Playground 校庭のレビュー・感想・評価
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見たくない現実を突きつけて来る”問題作”
珍しいベルギー映画。小学校に通う兄妹の話でした。
引っ込み思案の妹・ノラが小学校に入学し、当初は同じ学校に通う兄・アベルに頼り切りだったものの、実は兄も壮絶なイジメに遭っていて、妹に構っている暇はないという地獄絵図に、正直嫌悪感すら覚えました。それでもどうにかこうにかクラスメイトと仲良くなった妹でしたが、兄は相変わらずイジメを受けており、妹が先生、父親に助けを求めてようやく学校側も対処することに。
ところが兄が原因で今度は妹がクラスメイトから嫌われる羽目に。行くも地獄、帰るも地獄。最終的には兄がさらに弱いクラスメイトをイジメるという無間地獄。そんな兄を必死で止めて最後は兄妹で抱き合ってエンディングでした。
母親がいないらしいシングルファーザー家庭、しかも父親は失業中らしいという設定も地獄。悲しさ、切なさの点では間違いなく今年No.1の作品でした。特に前半部で感じた嫌悪感は、潜在的に見たくない現実をまざまざと見せつけられたからだろうかと思いました。そして兄妹で喧嘩をしながらも、最後は家族の絆を見せられて、かろうじて精神の平衡を取り戻した感がありました。いずれにしても、観るのに覚悟がいる作品でした。
ストーリー以外の部分でも個性的で、基本妹の視野を映像化し、彼女の意識下にある物以外はピントを合わせない映像も効果的でした。また、兄妹がいずれも可愛い子役で、これまた切なさをマシマシにしていました。特に主人公ノラを演じたマヤ・バンダービークの自然な演技は、驚愕するほど上手でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。
ドキュメントにしか見えないくらい、 うまくできた映画 疑問を感じる...
ドキュメントにしか見えないくらい、
うまくできた映画
疑問を感じる流れもあるけど、
色々感じたり考えたりできた
全然関係ないけど、
同じ日に見た別の映画(フライトリスク)でも、
この映画と全く同じビニール袋の使い方をしていて、
あまりのシンクロに驚いた
よく出来てるんだろうけど気分わるい…
彼らの世界
小学校に入学するもなかなか馴染めずにいた少女が、ある日学校で兄が虐められている姿を目撃してしまい…。変わりゆく複雑な兄妹関係の物語。
初っ端から今生の別れかと思ってしまいそうな初登校場面から始まり、あれよあれよと言う間に兄アベルの辛い姿を目の当たりにし…。
軸として描かれているのが虐められている兄ではなく、その現状を見守る妹であるという点が斬新ですね。
自分の子供時代を思い出せば誰にでもすぐ分かると思いますが、子供の社会も大人が思う程単純じゃないですよね。
ノラ自身は当然何も悪いことをしていないのに、アベルのこともあり…子供の無邪気さは時に本当に残酷だ。
パパもねぇ…心配になるのは勿論だが、その干渉の仕方を間違えば事はより複雑に…。
そんな感じで、とにかく子供社会の残酷さをリアル過ぎるほどに描いていて目が離せない。そして終盤には…おいおいどうしてそうなっちまうんだよ…。
結局誰も彼も、見下し虐める相手がいることで自分を保っていられるのか。まぁ、大人でもよくあることか。
リアリティいっぱいに描いている点が良かっただけに、最後はちょっとある意味映画っぽすぎてアレだったけど、誰しもが没入できる狂おしさをヒシヒシと感じさせてくれる良作だった。
喧嘩とイジメは違う!子どもにだってわかること。
強烈な描写。
これが学校で起きてるなんて、そしていじめ方は万国共通。
仲直りのさせ方も、同じなのか。
いじめられた側に、仲良くできるかを聞くなんて、ナンセンスでしかない。
できるか、ではなく「したくもない」だろうに。
大人よりも子どもの方がアンテナ立ってる。不安と恐怖が入り混じる校庭。
いったい、大人は何をやってるんだ?
