ドールハウスのレビュー・感想・評価
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ずっと泣いてた。。
5歳の娘・芽衣を事故で亡くした鈴木佳恵と看護師の夫・忠彦。悲しみに暮れる日々を過ごしていた佳恵は、骨董市で芽衣に似たかわいらしい人形を見つけて購入し、我が子のように愛情を注ぐことで元気を取り戻していく。(当サイト作品情報より)
またしても娘案件。
「実生活では決してあってはならない」ことだが、子供がつらい目にあう映画は、もちろんやめときゃよかった、な作品もあるが、「感情移入」のみならず、自身の長らく仕込まれていた「一人でいたい」感情ともども、「映画」として楽しむようにしている。
「ドールハウス」
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タイトルがね、「人形の家」とすると、そこに人形がある、ということではなく、「人形『の』家」ともとれるので、これは暗示。が、この字面はちょっと安っぽくて、難しいね。
冒頭の、本人は「本人なりの予防」を打って、ちょいと買い物に出かけたがための悲劇。そのヤバさとまさみの「洗濯機視点の」絶叫シーンが正直、お笑いなのか、見せない工夫だったのかは、分からないが、オレは気持ちのバランスがとれなくてマイナス。でも全編通してここだけ浮いてる気もする。
しかし、まさみの髪形、紙袋、ルンバ、冷蔵庫、ドラム式と縦型、人形のまさみ似の顔への変化、「私の人形は良い人形」、そして牛乳など小道具の使い方は非常に素晴らしく、何度も「うん、うん」、「うめえなあ」とすっかり魅了された。人形繋がり、というわけかどうかはともかく、定番の見せ場を上手く見せるジェームズ・ワンの演出を思わせる。同じくワンっぽい音使いも楽しい。
スピルバーグの「A.I.」('02)オズメント君が「子供らしく」優しいお母さんを求めたら、みたいな話なんだが、もう少しひねりしてあって、まさみの出生や、長女の魂、次女の背中のひっかき傷とまさみのストレスなど、なかなか思いを巡らせる作りが、大きな余韻を残す。
ただし、その余韻とは別に、もう少し突っ込んでほしかったところもある。瀬戸の描写のほうで、勤務体制や決して高くないであろう収入(お母さんのおうちはイイけれど)、子育てへの向き合い方。事故後の引っ越し。(は省略してもイイかな)
まさみと瀬戸のラストの姿は逆に「ハッピーエンド」にも見えるバランスが「娯楽映画」として、素晴らしい。風吹と田中は「すれ違う」が、次女は「見えている」ところなんかは、思わず「上手い!!」と声に出してしまった。
ただただオレは、まさみが人形を買ってきて、抱きしめるところからもう泣けてなけて仕方なかった。
追記
エスカレーターの下。あれは危ないって。
ミステリー映画と言う勿れ? ど真ん中人形ホラー
呪詛返しの貼られた箱に入った古い人形がヤバいのは常識ですよね(震え声)。
ああそれなのに、いくらテンパってるからといってゴミに出したら駄目だよ長澤まさみ! お焚き上げのチラシもらってたでしょうが!
あんな箱に入ってて、髪や爪が伸びてた時点で特級呪物でしょ、人間の髪を使ってるから伸びるってさとか言って呑気かよ瀬戸康史!
