「人間の本質と究極の生存本能」木の上の軍隊 HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の本質と究極の生存本能
まずは、戦争により命を失った方々に追悼の意と、本作のモデルとなった佐次田さんと山口さんに、生還された喜びと感謝をお送りいたします。
毎年恒例ですが、戦争の悲劇を伝える映画。
本作は、「生きる」「逃れる」事だけを目標にした人間の究極の生存本能の行使と、時代や民族に支配され構築された「性格」というものが、究極の状況で最終的には心の安らぎ、「平和」を望む「優しい性格」にたどり着くという「性善説」を伝えている映画と思えました。
それは、私は一つの仮説として、気付かれていた可能性の考察にも繋がります。
いくら大きな木で、更にカモフラージュしていたとしても、人間の居る気配や痕跡は何かしら有る。
悪と善の戦いではなく、それぞれの民族間の大規模な争いであり、当然戦争行為を良く思わない軍人も多いはず。
それは敵国も然り。
もしかしたら、気配は有っても敵意を示してこないため、見逃していたのかもしれない。
もう、殺し合いはする必要がない事に意識が向いていたのかもしれない。
直接支援できないにしても、もしかしたら廃棄において生き残るための物を残してくれていたのかもしれない。
もしかしたら、背中を撃たれてももう殺し合いをしたくないという「優しい性格」になっていたのかもしれない。
「性善説」。私はそれを信じたいと思いました。
鎖国的な思想により「絶対拒絶」の意識が強すぎた日本帝国だが、それもまた思想に支配されてはいても、人間の本質ではない。
それを相対的な立場の人間を主役にした本作によって表していると思う。
最後は、「平和」に合意する。
残念ながら戦争は現実的に無くなっていませんが、それでも戦争の悲劇をこうして後世に伝えていく事が重要であり、少しずつ反戦の意識が波及していってくれていて、日本において昨今戦争が勃発しない事は、その証明であるとも思えます。
出来れば、戦乱を継続している諸外国にも伝わってくれると良いのですが。
最後に、苦悩や純粋な思い、奇妙であり現実的でもあるユニークな心情を好演された堤さんと山田さんに称賛を送り、良い映画であった事をお伝えいたします。