その花は夜に咲くのレビュー・感想・評価
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愛と嫉妬と金
1998年のベトナム・ホーチミンで、女性の心を持つトランスジェンダーのサンは歌手としてナイトクラブで働きながら、恋人でボクサーのナムと暮らしていた。しかしサンは女性になるための手術代をパトロンに出してもらうため体を売り、ナムは闇の地下ボクシングに手を染めるようになった。そして、サンへの嫉妬から女を買い彼女を妊娠させてしまった。また、サンは手術を受けにタイへ行ったが、精神不安定との理由で手術を拒否された。さて、2人はどうなるのか、そんな話。
男性として生まれても心が女性だったらサンの様に体も女性にしたいと思うのだろうなぁ。そして、その手術代のために金持ちに体を売ったりしてナムが嫉妬し、女性を買いに行ったのも咎めなかったが。流石に妊娠したら怒ったけど、自分には出来ないと諦めもありその子の世話をしたところが健気で可愛かった。
そして、サン役のチャン・クアンは美しかった。
サンは最後に金持ちに2億ドン出してもらったと思うが、何でもするとは何だったんだろう?
彼の愛人になるって事で良いのかな?悲しいなぁ。
ベトナム語、タイ語、英語、フランス語と入り混じって国際色豊かで面白かった。
物語が弱く、振れ幅が小さくなったかな
豊潤な映像表現
たくましく生きる人たちが住んでいるサイゴン市中。
生活感に溢れていて、日本が失いつつある原風景のようで
不思議と郷愁を誘い、その背景だけで画面に引き込まれる。
サンと恋人のナンのラブストーリーの経過や行く末については、
映像による暗示表現が多く、モヤっと、もどかしい部分もあるが、
逆にそれが鑑賞後に長く続く余韻を残すことに繋がっていると感じた。
死と隣り合わせで格闘するナンと、ナイトクラブで美しく踊るサンの対比シーン、
足先、手先のクローズアップ、美しい水辺の風物を含めた引きのシーン、
花や静物を切り取ったり、ピントをぼかした象徴的、詩的な表現など
主人公サンの望まぬ性に生まれたことによる複雑な事情、展開における切ない心情を
余すところなく全編映像の力で語りあげている素晴らしい映画だと思う。
どうにもできない事だらけでもどかしい
積み重ねたエピソードを生かしきれず
ゆく川の流れは絶えずして
読書していると、その作家の文体に合う合わないの相性の問題にしばしばぶつかります。小説の内容は面白そうなのに作家の文体が合わなくてなかなか読み進められない… 映画でも同様なことがあって、この監督(作品)の語り口が好きだ(嫌いだ)というようなことが起こり得ます。このベトナム発のラブストーリーですが、語り口が自分には相性がよかったようで、始まってしばらくして当たりかもと思いました。ちょっと緩めのテンポで、劇中に出てくるメコン川の流れのようなのかもとも感じました。
内容はと言えば、トランスジェンダーのダンサーとボクサーのラブストーリーが軸なのですが、若者特有の性急さや危うさ、脆さを描いていて青春映画の側面もあると思いました。上記の文体•語り口の話に繋がるかもしれませんが、時おり、はっとするような美しいシーンやいかにも映画的なシーンが出てきます。また、複数人物がひとつの画面におさまるときの人の配置、構図が絶妙で、登場人物相互の関係性、距離感をうまく表現しているなと感じました。アッシュ•マイフェア監督の作品は初見だったのですが、他の作品も見てみたいし、今後の作品にも注目したいです。
劇中にメコン川の風景が出てくるのですが、川の流れを見ていたら、なぜだか、鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」が浮かんできました。彼らも彼らの愛も川の流れのように移ろっていったのでしょうね。
うーん、今の時代の愛の物語をつくろうとした心意気は買うが、中身がこんなにとっ散らかっていてはね。
皆さんに観て欲しい作品はなるべくネタバラしは避けるんだけど、これはちょっとオススメできない。オススメできない説明をするためにはネタばらしが必要になるのでご了解いただきたい。
同じ街で育った幼なじみとナムとサンの愛の物語である。サンの方がトランスジェンダー(M to F)であるところがこの作品の最大のミソで大体、三つの段落に分けられる。
愛し合う二人は結婚するが、サンはどうしても性器の適合化手術を受けたい、そのためには大きな費用が必要となる、そこでサンはパトロンをつくって身を任せようとするし、ナムは同じ人物を通じて地下格闘技の世界に入る。(このパトロンさんは日本人俳優が演じています)
ここまでが第一段階。それぞれの身の上がメリハリなくダラダラ見せられるのでここまでで結構、飽きてきてしまう。