よく出来たアヤちゃん人形の怖さゆえ、ホラー映画にありがちな登場人物のある種の鈍臭さに、いつもより余裕のないツッコミを入れてしまう私なのだった。
予告映像を何となく見ただけでリサーチなしで臨んだせいか、初っ端からの激重展開にちょっと怯んだ。
自分の不行き届きで娘を亡くした母佳恵の苦しみ(小さな子を持つお母さん大変だね……)からお焚き上げチラシが結んだアヤ人形との出会い、次の子供が生まれて人形が放置されるまではあっという間に話が進む。予告の印象で、母親が人形を可愛がる過程での不気味な話がメインかと思っていたがそうではない。
そこから後は……人形が、人形が動いてるううう! 登場人物の正常性バイアスが順番に解けてゆくのをヤキモキしながら見守るという定番展開。
解決ルートのブラフで出てくる生臭坊主今野。今野!(おかみさん口調で) こいつ死にそう……ほら死んだ(死んでない)。安田顕もヤられるキャラフラグ出しまくり。この辺はベタというか期待通りというか。
呪禁師(じゅごんし)神田の登場で、観客としてもようやく光明が見えたような気持ちになった。
比嘉琴子(澤村伊智「比嘉姉妹」シリーズ、映画化作品「来る」での演者は松たか子)並みの強キャラ来たか、スカッと解決してくれ! と思ったら祈祷の場をアヤの怨念に乱され、神田はあえなく負傷退場。もう帰っていいですよという神田の言葉を蹴ってついてきた佳恵夫婦たち素人が実行役を担うことに……
その後の展開はちょっとくどかった。アヤをどうにか母親の墓に戻して解決、日常へ→ ってのは幻でした→ 芽衣の魂に助けられて今度こそ助かった、感動した→ 助かってないんかーい。
東宝公式も映画.comの紹介文も本作をミステリー映画と称している。確かにミステリーという言葉そのものには神秘とか怪奇とかいった意味があるのだが、こと映画のジャンルとして言うならミステリー映画感はなく、完全にホラー映画。
映画ジャーナリストの斉藤博昭氏がYahoo!ニュースに寄稿したエキスパート記事(「近年、新作映画を宣伝する際、「ホラー」「SF」が禁句(?)になってる傾向について」6月1日付)で、「とある日本映画も、試写を観たマスコミに『ホラーという言葉を使って紹介しないでください』とお願いが出されている」「ホラーと紹介することで観客の間口を狭める心配が、近年、映画を売る側、特に日本では間違いなく存在する」と述べているが、これは本作のことだろうか。
それはさておき、実はアヤが母親から虐待されていた、という結末はなかなか風刺的だなと思った。
親による子の心身への暴力に対し、虐待とか毒親といった視点が持たれるようになったのは歴史的にはごく最近の話だが、実際は昔から「教育」「厳しいしつけ」という名に隠された虐待はあっただろう。
現代においてさえ、他人がよその家庭での虐待の存在を見極めることは難しい。血のつながりは愛情を保証するものという先入観もある。だから神田は「生前のアヤは病気がちだった」「母親はそれを苦に無理心中を試みた」「母親はアヤ人形と一緒に埋葬されることを希望した」という情報から「アヤ人形を母親の墓に返す」ことでアヤの怨念が解消されるという判断をしてしまったのかもしれない。そこにアヤ本人の気持ちが表れた情報はないにもかかわらず。(呪禁師なら謎の力でアヤの思いまで見抜いてほしいという気持ちもあることはあるが)
児童虐待の見えづらさ、周囲の人間の鈍感さに警鐘を鳴らすオチと解釈できなくもない。
人形ホラーの決定版となり得るか
「亡くなった子供の身代わりに」「何故か伸びる髪と爪」等々、昔からある人形ネタを、既出などと臆することなく紡ぐあたり、狙いは正に「人形ホラーの決定版」という野心的作品。
映画は2時間(マイナス広告時間)のコンパクトサイズ。だからこそ上映開始からテンポが良く、シーンに無駄なく、紙袋の覆面やルンバなどアイテムの伏線もテキパキと散りばめられて判りやすい。後半もそんな感じでちょっと駆け足に見えるけど、お陰で気を抜けずに食い入るように見てしまった。
個人的にこの映画を見る上で、予測というか、「人形の呪いのトリック」にアタリを付けて鑑賞していました。
