みんな笑えのレビュー・感想・評価
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【”辛く鬱屈した毎日を、笑いで吹き飛ばせ!”新作落語に拘る2代目と、相方を失った女性漫才師の生き様を描いた作品。】
■50歳の落語家、太紋(野辺富三)は認知症気味の初代(渡辺哲)と二人暮らし。高座に出ても覇気はなく、新作落語に拘るも笑いはない。
一方、女性漫才師の希子(辻凪子)は、相方がホストに入れ込み、挙句捨てられ一人でステージに立つ。
◆感想
・可なり粗削りであるが、お笑いの世界の厳しさは良く伝わって来た。特に落語家の二代目はキツイだろうなあ、と思う。
<今作を支えているのは、太紋の若き頃の想い人で、今はバーのママを演じた片岡礼子さんの演技と、渡辺哲さんの演技と、辻凪子さんのコミカルな存在と、そして何よりも、ラストで”抜け雀”を気合で演じ切った野辺富三の演技に依るモノであると、敢えて記す次第である。>
<2025年3月9日 刈谷日劇にて鑑賞>
みんな笑え
映画『みんな笑え』人間の弱さが、とことん描かれている、そこがいい、。本来人間は弱いものだから、そこを虚勢はって生きる人間のいかに多いことか。「皆さん肩の力抜きなさいよ」そんなセリフが、聞こえてきそうなとても素敵な作品、明日が開けてくる気分にさせてくれる
売れない芸人の日常
それは、当然ながら普通の人と同じで。
生活のために、足らない収入は、他の仕事で補うしかない。
落語家って、気楽に見えるよね。
といいますか、そう見せないといけない職業で。
だって、落語家が、、生活感丸出しだと笑えないでしょ。
たとえ、落ち込んでいても、疲れていても。
気軽に、おきらくに生きている。
そんな、感じを出さないといけないし。
そうかと言って、売れっ子になっても。
庶民感覚を見せ続けないといけないし。
落語家の日常が、リアルに
それも売れないという文字が、付くのだけど。
楽屋の雰囲気。
縦社会の窮屈さ。
あの狭い楽屋でも、ものすごく気を使う世界だし。
そして、もう一つ独身で、父親の介護も。
介護の大変さが、嫌というほど伝わってくる。
あくまでも、笑いの中に収めて入るが。
実際は、経験したものにしかわからないだろう。
そんな絶望感が、伝わってくる。
この監督は偉いよなと。
それら全てから逃げず、ちゃんとカメラに収め、向き合ってくる。
人間を描いている映画の素晴らしさ。
私の評価は、これに尽きる。
まさに人間を真正面から捉えている。
売れない漫才師の登場もいい。
漫才師の相方が、ホストにハマってゆくのも。
そう、人間って本当に弱いものだんだよねと。
お金を貢ぎながらも、その男を信じようとする。
切ない女心が、痛ましい。
人間らしい姿だと。
売れない落語家、売れない漫才師。
だけど、ひたむきに生きてゆく。
そんな、清々しい映画だ。
しょうもない俺、それこそが俺だ
落語好きとしては観ておきたかった映画。ダメな人間を地で行く噺家の物語。蛙朝、文治、枝太郎、竹丸、陽子、、。芸協の面々が役者としてちょくちょく登場してくるのは得した気分。実際の噺家さんたちは、自らを落語しかできない人間なのでと卑下した言葉を言う人もいるが、ほんとにそうならあれほどの感動を得られない。まあ中にはそうでもなさそうな噺家もいて、主人公太紋もそんなひとり。だいたい、そんな噺家はネタが一本か二本しか持ってなくていつも高座では同じネタ。ネタというより漫談。煙草を吹かしに外に出て行く中年二人連れの気分はよく分かる。自分にもやはり苦手だったり、嫌悪する噺家はいるので、この時間はなかったことにする。自分は退出まではしないまでも、目を瞑り瞑想の時間にしているが。
太紋のような噺家は、互助会的な落語の世界にぶら下がっている奴だ。腹がたつ。ネタを磨こうともせず、収入の不足を本業の芸ではなく、単純労働で得ようとしている。逃げているとしか思えない。彼には落語は単に生活の糧を得るだけの労働でしかない。「人生って嫌なことばかりじゃないですか。そんな時笑えたら幸せじゃないですか?」と言われても他人事だ。
そんな彼が変わろうとする。実際どこまで変われただろう。だけど、煙草タイムを取ろうとした中年二人を振り向かせたのは確かだ。上手いかどうかはともかく、彼の変化が二人の足を止めたのだ。
しかし太紋、喋りが下手だなあと思ったら、落語監修が某師匠(名前は伏せましょう)。高座の姿を見て、似てるなあとは思っていたが、ほんとにそうだった。実際の某師匠も、たどたどしさはある。そこが味ではある。そこを狙って監修を依頼したのなら、キャスティングに関しては成功と言える。
見に行って良かった。
不器用の愛おしさ、人情の暖かさ
主人公の落語家 太紋、お笑い芸人 希子 との関係を軸にしつつ、