インパクト強い
ドキュメンタリーの様な作品。見る価値ありました。
子どもの世界
いきなり始まりいきなり終わる。
内容が私にとっては衝撃的で最後は呆気にとられてしまった。 細かい詳細や理由は何も語られません。
最初から最後まで学校の中だけでの出来事です。
兄が(多分小4が5くらいかな)いじめられていて妹が小さな胸を痛めるわけですが、だんだんとやり返さない兄に苛立ちそのうち兄さえいなければ自分はもっと楽しく学校生活がおくれるのでは?と思うようにまでなるわけで。
お父さんも心配して色々手を尽くしてくれるし(母親の存在は語られない、いないのか、病気で寝たきりなのか)
理解して優しく寄り添ってくれていた女先生も途中で学校を去ってしまい、これも理由は語られないのだか想像するに教師という複雑で特殊な仕事が自分の手に負えなくなってしまったのかもしれない。
ほんとうにやりきれない、目を伏せてしまいたくなるような映画でした。
無自覚な大人は、子ども世界のヒエラルキー要因になっていることに気づいていない
2025.3.11 字幕 アップリンク京都
2021年のベルギー映画(72分、G)
子どもの視界から見える世界を描いたスリラー映画
監督&脚本はローラ・ワンデル
原題は『Un monde』で「世界」、英題は『Playground』で「遊び場」という意味
物語の舞台は、ベルギーのとある小学校
7歳になったノラ(マヤ・ヴァンダービーク)は、10歳の兄アベル(ガンダー・デュレ)と同じ小学校に通うことになった
怖さからパパ(カリム・ルクルー)にしがみつくノラだったが、先生に引き剥がされて連れて行かれてしまった
ある日のこと、ノラは学校のトイレにて、便器に顔をぶち込まれているアベルを見てしまう
慌てて監視員を呼びにいくものの、監視員は目の前の怪我をした子どもの相手をしていて取り合ってくれない
仕方なくトイレに戻って兄に話しかけると、「構うな、誰にも言うな」と釘を刺されてしまった
その後も、アベルはアントワン(Simon Caudry)を中心としたグループにいじめを受けているようで、ノラは耐えきれずにパパに伝えてしまった
パパは学校を介さずに該当生徒に注意をするものの、それによっていじめはさらにエスカレートしてしまうのである
映画は、子ども目線による学校を描いていて、カメラの高さもノラの目線に近いまま固定されている
彼女が見ている世界は明確に再現され、大人は彼女と同じ目線にならないと視界に入ってこない
冒頭の連れ去る先生も遠くに行ってからようやく顔がわかるように描かれていて、授業中に注意をする先生もほとんど視界を合わせには来ない
ノラは水泳が苦手だったが、その授業を機にヴィクトワール(Elsa Laforge)とクレマンス(Lena Girad Voss)と仲良くなっていく
また、担任のアニエス先生(ローラ・ファーリンデン)は、彼女の目線にまで体を下ろして、同じ高さで接してくれる唯一の存在だった
物語は、兄を助けたい妹が動き、それに感化された父親が動くことで事態が悪化する様子が描かれていく
校内には監視員がいるものの、校庭で堂々と行われているゴミ箱に放り込む行為とか、イスマエル(Naël Ammama)がビニール袋で頭を覆われている行為などには気付けていない
トイレのいじめも複数の生徒がトイレの前に集まっているのに、大人はそこには寄ってこない
それが人員不足がゆえなのかはわからず、あくまでもノラが捉えた世界で知り得た情報のみが描かれていく
また、アベルがいじめられている原因はわからないし、彼もそれを語らない
ノラが介入し、ゴミ箱の事件が公になったことで事態は動いていくのだが、それでもいじめがなくなるわけではなく、別の子どもが犠牲になってしまう
子ども社会における「どちら側につくのか」と言う問題は避けられず、何かしらのコミュニティに属しないと、ストレスの捌け口になったり、単なる面白さの対象になったりしてしまう
この時に生まれるヒエラルキーというものは後の人生に大きく影響するのだが、それはこの時に大人がどう動いたかというところも起点となっていく
アベルたちのパパはいじめを辞めさせるために介入するものの、子ども目線だと「働いていない大人」なので、彼の言動には説得力も重みもない
子どもにとってのアイデンティティの構成要素の一つには「親の社会的地位」というものが付随し、それ以外にも「母親が美人である」とか、「兄弟が優秀である」というものもアイデンティティの中に組み込まれがちだったりする
それらが本人の評価とは無縁であることは理解できても、ヒエラルキーを作る要因になっているので、それを理解していない大人が首を突っ込むとロクなことにはならない
それは、アベルたちがパパを誇りに思えないのと同じで、それゆえにパパの介入は自分にとって不利益であることを感じている