別の作品のネタバレで恐縮ですが「奇妙な物語劇場版」で強く印象に残った話がありまして、「遭難して土葬した友人の遺体が、なんども蘇ってきて自分の隣で寝ている。これはおかしいと思いビデオカメラで撮影してみたら、夢遊病を患った自分自身が掘り起こして連れ戻していた」というオチ。
つまりは、人形の呪いに超常現象的なミラクルパワーなどなく、人為的なトリックでもって呪いが為されているのでは無いか。その予測はあらゆるシーンを見ていて「可能だ」と思いましたが、しかしクライマックス。(ここからこの映画のネタバレになりますが)人形が変わらないはずの顔を歪めているんですね。これでは解釈に困る。やっぱり超常現象でしょうか。それとも主人公達の幻想・幻覚? 私の好みではありますが、とことん人為的な方法で実現可能にも見えるようにして欲しかった。
何故かというと、もう超常的な霊的な事象が発生するとは思えないんですね。現代社会で、不思議な力で霊魂が人形に宿るなどとは、もう思えない。むしろそれよりも生きている人間の方が恐ろしい。前半、明るい表情を取り戻した母親が人形を座らせて娘のように扱う下り、むしろ人形より怖かった。
でもやっぱり人形独特の怖さも凄いですね。特に人形の無表情の顔。表情は変わらないはずなのにそのシーンに見合った顔つきに見える。確か岡田斗司夫氏が「火垂るの墓」の解説の中で「クレショフ効果」というんでしたか(AIで確認したのですが)。無表情でも食事や異性と並べることで、それぞれを欲しているように見える。「火垂るの墓」では節子がなくなった後に清太を無表情で表現していたシーンなんですが、人形の無表情にもその効果が現れるのかもしれません。
海外でもすでにチャイルド・プレイとか人形ホラーはありますが(そっちは見てない)もしかしたらリング同様に海外にコピーされうる作品になるかもしれません。そうすると人形はフランスのそれか、テディーベア、著作権が切れてさっそくホラーに使われたミッキーマウスか。
そうした日本ホラーを代表する作品、人形ホラーを代表する作品として、評価されていくことを願ってやみません。さあ、続編が出るかな?
奥底からジンワリ…湧き上がってくる恐怖
矢口史靖監督作品は、
スウィングガールズを見て以来。
今回は、監督のオリジナルの作品、
しかもホラー 。日本人形が題材。主演の方々の
演技も気になり鑑賞。全体的にとても良かった。
個人的には、呪禁師さんにオイっ‼︎と
ツッコミを入れたくなりましたが…
後味は…そうなるよね…うん。
…という感じ。
長澤まさみさん、瀬戸康史さんを筆頭に
脇を固める方々も素晴らしい。
始終、人形が生々しく
(骨が入っていた…という
設定もあり)怖かった…。
オリジナルホラー 、ミステリーとして
とても完成度が高いと感じました。
見る価値あり。おススメします。
形
これぞジャパニーズホラーといった趣きを感じられ、日本人形の奥ゆかしさと不気味さがどう活かされるのかというところを期待して観に行きました。
所々ゾワゾワっとさせられる部分はあったんですが、ホラーにストーリーや辻褄を求めてはいけないと思いつつも違和感が積み重なってしまい、そのせいか怖さも半減してしまって首を傾げながらの鑑賞になってしまいました。
今作はジャンプスケアに頼らない演出をしており、叫び声はもちろんありますが、基本的には人や人形の挙動や表情、日常の些細な変化でおどろおどろしく攻めてくるのでしっかりビビりましたし、他の観客がどちゃしこビックリしはるので、ホラー映画だわぁという雰囲気にさせてくれました。
個人的には最初が1番怖かったかもです(ホラーではない)。
かくれんぼで洗濯機に隠れたがために、洗濯に巻き込まれて…という事故が現実でも起こったニュースを見たことがありますし、今作の母親もそういうところに気をつけていたのにそうなってしまったというのは深く傷ついただろうと思いました。
そこから骨董市でシンパシーを感じた日本人形を買ってくるまでも流れは謎ですがまぁ許容範囲内です。
そこからドールセラピーなるものを見つけて、それをきっかけに立ち直っていく様子が描かれ、そんな中で子供用品のお店の店員さんが話しかけたら人形だったというところはそうなるよなという変な納得感がありました。
