来ているからだ。
しかし、これは意味がわからないだけで、普通に面白くない。
カットの度に別の脚本家がシナリオ書いてるのか?と思うほど、話がブツ切りで、登場人物の行動や言動が一致しないから。
場面転換のたびに話が進んでいるのは分かるが、そもそもこの世界の前提が何も分からないまま、どんどん画面だけが変わっていってしまう。
たまに腕時計で経過時間を確認していたが、覚えている限りでは開始45分時点で理解できていたのは、以下だ。
スカーレットが伯父に復讐しようとしていること。
何故か砂漠の世界を死後の世界と思い込んでること。
砂漠世界で死ぬと「虚無」になるらしいこと。
現実の世界と死後(今際)の世界があることは分かったが、なぜ死後世界の理をその世界にいる誰もが当たり前に理解しているのかは分からなかった。
例えば、死後世界で死ぬと「虚無」になることや見果てぬ場所が存在してることなど、それらを理解している前提に話が進むので、見ている私たちが置いてかれる。
※直前まで予定が押していて上映時間に1分か2分ほど遅れてしまったのだが、もしかして、その間にあの映画の中に出てくる世界(現実、死後世界含め)の理を全て話していたのだろうか。だとすれば惜しいことをした。
何も知らない私(たち)と同じ場所に立っているのは聖なのに、私たちは聖視点ではなく、基本的に何故か死後世界に順応してるスカーレットの視点なので、説明を受けられない。
死後の世界と見果てぬ場所の存在を全員が信じ込んでいることは自体は構わない。信じ込んでいる根拠を示してほしい。
全員が、死後世界に召喚された瞬間に何故か導かれる気がする、とかいうのでも文句は言わない。でも、そういった理由は私が最初に見逃した1~2分のうちに語られていない限り、知るタイミングが無かった。
実際は死後の世界に来た直後、らんま1/2に出てくるシャンプーの婆ちゃんみたいなヤツに色々吹き込まれるのかもしれないが、スカーレットの時はそんな話は無かったはずなので、やはり何故共通認識が存在してるのかが分からない。
この映画のように話が前後して申し訳ないが、スカーレットの王女時代の話がしたい。
父である王が殺されたあと、質素な服で過ごし地下で訓練するスカーレットを見て、私は真っ先にあの映画が思い浮かんだ。他にも同志がいてくれると嬉しいが、あの姫だ。白いけど白くない姫。
父王が処刑された後のスカーレットの扱いは結局どうだったのだろう。質素な様子で生活して地下で特訓はしていたが、伯父や母を含めた周囲の人間に迫害されていたり、ボロ雑巾のように働かせられていたり、兵士の一人として戦地に行かされたりはしていないように見えた。
死後の世界に行って早々、味方と名乗る人物達に裏切られた時に相当ショックを受けてる様子なので、城の中で図られるようなこともなく、毒入りグラスが初めての裏切りだったと見える。
つまりはそんなに悪い暮らしや扱いをされてるように見えない。そこまで可哀想に見えない。
彼女を主人公に据えるなら、やはり見てる側の復讐心にも薪をくべてほしい。
私はどうやら要約が苦手だ。まだまだ書きたいことがあるが、長くなりそうなので映画中に呟きそうになった感想を羅列する。
・聖以外の現代人は?医療知識のある人間は?
・おばあちゃんに楽器を習うシーン、最後の晩餐か?
・兵器は一体どこから来るのか
・おばあちゃんに貰った楽器ーーーッ!!!!
・お前ら死んでるから復讐止めても憎しみの連鎖断ち切れんやろ
・お前も容赦なく殺すんかい
・流行ったことにされてるダサ曲
・デンマークのコインだけで王女知ってる認定
見終わった後、ワンピースのオマツリ男爵を思い出した。
恐らく、細田守は昔から何も変わってないんだろう。
この映画を使った「話そう、もっと。」という広告があるが、もっと話すべきは細田守と、その周りの人々だと思う。
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