「桐島です」

劇場公開日:2025年7月4日

解説・あらすじ

1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を映画化。2024年1月に末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明した桐島聡は、偽名で逃亡生活を送っていたものの「最期は本名で迎えたい」と素性を明かし、大きく報道されたが、その3日後に他界。数奇な道のりを歩んだ桐島聡の軌跡を、「夜明けまでバス停で」の高橋伴明監督のメガホンで描く。

1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。反日武装戦線「狼」の活動に共鳴した大学生の桐島聡は、組織と行動を共にする。しかし、1974年の三菱重工爆破事件に関わり、多数の犠牲者を出してしまったことで、深い葛藤に苛まれる。組織が壊滅状態となり、指名手配された桐島は偽名を使い逃亡生活をつづけ、ある工務店で住み込みの職を得る。ようやく静かな生活を手にした桐島は、ライブハウスで知り合った歌手キーナが歌う「時代遅れ」に心を動かされ、相思相愛の関係となるが……。

桐島聡役を毎熊克哉が演じ、奥野瑛太、高橋惠子、白川和子、下元史朗、甲本雅裕らが顔をそろえる。

2025年製作/105分/G/日本
配給:渋谷プロダクション
劇場公開日:2025年7月4日

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映画レビュー

3.5 逃亡の理由

2025年8月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 本作は、死者を悼む映画だ。桐島氏は恐ろしい極悪犯やテロリストではないと、劇中で繰り返し歌われる「時代おくれ」をなぞるようにして、彼の半生がじっくりと描かれる。暴力的な役柄から生真面目、内向的な人物まで、作品ごとにガラリと印象を変える毎熊克哉さんが、20代から70歳までを見事に演じ切っており、目が離せなかった。
 彼の寡黙な佇まいに加え、繰り返し描かれる部屋の様子と、朝のルーティンが印象的だ。(アーケード街や映画館などもとてもリアルで、往時に迷い込んだような錯覚をおぼえた。)年を重ねるにつれ、部屋の調度品は増え、変化していく。それは、彼の心の余裕の有無や、他者との繋がりをうかがわせる。追われる前の彼は、パフェを食べたりあんみつを食べたりと甘党の様子だったが、逃亡生活パートでは、朝のコーヒーに落とす角砂糖だけが甘味。酒を飲むシーンが増えていくが、時にはお菓子を口にしたのだろうか。(もし、キーナとギター練習の合間に板チョコを分け合って食べたりしていたら、彼らの人生は変わったかもしれない。)また、個人的には、マグカップだけは使い込んでいくのかと思っていたので、節目節目でカップが変わっていくのは意外だった。靴とバッグを常に手元に置いておくのと同じ、逃亡生活を送る上のルールなのだろうか。
 一方で、なぜ彼が逃げ続けたのかが、私には合点がいかなかった。破壊活動に一般市民を巻き込んではいけないと発言し、逃亡生活中も周りに親切な人物であったならば、仲間が捕まるなかで、なぜひとり逃げ続けたのか。自分たちのしたことは犯罪でないというならば、単身でも次の「行動」に出たようにも思うが、とにかく彼は身をひそめ、(逃亡というより)隠遁生活をじっと続けていた。死人に口なしで分からない、と言えばそれまでだが、本作なりの答えが示されていたら、もっと芯がある作品になっていたのではと思う。ゆえに、老いていく後半は、彼と周りのずれや、彼が抱く違和感や焦燥が、加齢や時代の変化に片づけられてしまうようで、少し惜しい気がした。
 高橋伴明監督・梶原阿貴脚本の前作「夜明けまでバス停で」が、コロナ禍の閉塞に風穴を開け放つ作品だとすれば、本作は、和紙がじわじわと水を吸い破れていくような、静かなる崩壊を描いた作品だと思う。いずれにせよ、対として味わうことで、「バス停」が、ようやく自分の中で腑に落ちた気がした。

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cma

4.0 時代遅れ

2025年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

斬新

桐島容疑者の逃亡とその死の直前の告白は、桐島容疑者の同世代の映像作家達の興味を引いたようで、同時期に2作も公開された。もう一作も機会があれば見る予定である。
ストーリーは時系列で淡々と進むが、時折彼が絡んだ爆破事件の映像をフラッシュバックさせているのは良い演出である。彼のほのかな恋や「時代遅れ」を歌うシーンは創作だろうが、彼の心象風景を表している。鎌倉の神社で仲間と待ち合わせる予定だが、文字通りすれ違うシーンも秀逸である。観ていて飽きなかった。

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コーヒービート

3.5 空白の時間に宿る現実

2025年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

時間の流れが唐突に飛んだり、重要とは思えない場面の描写が続いたりして、
全体としてやや内容が薄く感じられた。

長年に渡る逃亡生活という題材には興味を惹かれたものの、
桐島は全国を転々としていたわけでもないため、
実際にはそれほど印象的なエピソードが少なかったのかもしれない。

印象に残ったのは、キーナ役の女性がステージで弾き語りをするシーンだ。
感情の温度がふっと上がるような感覚があった。

最後にもう一つ気になったのは、桐島が入院時に保険証を持っていなかったという点だ。
身元がバレるから本人が断っていたのだろうが、
長年勤めていた工務店側から、社会保険加入の話は出なかったのだろうか。

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Avalon

2.0 青春映画風にして逃げてる感じがした。

2025年9月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なんだか美化し過ぎじゃないかと思った。
浪花節的な曲といい、武力を伴う改革、死人や怪我人が出る改革っていい訳ないし、本人たちもそれを感じている訳だし。もっとキリキリと自分を追い詰めて行くような描きかたをした方が映画として面白くなったかもしれない。

事実を元にしてるとは言っても霧島の生活部分は資料も少なくかなり想像と脚色が入ってるとおもわれる。

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masayasama