「舞台化かくあるべし、洗練されたセンス!」エドワード・シザーハンズ ダンスバージョン 加藤プリンさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台化かくあるべし、洗練されたセンス!
原作映画はだいぶん昔に、2回ほど鑑賞、もう大まかな枠組みしか覚えてなくて
というのも、なんてこぢんまりとした映画なのだと言う印象で
現代(80年代当時)におけるおとぎ話や寓話を目指した作品だと思ったのですが
あまりに当時の現代性という輪郭がハッキリしすぎていて、
もう少し、ふわっとしたファンタジーにならないのかしら?と感じておりました
そう、当時は現代のおとぎ話的にしようとして、
現代性に足を引っ張られた、悪趣味が角の立つ、
泣くに泣けない残念気味な作品という印象でした
作劇のメソッドとしては、ここで泣くべきラブロマンスなのでしょうが、
リアルが足りないのか、ファンタジーが足りないのか、惜しい映画作品でした
その点、この舞台版は上手にアレンジしており、テーマやモチーフを残しつつ、
分かりやすく、マッチョで、文明の明るい頃のアメリカのニュータウン
その時代設定ですら、令和現代からしたらファンタジーですから(日本の昭和やバブル時代が既にローカルモチーフとなるように)
良い意味での昔話、おとぎ話として落とし込めているのですね
さらにバレエの卓越した表現、ラストシーンの甘酸っぱい恋心の表現と言い
とても良アレンジですね、原作の趣味の悪い部分も含め、絵本的に仕上げてあります
舞台美術も素晴らしい、幻想的なシーンではサイドスクリーンまで用い、あの狭い劇場で
ようぞまぁというレベルの転換をみせてくれかますね
吊物のアップに映像で効果を加える演出は白眉ですね
各場面のセットも素晴らしいデザインで
ニュータウンの小さなドアから、マッチョなアメリカ人が窮屈そうに屈んで出入りする様は
もうそれだけでユーモラスであり、他国の文化から見ても、好ましく、確かにあったあの時代感を表現しています
キャラクターも魅力的で、ヒロインもこれ確か設定を変えているはずで
ウェストサイド的な敵役も、なかなか魅力的ですし
周りを取り巻くモブキャラも魅力的ですね
そしてなにより、振り付けが素晴らしい
コミカルかつ、的確に感情と行動を表現しており
クラシックの基礎があればこその、この表現幅とアレンジ、
ラストシーンのふたりのあの振り付けは、本当に本当に素晴らしく感じました
何度でも観たい、何度でも観られる、古典になりうる作品だと思います
曲も素敵ですね、これ、生オケだったのかしら、だとすると無理そうな振り付けでもあるのですが
心の綺麗なクリーチャーものとしても読み解けますし、不遇者もの、異文化もの、身分違いものとしても読み解ける題材であるところに
原作に辿り着かなかった、奥深さもまた、感じられたのでした