頼るべき家族の質というものがそれに拍車をかけるので、今回のケースの遠因として、父親の無職状態というものが影響しているのは否めないのだろう
いずれにせよ、視界を重要視する映画で、ほとんどのショットがノラの目の高さで再現されている
見えている部分と見えていない部分があるのだが、ノラ自身はきちんと見るべきものを捉えている
問題は、見ないと決めたものでも見てしまうようになり、それが思考の全てを支配してしまうことだろう
これは大人でも起こり得るものだが、ノラの年齢だと「それが思考のすべて」になってしまう
そうした先にある感情の起伏というものがとんでもない行動を生み出すのだが、ノラの場合は「アベルと一緒にいて、彼を取り戻したい」というものだったので、それが最後の行動になっていた
その先に何があるかを考えることもないのだが、おそらくは自分とアベルの世界を守るためだけに動いていくと思うので、その原因を除去する方向に動くのかもしれない
もっとも、その前に大人がノラとアベルを排除すると思うので、このような対応をしている限り、同じようなことは続いていくのかな、と感じた
いじめダメ!絶対。
この箱庭は狭すぎる
徹底した子ども視線による「世間」でのサバイバルを描く。
原題は「Un monde」。世間とか世界とかの意味になるが、これは初等学校(ベルギーでは日本と同じ6年制の初等教育がある)に入学したばかりのノラから見た世界の全てを表す。ノラは父親と兄アベルと暮らしている。母親は離婚したのか姿は現さない。元々、狭い3人での暮らしが全てであったのが学校に行くことによってノラの世界は広がる。最初は学校の中でもアベルの姿を追い求めるノラだがだんだんと順応できてくる。
ところが実は学校の中ではアベルはいじめられており、兄を助けたい思いと、自分は巻き込まれたくない思いが、ノラを板挟みにする。
このいじめに対する学校側の対応がいかにもマニュアルベースであるところ、安易にいじめに加担してしまう子供がいること、いじめの被害者は時として加害者に入れ替わってしまうこと、多分失業中で家にいる父親が干渉することで子供たちの立場が悪くなるところ、いかにもという話ではあるのだが、これはそういったことを告発する作品ではおそらくない。
ノラにとっての全世界である学校、親子関係、兄妹関係の中で、ノラが必死に見て、聞いて、考えて、行動する姿を描いている。つまりそこにあるのはサバイバーとしての全世界との対峙である。
それは痛々しく、でも瑞々しく、そして我々自身の社会との関わり合い方をも思い起こさせてくれるのである。
居場所
小学校に入学し、いじめられるお兄ちゃんをみて心を痛める妹の話。
校門でお兄ちゃんや送ってきたパパと別れるだけで寂しくて不安で泣いちゃうノラから始まり、可愛らしくも微笑ましいのだけれど、何より演技力に驚嘆。
ホント海外の子役のレベルの高さは凄いよね。
そんなノラにも友達が出来て明るくなっていく姿をみせつつ、アベルのやられっぷりが加速していき、それをみるノラをみさせられて、どちらの気持ちもわかるモヤモヤっぷりが堪らない。
かなり堂々とイジメが横行しているのに、教師も監視員もポンコツ過ぎるけど。
小さな世界のことだけれど、彼らにしたら相当大きな話しだし、アベルではなくノラが主人公で、その機微と成長をみせるというのがお見事だった。
大人の階段を上る…とは、こんなにも残酷なものなのか
アカデミー賞あげたい
短編ドキュメンタリー風
ある兄妹が小学校で体験するいじめを、ドキュメンタリータッチで撮影した作品。
米映画でティーンのスクールカーストものの映画はよくありますが、ヨーロッパ映画で小学校低学年(たぶん)を主人公にしたものは珍しいと思って鑑賞。
徹頭徹尾、子供目線のローアングルで撮られた映像は学校の閉塞感と、不穏な空気が感じられてgood。校内の喧騒もリアル。
いじめはあんな風にさしたる理由もなく、些細なきっかけで起こるものです。
男子の虐めは暴力で、女子のいじめは仲間はずれ、はどこの国も一緒ですね。
外国の映画を観る楽しみのひとつに異文化を知ることがあるのですが、子供たちが「だるまさんがころんだ」にそっくりな遊びをやっていて、世界共通なんだと。
あと、休み時間に校庭で遊ぶ子供たちを見守るのは教師ではなく「監視員さん」と呼ばれる、それ専門に雇われている人がたった一人。教師も休み時間をしっかりとる、ってことなんでしょうが(労働環境にうるさいヨーロッパらしい)目が行き届かないし(案の定いじめが起こる)、親は不安しかないなと思いました。
原題は「un monde」(世界、世の中、社会)。
子供にとっての社会は狭い学校の中が全てで、その中で生き抜くしかない、というぞっとする感覚を久しぶりに味わえました。
カメラワークの妙
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