RETURN TO REASON リターン・トゥ・リーズン

劇場公開日:

RETURN TO REASON リターン・トゥ・リーズン

解説・あらすじ

20世紀アメリカとパリで活躍した芸術家マン・レイと、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ナイト・オン・ザ・プラネット」などで幅広い世代の映画ファンに人気のジム・ジャームッシュがコラボーレションした作品。

ジャームッシュと、「パターソン」「デッド・ドント・ダイ」など近年のジャームッシュ作品のプロデューサーでもあるカーター・ローガンの2人による音楽ユニット「スクワール(Squrl)」。彼らの音楽を、ジャームッシュも影響を受けたと語るダダイズムのパイオニアで、20世紀を代表する芸術家マン・レイの短編映像作品にあわせて作られた。

サイレント映画に音楽をつけてみたいと考えたジャームッシュは、マン・レイの短編映像作品にスクワールの音楽を合わせたライブを2017年から行っており、その企画の集大成として本作を製作。マン・レイが監督した「理性への回帰」「ひとで」「エマク・バキア」「サイコロ城の秘密」の短編4本の4Kレストアによる美しいモノクロ映像に、スクワールによる繊細かつ破壊的な音楽を融合させた。

2023年製作/70分/G/フランス
原題または英題:Return to Reason
配給:ロングライド
劇場公開日:2025年1月24日

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(C) Man Ray 2015 Trust, ADAGP, Paris 2023

映画レビュー

2.5マン・レイの実験短篇映画4本に、ジム・ジャームッシュが音楽をコラボレーション。

2025年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

サイレント映画を映画館で観たり、パッケージで鑑賞していると、なんでこんな退屈でひどい音楽がつけてあるんだろう、と思わされることがしょっちゅうある。
『アンダルシアの犬』とか『フリークス』とか。
あるいは『月世界旅行』とか『ミカエル』とか。

映画における音楽って、ものすごく重要な要素なんじゃないの?
元の映画に曲がついてないからって、そのへんのクラシックとか、適当にピコピコ鳴ってるヘンな電子音楽とか、同じフレーズを延々リフレインしてるだけのBGMつけて、販売したり上映したりするのって、ほとんど映画に対する冒とくなんじゃないの?
『ツイスター』のヤン・デ・ボン監督がむかし言ってたよ!
「映画の面白さの8割は音楽で決まる」って(笑)。

僕は結構真面目に、サイレント映画が滅びた要因として、「俳優がしゃべらないから」という至極まっとうな理由に加えて、「作り手が音楽を決められない」のが致命的だったのではないかと思っている。
どこで音楽を鳴らすか。どんな曲をかけるか。
これは、本当に重要なことだと思う。

本作では、マン・レイの遺した4本のサイレント映画に、ジム・ジャームッシュと彼のプロデューサーが二人でやっているバンドが音楽をつけている。
必ずしも「マン・レイを観るならこういう曲じゃないと!!」という話ではなく、自分たちの音楽に合わせて流すのに最適な「環境映像」として、既存のマン・レイが選ばれたというのが本当のところのようだが。
マン・レイの映画は、ダダイズムの流れを組む映像的実験であり、「意味性の破壊」自体に意味のある「意味のない」映画でもあるので、この手の企画にはちょうど良いのだろう。

取り上げられているのは、「ひとで」(28)「エマク・バキア」(26)「理性への回帰」(23)「骰子城の秘密」(29)の4本(出てきた順)。
いずれも映画の中身はあってないようなものだが、「ひとで」と「骰子城の秘密」には辛うじて筋立てのようなものがある。残りの2本は完全な映像小ネタ集で、「理性への回帰」(Return to Reason)というタイトル自体、ダダイズム的な反転された警句となっている。

「ひとで」は、映像加工か、ピントの操作、もしくはすりガラスのようなものを用いて、ぼんやりと撮影された男女の道行からスタートする。ぼやけた男女の情念が空気にうずまいているような映像は、ちょっとエドヴァルド・ムンクの表現主義的な絵画を思わせるところがある。
ふたりは屋内の二階にあがって、ベッドインしそうになる(さくさく裸になっていく主演のキキに笑う)。彼女が裸でベッドに横になった姿は、ゴヤ『裸のマハ』やマネ『オランピア』に通ずる、「眠れるヴィーナス」の図像的系譜を過たず引き継ぐものだ。
そのあと、男は女から「ひとで」を入手してひとしきり愛でるのだが、その後に挿入されるモチーフ群は、煙突のある街並みやタグボート、ヒヤシンスのような花、テーブル上の壜、割れたり閉じたりする壁、振りかざされるナイフなど、明らかに性的なほのめかしを感じさせる。最後は三角関係が解消され、男がさくっとふられて終わり。