彼らを見守る周囲の人間の暖かさや、
背景、置かれた状況の空気感がしっかり伝わってくる映像やセリフがすばらしい。
主人公の落語家 太紋は世間的には不甲斐ないかもしれないけれど
不器用ながら彼なりに一生懸命に生きている姿が
野辺さんのイメージにぴったりハマっていて、
時に気持ちがグチャグチャになって暴走してしまう姿には可笑しくも、
不思議と共感、感情移入しながら観ました。
父親の渡部哲さん初め、
希子の辻さん、母親の片岡さん、弟弟子の今野さんなど
太紋の周りの人物もみなキャラクターが典型的ではなく、
活き活きしていてほんとうに魅力的。
そして落語の噺と太紋の生き様、
お笑いの舞台と寄席がシンクロしていくクライマックスでは思わず涙。
じんわり暖かい気持ちで劇場を後にしました。
キャスティングの妙が光る噺家話
過日、K's cinemaで上映されている本作を鑑賞するために、ネットでチケットを購入しました。ところが、うっかり『雨ニモマケズ』のチケットを間違えて買ってしまい、改めて慎重に購入し直した結果、無事に本作を鑑賞することができました。
落語好きとしては必修科目とも言える本作。物語は、父親であり師匠でもある初代・萬大亭勘太(渡辺哲)の名跡を継ぎ、二代目・萬大亭勘太となった斎藤太紋(野辺富三)を中心に展開されます。初代は人気・実力を兼ね備えた名噺家でしたが、高座でネタを忘れたことを機に引退し、息子に名を譲ります。現在は認知症を患い、自宅で静かに過ごしています。
一方、二代目は父の実力には遠く及ばず、寄席に上がっても常連客がタバコを吸いに立ってしまう始末。彼は初代と異なり新作派で、「夢のベストナイン対決」を得意ネタとしていますが、客の反応はイマイチどころか“イマサン”といったところです。
“親の七光り”として注目を浴びがちな二世ですが、落語の世界でも“二世議員”や“二世タレント”同様、ネガティブなイメージがつきまといます。歴史を振り返れば、五代目・古今亭志ん生の息子である十代目・金原亭馬生と三代目・古今亭志ん朝という稀有な親子も存在しますが、まあこれは特別な例なのでしょう。
本作の二代目・勘太=斎藤太紋は、“二世”の負の側面を煎じ詰めたような人物像であり、主演の野辺富三のキャスティングは、あまりにハマりすぎて怖いほどでした。あのフラのなさは、中々出せるものではないと思われます。
もう一人の主役は、なかなか芽が出ない女性漫才コンビ「レベチーズ」の濱本希子(辻凪子)。彼女は勉強のために訪れた寄席で二代目の「夢のベストナイン対決」を聞き、その内容をヒントに漫才のネタを考え始めます。こうして、二代目と希子の擬似師弟関係が生まれるのでした。
辻凪子の漫才は非常に巧みで、本職の芸人かと思うほどの出来栄えでした。特に後半、相方が入院し、一人二役でネタを演じる場面は、まるでナイツの実験漫才を彷彿とさせるもので、強く印象に残りました。
主演の野辺富三と辻凪子は今回初めて観ましたが、初代・萬大亭勘太役に渡辺哲、そして希子の母親でかつて二代目と交際していた濱本陽子役に片岡礼子が起用されており、その安定感が作品の土台をしっかりと支えていました。特に片岡礼子は、先日観た『嗤う蟲』でも素晴らしい演技を見せており、その魅力に再び惹き込まれてしまいました。
上映後には、先日観た『雨ニモマケズ』同様、監督らによる舞台挨拶がありました。K's cinemaは、今回で2回連続の訪問となりましたが、アットホームな雰囲気があり、制作者や出演者の話を直接聞く機会が多いなど、実に素敵な映画館だと感じました。
そんな訳で、本作の評価は ★3.4 といたします。
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抜け雀
何事からも逃げてきた、自作新作落語一作一辺倒で、落語ファンから愛想を尽かされた50代の落語家の話。
枕が始まるとまたこれかと…タバコ休憩をとられたりヤジがとんだりのポンコツ落語家と、実力が伴わないのにネタも書かずアドリブで漫才をして叱責される女性漫才師が交流するようになり巻き起こっていくストーリー。
このネタだけで何十年も?なんてあまりにも向上心がない感じだったけれど、一応ベストナインの中味は変わっている体なんでしょうかね?
なんて思わせる流れもあったし、意外な…でもない匂わせまくりの人間関係からのゴタゴタがあったりと結構遊んでいた感じだけれど、スナックでのドタバタ劇はなんだかね…。
まあ、そこからの本業での山場はありがちながら盛り上がったから良かったかな。
あっ、下ネタに頼る噺家はどうかと思うけれど、映画館ではウケてましたよw
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