そして第二段落。ナムは舟で売春している少女の娼婦ミミのところに通って彼女を妊娠させてしまう。サンはミミと生まれる子どもを引き取る決意をして三人で暮らし始める。ここではサンの心の動きをどう表現するか作品最大のヤマだと思う(あり得ない設定なだけに)ところが脚本、演出ともにグズグズの上にサンを演ずる新人俳優さんの演技も追いつかず何だかわけの分からない方向に話は進んでいく。
第三段階は、海に三人が遊びに行き、その帰路、事件に巻き込まれる。ナムが人を殺してしまい裁判となる。その始終が描かれるのだが、強引な転調と収拾のつかないエンディングで観客は戸惑うばかりである。(ベトナムの裁判所は刑事も民事も一緒くたなのか?そんなことはないだろう)
要するに、あまりにもとっ散らかってしまい肝心の愛の物語はどこかに行ってしまった。
尺を大幅に切り、第二、第三段階もカットして、第一段階中心にフィジカルに彼らの愛を捉えていけばよい作品になったかも。でもそれって現状からあまりにも離れているので無理な注文だしなんでこちらが創作しなきりゃならん。
25-044
沈まぬ花は、やがて清流とともに大海へと流れ着く
2025.3.25 字幕 アップリンク京都
2025年のベトナム&シンガポール&日本合作映画(121分、R15+)
望まぬ性で生まれた女性とその恋人を描いた恋愛&ヒューマンドラマ
監督&脚本はアッシュ・メイフェア
英題は『Skin of Youth』で「若い肌」という意味
物語の舞台は、1998年のベトナム・サイゴン
恋人サン(チャン・クァン)の性転換手術の費用を稼いでいるボクサーのナム(ボー・ディエン・ザー・フイ)は、少ないファイトマネーを積み重ねていた
サンはナイトクラブのシンガーとして働いていて、彼女はパトロンを見つけてでも、早く手術をしたいと考えていた
ナムには祖母(フィ・ディウ)がいて、彼女の営む露天を手伝いながら、仲睦まじく暮らしていた
だが、祖母はサンの性別を知りながらも、「孫の顔が早く見たい」と呟いていた
ある日のこと、ナイトクラブにて、街のフィクサーとして知られるミスター・ヴーン(井上肇)を見かけたサンは、自分のパトロンになって欲しいと訴える
その想いは実り、手術代を超える額を手に入れることができた
だが、その見返りとして、ヴーンの愛人となる約束になっていて、サンはナムよりも彼と過ごす夜が増えていってしまった
物語は、距離が空いてしまった二人の間に、売春婦のミミ(ファン・ティ・キム・ガン)が入ってくるところから動き出す
寂しさのあまりに女を買うことになったナムは、そこで出会ったミミとの関係を続けてしまう
また、サンはヴーンと関わるようになってからドラッグに手を染めるようになり、自傷行為などもエスカレートしてしまう
そして、ようやくお金が貯まり、タイに行くものの、「自傷行為のある患者はリスクが高くて手術できない」と言われてしまうのである
映画は、ナムと関係を持ったミンが妊娠し、それによってサンとの仲に転換期が生まれる様子を描いていく
サンはナムの子どもだからとミミをケアする立場になり、ナムは生活費のことを考えて、地下格闘技の世界へと足を踏み入れていく
そして、ヴーンに打診し、どこにでも行って戦うから、勝てばギャラを弾んでくれ、と取引を持ちかけるのである
ベトナムとシンガポール、日本の合作ということで、日本からも何人かの俳優さんが出演し、エンドロールでは色んなところに日本人の名前が散見された
情報がほとんどなく、ベトナム語でググってもなかなか辿りつかないのだが、インスタなどを追っていくと色んなものが見えてくる
パンフレットにはあらすじが全て書かれているので、読み返すだけで映画を思い出せるのは良いと思う
ラストシーンは解釈が分かれると思うが、ナムとの世界を切り捨てたと考えれば新天地(ヴーンの世界)に溶け込んだとも思えるし、どちらの世界も拒んだという見方もできなくはない
個人的には溶け込む覚悟ができた派だが、それは女性になりたいと想う気持ちの方が、ナムを愛しているという気持ちよりも強いと思うからである
水面に浮いた花が散ることもなく、沈むこともなく融和していく様子を考えれば、より大きな世界(海)へと向かうメコン川の流れに身を委ねたのではないかと感じた
いずれにせよ、なかなか稀有なベトナム映画ということで興味を持って鑑賞したが、さすがに前半の展開は緩くて眠気との戦いになった
本懐は、事件後の裁判シーンなのだが、そこで挿入されるサンの決断とその歌はとても素晴らしい
また、サンの決断を知るナムのなんとも言えない表情も良くて、ここまで完走できた人へのご褒美のように思える
ベトナムの情勢に詳しくなくてもOKの作品なので、あまり構えずに鑑賞しても良いのではないだろうか
小魚
前半は超ヒマ、後半はまあまあ面白い
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