「エマク・バキア」の場合、出だしで「シネポエム」と出るだけあって、映像にほぼ脈絡らしきものは存在しない。まずマン・レイらしき男がカメラを回す映像があって、あとはフィルムにそのまま焼き付けられた釘や画鋲、花、電光掲示板、回転するオブジェなど、連想遊戯のように映像のイメージが紡がれてゆく。中盤で、車に乗って海辺の別荘に行くような映像が展開されるが、そこから何があるというわけでもない。
印象的なのは、積み木と骰子を使ったストップモーションアニメ(シュヴァンクマイエルの先駆け!)と、キキが瞼に描いた目のショット(ブニュエルもやってたような)あたりか。

「理性への回帰」は、「エマク・バキア」の祖型ともいえる、最初につくられた3分程度のダダ的な映像作品で、ネタも概ね被る。裸のおっぱいに影がうつりこむ、007のオープニングみたいな終盤がなかなかいい感じ。

「骰子城の秘密」はタイトルだけ見ると、国書刊行会から出ているゴチック小説みたいだが、内容的にはどこぞの別荘で6人組が遊びまわるすっとぼけたもので、映画『ゾンビ』で出てきたスーパーマーケットの一幕みたいなところがある。妙に多幸感があって、わきゃわきゃしていて、夢幻的な……。全員が顔にストッキングをしているのを観て、このあいだ観たばかりの『皆殺しに手を貸せ』を思い出した。

― ― ― ―

でも、率直にいいます。
映画館で、これら4本を、ジム・ジャームッシュの音楽付きで観た感想を包み隠さず述べるならば、僕にとってはただひたすら……眠かった!
いや、実際、何度も寝落ちした(笑)。

さすがに、なげーよ! このノリで70分は!!!

もちろんこれに順応して、環境ヴィデオのように馴染める人もいるだろうし、
マン・レイの思想とダダイズムについて、思索の翼を広げられる人もいるだろう。
ギターを用いたミニマルな感じの音楽を語れる、この手の曲の得意な方もいるはずだ。

だが僕にとっては、そもそも「覚醒している」こと自体が「荒行」のような、眠らないことそれ自体が目的化したような、居心地の悪い映画体験だった。
むしろ、寝る前にTVで流して、導眠儀式として利用するとちょうどよろしいような……(笑)。

どれだけ、稚気に富んで、創意にあふれ、先駆的な映像表現だったとしても、「意味を拒絶した」イメージの連鎖を、ひたすらダルい音楽にのせて見せられるというのは、身体的な部分で「集中力を保持すること自体」に限界があると思う。
似たようなものでいえば、たとえばケネス・アンガーの特集上映(『マジック・ランタン・サイクル』)なんかは、もっとバラエティ性もあれば目先を変える要素もあるし、音楽もより刺激的なつけ方がなされているし、なんだかんだで飽きさせないところがあった。
だけど、今回のは……、僕にはちょっとしんどかったです。なんかすいません(笑)。

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じゃい

2.5音楽が

2025年2月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

寝られる

付いてなければ、もっと短時間で眠りについたろう。解らない、全く、さっぱり、所々挿まれる詩篇も。でも苦痛でもない。
思った事。まともに人間を撮る気がない、ストッキングを被ってたり、カメラが遠かったり、瞼に目を描いていたり、顔を水に漬けていたり。すりガラス越しの人間たちが動くのを見ると、絵画の中から動き出した様。動きの有る絵画、写真を撮りたかったんじゃないか。
しっかしこういうモノを捧げられて、高貴なご婦人は嬉しいんだろうか?

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トミー

1.5賽を捨て、プールへ飛び込もう。

2025年2月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

美しい場所というのは、膨大な人生模様をアーカイブする程の力があると思う。
望んでここに来るという必然性と、百人百色の人生がそこで交差するという偶然性がいわゆるパワースポットと呼ばれる場所にはあるのだろう。
そんな神秘性を感じた。

解釈も意味もぶん投げ気味なサイレント映画に、ある意味超個人的解釈の押し付けとして音を乗せる試みであるから、気にいるいらないの感想に分かれるのは仕方がない事で、
私は音の主張が強すぎて本題が薄れた様に思う。
元が演奏主体でのバックグラウンドムービー的起用だった様なので、まあ致し方ないのかな。

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や

4.5およそ百年前の前衛芸術家マン・レイの短編映像に、 即興音楽を新たに...

2025年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

幸せ

およそ百年前の前衛芸術家マン・レイの短編映像に、
即興音楽を新たに加えたもの。

見慣れた映像構成ではない、あえて構造を持たない、
詩的または破壊的にすらみえるような。

新たに加わった音楽は、即興的でもあり、
フリージャズのような響きもあり、耳に楽しくて
(たぶん万人受けはしなさそう)。

美術館などで物思いにふけるときのような体験でした。

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woodstock

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