そこから実の娘が生まれて、人形は雑に扱われていくといった人形ホラーでよくある展開になってくるのですが、娘がなぜか不気味がらずに一緒に寝たりするとんでもねぇ肝っ玉なのもあってどんどんホラーが加速していくというところはスムーズで良かったです。
人形の礼の無表情さ、生きているかのような動きだったりが恐怖感を煽っていたのですが、徐々に表情が変化していくまではまだしも、目ひん剥いて歯食いしばってみたいな阿修羅みたいな表情は怖いとかよりもこっちを笑わせにきたのかな?ってくらい怖くなかったです。
引っ掻くとか噛み付くとかいうのも傷や遠目の防犯カメラでの映像でしか出てこないので、せっかくならガブガブガリガリいってるところを描いて欲しかったです。
あと娘と表情がなぜかリンクするところはビックリしたんですが、なんであそこリンクしたんだ?という疑問が勝ってしまいました。
中盤から終盤にかけての展開はドッタンバッタンしていて色々と大変でした。
人形をお焚き上げでなんとかしようと思ったのに上手いこといかず、結果人形の専門家に頼むも警察が関わってめんどくさい事になり、そこから人形を探していた爺さんに見せると厄介払いされ、礼の母親の元に戻しに新潟県の島まで行くという遠回りの連発。
中々に回りくどい展開にヤキモキしましたが、そこからの流れもこれまたダルい展開が続くのでお腹いっぱいでした。
現実世界と妄想の世界がグチャグチャになったラストもあんまし怖くなかったですし、スッキリ終わるか余韻をスパッと残して終わるかして欲しかった気がします。
地味に気になったのはなぜか登場人物皆様家に鍵をかけずに出ていくので、序盤は泥棒のリスク、終盤は人形が勝手に出かける等々のリスクがあるはずなのに全員ものの見事に鍵をかけずなので、進行する上で仕方ないという訳でもなさそうなのが厄介さに拍車をかけていました。
ライトなホラーという点では「見える子ちゃん」と肩を並べてオススメできる1本だと思います。
ストーリーはアレですが、身近な人をビビらせてやりたいな〜という気分の時にはいいかも知れません。
鑑賞日 6/17
鑑賞時間 12:45〜14:50
ホラーとミステリーの二段構え。面白こわい。
単純にこわい。
礼ちゃんこわすぎ。
誰しも子供の頃は、精巧な人形に恐怖心を抱いたことがあるはず。
独特なメイクのピエロ、古くなったぬいぐるみ、あるいは、今にも動き出しそうな日本人形。
そういったある種の人形に対する根源的恐怖が、この作品で紡がれる恐怖の肝となっている。
とはいえ、実はストーリーの軸は上に書いた恐怖とはあまり関係がない。
開始ほんの数分の間に、視線誘導や小物の配置でちょっとした違和感を絶えず生み出し、「不穏な違和感」を丁寧に積み重ねていく手法に、観客側の恐怖心がどんどん煽られていく。明るく穏やかな音楽、楽しげに遊ぶ子供たちの叫び声とは裏腹に、どうにも息苦しさを覚える。
予告などから簡単なあらすじを知っている観客は、これから起こることがもう分かっている(あるいは初見でも何となくわかる)。
それなのに、心臓が激しく脈打つのを止めることはできない。スクリーンに見入る。
そして、洗濯機の中から己の子・芽依の変わり果てた姿を発見してしまった、主演である長澤まさみ演じる母・鈴木佳恵の、耳をつんざくような絶叫で物語は幕を開ける。
不穏な音楽、不安をあおるフォントの加工。超ベタだけど、でもこわい。
娘を己の不注意で亡くしてしまった自責から、精神を病んでしまった佳恵は、何者かの意思に導かれるように、生人形を骨董市で購入する。
人形を、亡くした娘の代わりのように可愛がることで、それまで茫然自失と生活していた佳恵の生活に張りが戻る。笑顔が戻り、家庭に明るさが戻る。
夫である瀬戸康史演じる父・忠彦は、はじめは人形を可愛がる妻(佳恵)の姿に驚きと戸惑いを隠せないが、次第に元気を取り戻す佳恵を見て許容するようになり、夫婦と人形が一緒に映る写真が、思い出として壁を埋め尽くすようになっていく。
そして一年後、佳恵は第二子を出産する。その子は真衣と名付けられた。
子が生まれれば、代替品に過ぎなかった人形は、役目を終えるまでだ。
本当の子供のように可愛がられていた人形は、夫婦の愛が真衣に向けられるようになると、一気に乱雑に扱われるようになり、赤子向けのおもちゃの山に覆われてしまう。
