「子どもが見ても伝わるものを…」果てしなきスカーレット モモンガさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもが見ても伝わるものを…
先日投稿しましたが、何だかしっくりこず再投稿です。
因みに2回みてきました。細田監督の作品は好きで、作品に対して納得したかったから。でもごめんなさい…今回はハマらなかった。
理由は多々あるものの、一番はこの作品のテ−マがしっかり伝わないからです。
ハムレットが根底にあるんだな…というのは作品を見ればわかるし、ポスターにもそれっぽくわかりやすく書いてある。神曲もそう。でも、子どもが隣にいてこの作品はこの2つの作品を履修してないとわからないんだよ…これはね~と説明しながら見ることはできない…。そんなもの分からなくても、ちゃんと伝わる!子供だから上手く言葉にできなくても。そうであってほしいと思う。観る人がみればわかる、教養がない人には…という書き込みを何度か見かけたが、ちょっと違うと思う。アニメという手法で、年齢制限もなく作品を出しているのだから、大衆に受け入れられるようにするのは当たり前なんじゃないかな。
で、今作。話は単調とは言わないが、ほとんどが死後の世界なのでどうしても単調に思えてしまう。
そして何より、スカーレットの復讐の感覚が日本人にはハマりきらないと思う。あんなに人生のすべてをかけて邁進するなんてこと…。戦争を知らない、対岸の火事状態の国民に…。そんな観客と作品を繋げるために聖がいるんだと思うんだが、彼は今にも自分たちを攻撃しようとしている人間に武器を捨てなさい!と、飛び出したり、最後は自分が武器を取って攻撃したり…と一貫性にかける。何とも観客を混乱させるのだ。
ただ…自分はこの作品は聖視点の方が良かったんじゃないかと思う。頭がお花畑の青年が、自分が理不尽に殺され、そのことに気づかず死者の国に紛れ込み、復讐の亡者の王女に出会う。初めは彼女を止めようとしているが、自分が傷を負い、それがきっかけで自分が殺されたことを思い出す。それで初めて命を奪われることの苦しみ、怒り、悲しみ…そして、死を受け入れなければならない絶望を知り、彼女の気持ちを当事者側として理解できるようになる。そこから…それでも!!と、言えるようになる、そこまでの葛藤をみせて…と思う。
今時子どもでも、世の中が、善意を善意で返してくれるとは限らないことを知っている。命は大事だ。復讐はやめなさい…言葉だけでは通じない。だからこそ、この作品を作ったんじゃないのか。
聖にはただのいい人ではなくて、もっと自分の境遇を嘆いて怒って、血反吐を吐くように苦しんで、スカーレットをみて…自分の家族は今どんなきもちか、復讐を犯人にしようとするだろうか…自分はそれを望むのか?そんな葛藤を経て…初めて彼女にそんな事をしないで生きて欲しい、と伝えて欲しかった。それだけのポテンシャルがあるのだから…。
監督は戦争がなくならず、理不尽に命を奪われる人々がいることや、そんな世界に対して嘆いて、考えて作品を作ったようだが、私には監督が自分なりの答えを出した…とは思えないし、よく分からなかった。難しいテ−マだけど…まとまりがなく、セリフもどこかで聞いたような感じで、持て余しているように感じた。理不尽に命を奪われた人間の代弁者の聖があんな感じだから…。
私見だか、復讐をしてはいけないとは思わない。ただ、復讐は自分を損なうものだと思う。四六時中他者への害意を募らせて、ずっと悪意の中に自分を置いている。自分を愛することができない。他者をゆるすこと、自分をゆるすこともできない。
多分作中ではそういう事を言いたいんじゃないのかな?聖にはスカーレットに自分を愛して、と伝えて欲しかったな…。
因みに…私はほかのレビューにあるような、ダンスシーンを不要だとは思わなない。むしろあっていいと思う。あれはスカーレットと聖の心の交歓だ。スカーレットが今の自分に迷う、心が揺らぐ大事なシ−ンだ。問題なのは、心が深くつながり合うまでに2人が至っていない…ということだ。あのシ−ンに意味を持たせるためにも、聖には上に書いたような葛藤を経てもらいたかった。
そんな聖からの言葉や気持ちを受け取って彼女は自分の世界へ戻ってもらいたかった。
長々と書いたが、細田監督作品を楽しみにしていただけに、何だか残念であり…何だか悔しいのです!
もうそれが一番の感想!
山頂では誰もいないのに、叔父との決着後はいっぱいいましたね。笑
なんとなく、ババ様視点の方がよかった気がします。
そうすれば唐突な転換も少しは自然になるし、“問いかけ”に重点を置けたような。
(もちろんキャラや台詞の練り込みは必要ですが…)
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