「酷い部分が良い部分を凌駕してしまった...」果てしなきスカーレット ニシヤンさんの映画レビュー(感想・評価)
酷い部分が良い部分を凌駕してしまった...
初日、初回にIMAXで鑑賞しました。
自分は細田監督ファンで、前作の「竜とそばかすの姫」もやや難ある脚本でしたが、それ以外の部分が素晴らしく映画は4回観て、得装版の4Kブルーレイも購入してしまいました。
今作は俳優陣の演技も違和感なく良く、アニメーション、背景美術、音響など、技術面は素晴らしかったのですが、演出と脚本がちぐはぐしていて、登場人物たちに感情移入できませんでした。
中世デンマークが舞台で、その時代の人物(死者)たちが主に存在する「死者の国」に、何故か現代の日本人青年が登場するのですが、彼の存在が違和感ありまくりで、スカーレットが刺客たち殺されそうになって返り討ちにしても「殺しちゃダメだ!」と説教したり、何の躊躇もなく馬に飛び乗ったと思えば敵に集団に向かって「戦いはやめよう!」を宣ったうえ、助けに入ったスカーレットが窮地に陥ったりと、平和ボケにもほどがあります(終盤にはスカーレットを救うため方針を変えるのですが)。
また、スカーレットが窮地に陥った時、突如上空に龍が現れ、電撃で事態を打開してくれる事が何回かあったのですが、これもご都合主義にしか思えません。
予告編にもある現代日本で陽気にダンスを踊るシーンですが、導入に無理があるうえ今作の世界観と違和感がありすぎて、本当に映画館を出て行こうかと思いました。
復讐心に駆られたスカーレットがどうやって憎しみの連鎖を断ち切るのか?というのが今作のテーマの1つで、ウクライナやガザなど今でも戦争が絶えない現代に相応しい題材だったのですが、結局は綺麗ごとで終わってしまい残念です。
スカーレットを始めとした中世の登場人物だけに限定し、ダークな世界観で統一しておけば及第点ぐらいの出来にはなった思うのですが、余計な演出が差し挟まる事で作品の価値を大いに下げてしまいました。
ここまで酷評を書きましたが、今までの作風とは打って変わった世界観に挑戦した細田監督の心意気は素晴らしいと思うので、次回作に期待しています。
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