しばらくすると、佳恵は無造作に放り出されていた人形を思い出し、ベビーベッドで真衣の横に一緒に寝かせることにする。まるで、生まれたばかりの子の面倒を姉が見るように。
だが、その思惑は裏目に出る。
真衣の柔らかな首に、黒く、長い髪が絡みついてしまった。
人形を真衣の横に寝かせて置いたはずなのに、いつの間にか赤子に覆いかぶさるようにして。
それを見た義母・敏子(風吹ジュン)は気味悪がって人形を床に投げ捨てる。
元あった御札が貼られた箱にしまわれた人形は、押し入れの奥に収納される。まるで封印するかのように。
そうして、成長した真衣が5歳になり、ひょんなことから押し入れの奥の人形を見つける。
真衣は、人形で遊んでいいか、と佳恵に聞きながら「(名前は)あやちゃんって言うんだって」と、朗らかに言う。
佳恵が本物の娘のように可愛がっていたころに切ったはずの、黒い髪と白い爪はなぜか伸びていた。
真衣は、人形を「あやちゃん」と呼び、ずっと一緒にいるようになる。
時折、会話をしているような素振りすらある。
そうして箱の封印が解けるように、日常にあやちゃんが溶け込むほどに、鈴木家の中で不可解な出来事が起き始めるのだった。
とまぁ、簡単なあらすじを書いてみたが、前半の時点で「上手いな」という感想が出る。
観ている間は不気味さや、前述した違和感の積み重ねでそこまで余裕はないのだが、見終わった後に考えると、愚にもつかないような細かな演出がすべてこちらの精神を撫でていくような演出になっており、王道のホラー映画であると思える。
登場人物が正常性バイアスによるものか、ちょっとずつ鈍いところが、観客の焦りを加速させる。
観客側は全てを見ているので、人形が危険な存在だとすぐにわかる。
しかし、登場人物は日常の中の一コマでしかないので、「気のせいかな」程度の認識しか持たない。
誰しも、普通に生活している中で人形が勝手に動くんです、と考えたりはしない。
そして、ジャンプスケアは割と少ない(ないわけではない)。
もっとあってもよさそうな演出、展開なのだが、あえて外してくる。
しかし、ツボは外さない。怖がらせる瞬間は、遠慮なく怖がらせてくる。
たとえば、真衣が描く首吊りと、死体が煮込まれる絵。
たとえば、真衣が洗濯機の中から飛び出してくる場面(序盤で芽依が亡くなったのは洗濯機)。
たとえば、真衣と人形のどちらが走り回っているのか分からないシーン。
たとえば、人形と勘違いして娘を撲殺する佳恵の悪夢。
何度捨てても何らかの形で必ず戻ってくる礼ちゃんに、佳恵の違和感は、確信に変わる。
その戻ってくる方法も、不思議なパワーによるものではなく、「必ず人の手を介して」戻ってくるところがどうにも上手い。
そしてもう一つ、すべてを明らかにしていないところが、また恐怖心を煽っていると思う。
「腐った牛乳?」、「真衣の背中の引っかき傷は誰が?」、「敏子を襲ったのはどちらか?」。
牛乳はともかく、引っかき傷は礼ちゃんなのか、あるいは佳恵の手によるものなのか、作中でははっきりしない。
佳恵である可能性は高い。第一子を失ったトラウマで、現実の境界線があいまいになっている描写がある。
しかし確証はない。どちらでもいいのかもしれない。どっちにしろこわい。
そういった妻の精神的状況から、彼女の言葉を妄言の類と思っている忠彦の認識は、佳恵よりもかなり遅れる。
余談ではあるが、忠彦も同様に娘を亡くしていることになるが、作中ではあまり哀しみを感じないのは、非常に男性らしいともいえる。
無論、悲しくないわけではないのだろうが、どちらかと言えば悲しむよりも、深く悲哀に暮れる妻を支えることに終始している。
そのある意味「第三者的立ち振る舞い」が、スタンダードな日本のお父さんという感じに見て取れる。偏見かもしれない。
噛みつきと言えば、襲われた敏子のちぎれた腕時計のストラップを、眠っていたはずの真衣の口元に持って行った忠彦の目の前で、彼女が目を見開いて絶叫する演技に度肝を抜かれた。このシーン正直マジでこわかった。今でも鳥肌立つ。
後半からはホラーは鳴りを潜め、「礼ちゃん」人形の出自と封印方法にフォーカスが当たる。
ここからはほぼヒューマンドラマのような形。(ほんまか?)
