「SNSの匿名性に潜む悪意」#真相をお話しします bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
SNSの匿名性に潜む悪意
第22回『本格ミステリー大賞』を受賞した原作は、発刊当時に既読。新人作家さんながら、現代社会におけるちょっとした歪みから生ずる怖さを、巧みに描いたオムニバス・ミステリー作品と記憶していた。それが、ミセスの大森元貴とタイムレスの菊池風磨のW主演で映画化と聞いて、楽しみにしていた。予想以上のミステリアスな展開と構成演出で、なかなか面白く仕上がっていた。
日常生活に潜む危険と闇をテーマに、巧みなミスリードから、意外性のある真実を明らかにしていく。原作では5編からの短編集だったが、本編では、その中の『拡散希望』と『三角奸計』の章を抱き合わせた形で、菊地演じる冴えない警備員・桐山とその友人・鈴木が中心となって物語は進む。そこに、世間が知らない暴露話をして、その投げ銭によって多額の報酬を得ることのできる『真相をお話します』のYou Tubeチャンネルの管理者・砂鉄が絡み、主に3つの話がオムニバス形式展開していく。
本作での暴露話は、『家庭教師派遣サービス業』や『マッチング・アプリとパパ活』、『リモート飲み会』、そして『You Tubeチャンネル』と、現代社会における身近な話題をテーマとしている。それらは、日常生活において、次第に大きなニーズとなっていきている分、一方で、大きなリスクもあるのも否めない。また、大人だから、子供だからと言う境界線が振り払われ、SNSによるデジタル化や情報化の波と匿名性によって、対等に飲み込まれる怖さも感じさせる。
前半から何となく不自然なズレを感じさせるのだが、前半はあまり深堀しない描写が続き、後半になって、それらを一気に覆す、どんでん返しが待っている。改めて振り返ると、前半から意味ある布石を数多く散りばめられていて、後半で、それらが一つ一つが繋がり、真相に迫る緻密さは、なかなか面白かった。ミステリーであるため、なかなか内容や展開は、書き込めないので、是非、劇場で観ていただきたい作品。
本作で初主演の大森元貴と菊池風磨だったが、それなりに自然体の演技力を発揮していた。特に、全くの映画素人の大森は、腰を痛がるシーンにやや臭ささもあったものの、スクリーン・デビュー作としては、上出来だと感じた。『キャラクター』でサイコパスを演じた『セカオワ』のフカセに継ぐ、ミュージシャンのエンタメ性の幅広さと演技力をみせてもらった。
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