「パニック映画はこんなんでいい」プロジェクト・サイレンス kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
パニック映画はこんなんでいい
イ・ソンギュという俳優は、イイ男でありながら裏がありそうな感じで幅広い役を担ってきた。惜しい人を亡くしてしまったと感じる。本作で彼が演じるのは、娘思いの役人。娘思いという意味ではいい人なのだが、職務に忠実すぎたりリアリストすぎてちょっとやな奴だったりする。こういう役に彼は絶妙に合ってる。
空港に続く道路の上で起こった交通事故に加え、救助ヘリの墜落という多重事故に巻き込まれた人々を描くパニック映画。そもそもの発端が承認欲求の強いYouTuber的なやつの迷惑運転ってところがやるせない。そこから、玉突き事故に発展し、海上の橋で孤立する流れ。本格ミステリーじゃないけど、クローズドサークルが完成する流れはなかなか面白い。
そこから軍事目的で開発されたエコーたちが放たれるともう道路上はカオスだ。そこからはパニック映画の様式に従って話が進む感じ。狭い空間の映像、道路上を俯瞰で観た映像、橋全体を映した映像をうまく織り交ぜて、このカオスでパニックとなった状態をうまく表現していた気がする。
そもそもこの状況を招いたYouTuber的なアイツがどうなったかは描かれなかった。生き残って、撮影しながら色々と勝手なこと言ってエコーに殺されるシーンが欲しかった。それでも、次々と起こる困難に立ち向かう彼らが生き残ろうとする姿と、彼らの結束はなかなかテンションが上がってしまう。ものすごく驚きの展開はないが安心して観ていられたパニック映画だった。新しい展開がなかなか観られないところを見ると、パニック映画ってアイデアが出尽くしているのかもしれないなんてことを考えてしまう。でも、パニック映画はこんなんでいいと思う。十分楽しかった。