そこで登場するのは田中哲司演じる呪禁師である神田だ。
神田は後半の狂言回しにあたり、礼ちゃんの出自を突き止め、封印を実行する直前まで鈴木夫妻と行動を共にする。
この神田は優秀なのだろうが、どうにも雰囲気がとぼけていて、話にこれまで少なかった可笑しみが加わる。
礼ちゃん人形もこの頃になると成長したのか自我を持ち始め、表情もとっても豊か(言い方)になる。
大人を困らせるワンパクな動きをたくさん見せてくれて、超元気元気。
そんなこんなで、負傷した神田に代わって鈴木夫妻は頑張ってお母さんのお墓に礼ちゃんを返してあげることができて、万事解決。ラブアンドピース。大団円。
礼ちゃんが見せる幻覚を打ち破って、鈴木夫妻は勝利した。
愛する娘が待つ自宅へ帰ってこれた。
死んだはずの芽依が、佳恵を救うために礼ちゃんの魂を「向こう側へ」連れて行ってくれた。
とはならないんだなこれが。
それらすべてが、礼ちゃんが鈴木夫妻に見せる幻だった。
「一週間も連絡が取れない」と敏子と神田が鈴木家を訪れる。管理人に鍵を開けてもらう。
そこには、三人分の食器と、腐った牛乳が置いてある。
腐敗した牛乳の中で、ぴちゃぴちゃと虫が溺れている。
鈴木夫妻は、真衣をベビーカーに乗せて、三人とも穏やかな笑顔でエレベーターを降りて散歩に出かける。神田たちは会えずにすれ違ってしまったのだ。
穏やかな陽光、仲睦まじい三人家族。
神田が乗ってきた車の横をゆっくりと通り過ぎる鈴木夫妻と真衣。
車の中には、「真衣が乗っている」。
自分はここだと、車内から窓をたたき泣き叫ぶ真衣。
佳恵と忠彦は聞こえていないのか、気づかずに、笑顔のままベビーカーを押す。
日が眩しい。
ベビーカーの日除けが少し降りている。
座っている子供がちらりと映る。顔は見えない。
礼の無機質な肌が、見える。
実によくできた二段構え。
前半で恐怖心を煽って王道ホラーをしつつ、後半では一気に解決編へもっていく(解決できたとは言ってない)。
しっかり演技力に定評がある俳優陣で固めているので演技に違和感もなく、スムーズに作品に没入できる。
礼ちゃんへの解釈違いで封印に失敗したにしても、「結局何をどうしても勝てなかった」という絶望感は暗く、黒い感情を生み出す。
生人形こわい。
上映時間は110分しかないため、割と駆け足。
それが逆にテンポの良さを生み出し、飽きさせない造りになっているように思う。
神田や着服僧侶(今野浩喜)は、一服の清涼剤といっていいくらいにひと笑いを生んでくれるし、和ませてくれる。つまり、キャラクターの造形がいい。
最後の埋葬された墓の浅さとか、ツッコミどころはあるにせよ、大事の前の小事。些末なことです。
EDのずっと真夜中でいいのに。は急に明るめの曲になって戸惑ったが、サビが聞きやすくて良い歌。好き。
リングのように恐怖パートと謎解きパートをきちんと用意する王道っぷり、人形を扱ったらこういう展開だよね、という内容の目白押し、ホラーのテンプレのような展開。
そのすべてに斬新さはないのに、しっかり面白い。
だからこそ、演出や技法が高いレベルで散りばめられていることがうかがえる。
ホラー映画としてというより、映画としておススメ。
これから初めてホラー観るんです、というような方にも気軽におすすめしていきたい。
面白かった。
矢口監督にまたオリジナルでホラー映画撮ってほしい。
全部盛り。しかも手際よい
人形ホラーといえばアナベルですが、それと同じかもっと一般向けの巧みなホラー。
ホラーの要素がみんな入ってるんではないだろうか。うまい。そして、変な監督のこだわりみたいなのがなくてとにかく怖い。でも気色悪いのとはちょっと違う。
神経質なのにどこかがさつな主人公を長澤まさみが好演。(欲を言えば、もっと線が細くて病んでるっぽい役者さんのほうが良かったけど)(長澤まさみは、どうしてもしっかりちゃっかりに見えるんだよね)
あと、怖い音の演出は少ない。そこはちょっと物足りなかった。
展開も二転三転、飽きさせない。事態を悪化させるキャラの配置も巧み(胡散臭いな、と思ったらきっちりやらかす今野浩喜と安田顕)専門家田中哲司も肝心のときに怪我しちゃうし
最後の最後に解決してないんかーい!と放り出されるのも良いですね。
ただ、ホラーばっか見てる者としては、新味が無いの。
面白かったんだけど、ワーなんか好き!というのではなかったです。そこは好みなので悪しからず
面白いしかなりおすすめできるけど惜しい
ホラー映画としてはおそらくはかなり面白い部類に入ると思うし、ホラー好きな人にはめっちゃおすすめできる。ミステリー要素もある。
それを大前提にネタバレ無しで言うと、いくつかの点で私は惜しいと感じてしまった。
まず、登場人物が全員それぞれ少しずつ考え無しというか、端的に言えばアホな印象がどうしても消えない。人間誰しも欠点があるから仕方がないという類の理由ではなく、どうしようもない部分で。だから、感情移入もしきれないし、半歩後ろから観ている感覚だった。
そして、演出がちょっとしつこいようにも感じた。たたみかけているとも言えるけれども、何度もやると効果は落ちると思う。バランスは大事。上映時間は10分くらいは削れたのでは?
また、どうしても日本のホラー映画の代表作品「リング」と比べてしまう。色々と似た雰囲気があるので、リングが星4.5あたりだとすると0.5から0.7ポイントくらい落ちるイメージ。
惜しい印象は消えませんが、そうは言ってもホラーの中では近年稀にみる面白さなので是非とも劇場で観たほうが良いです。絶対に損はしません。
逃がさない、どこまでも…
瀬戸くん目当てで行きました。
良き夫、良きパパ役が似合う^_^
怖かったけど
ストーリーが面白かったので、
最後の最後まで目が離せず、釘付けでした。
あの研究者?霊媒師?、
瀬戸くんご夫婦を救うどころか
足でまといになったあげく、勘違いで2人を不幸にしたし…
そんなんありえない、ひどい…
日本人形、持ってなくて良かった
最後までしっかりと怖がらせてくれます。
問答無用の怪作人形ホラーこういうのが見たかった
矢口史靖さすがの一作。かつて関西テレビの「学校の怪談」シリーズで傑作・怪作を残しているだけに、予告編で遂に劇場長編でオリジナルホラーやるんだと知った瞬間から待ちに待っていたが予想を全然上回る作品になっていた。
昔からカメラを使ってのギミック、というか全体的にエンタメ趣向の芸大生の仕掛けるいたづら感満載の人だと思ってるのでホラーに振り切り、そして「人形」ともなればここまでやれてしまうのか、とジャパンホラーコンテンツとしても待望の「人形ホラー」ほぼ最恐の一作になった。
まずアバンだけでも相当怖い。絵的にはまったく怖くないのに包丁を閉まい、風呂のふたを確認して出かけるだけで怖さMAXに持っていけるのが凄い。このコンティニティの素晴らしさ。長澤まさみのレジで聞くひとつの情報だけで、もう相当やばそうなことが予想されたあとのタイトル前に放り込まれる大穴。これだけでも傑作短編。それからこの長編でこの穴をどこうやって回収していくかの感動(それでもそれで終わらないが、、)含めて長編としてお見事。
さもない当たり前の日本家屋を特別な美術や照明でなく人形と実の娘(役者)のスイッチだけであれだけやれること、視界から消え、入れ替わる恐怖、何度始末しようとしても失敗して箱ごとバラバラになつてエスカレーターから降りてくる人形の不気味さ、始末しようにもできないという単純作業の繰り返しが半分コメディにも見える面白さ。動かない人形をどんだん怖く見せていき、動き始めた時にはハンパないのスピード感を見せ(監視カメラ、フラッシュ)、そしてほぼ数字フレームにしか見せない人形の顔の造形とその怖さ。久々に劇場で集団の悲鳴を聴いた。いやー素晴らしい。
矢口史靖監督のホラーラインの増産をお願いしたい
まじで面白かったー!まじで怖かった!まじで良い映画! 物語が教えて...
コメディ!?
やはり そうきたか
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