異端者の家のレビュー・感想・評価
全280件中、161~180件目を表示
神に祈るのはどうして? 神に祈りたかったから
宗教と信仰をテーマにした、サイコホラー。
モルモン教の2人のシスターは己の信仰を示し、生きて出られるのか・・・!?
ややこしい…
と言うか、この映画の感想を書くにあたって自分の宗教観をしっかりと見据えたのもあって、感想も自分の宗教観を延々と書き連ねそうになってしまう…
さて、本作がサイコホラーなのは間違いないのだけど、実態はかなり哲学的であり”信仰とは何か”を問う話。
西洋での宗教の歴史や教義などが矢継ぎ早に浴びせかけられるので、それらについてある程度見識があると良い。
また、主人公2人がモルモン教の教徒なので、それについても知っていると更に良い。
どちらかと言えば日本人視点ではリードの弁に納得する部分が多いと思えるが、宗教観の乏しい日本人にとっては理解が難しい部分があると感じた。
個人的に特に感じた特に理解が難しい部分は以下の2つ。
①信仰宗教を持たないという孤独感
②真実性へのこだわり
この部分がMr.リードが唯一の真実の宗教を求める原動力であると思っている。
宗教の話から、既存の宗教への批判や挑戦として捉えられてしまうように思えるが、実際には宗教よりも信仰に対してフォーカスが当てられている。
順序で言えば信仰があって、宗教があるのだろう。
だからこそ最終的にシスターはあの境地に辿り着いて祈りを捧げ、今までの論理的な議論に沿わない”彼女の感想”が美しく映えている。
A24がクレジットされてなかったら…
A24製作といえば「ミッドサマー」、「X」、「MEN 同じ顔の男たち」など一癖も二癖もある作品が多い中、この「異端者の家」はA24がクレジットされていなかったら観賞しなかったと思います。
期待して観賞しましたが『なんだ、フツーじゃん』と期待ハズレだったのはいがめない感じでした。
ただ、あのヒュー・グラントがなかなかのはまり役でビックリしました。
そういう意味では「A24ありがとう!」と言いたいですね。
でも、死んだはずのシスターバーンズがあのような形でシスターバクストンを助けるのであればもう少し伏線がほしかったです。
家に着く前から
良かった。
予想していた迷宮脱出ではなかったがこの感じもなかなか良かった。
まずヒュー・グラントもそうだが女優2人もめちゃくちゃ顔がいい。ああやっぱり女優は美人だわと思った。
ということ以上に脚本が結構よくできていたように思う。
リードおじさんがモノポリーで宗教を表現する演出は面白かった。
モノポリーを調べたら本当に原型になるエリザベス・マギーの地主ゲームが出てきた。
まあ作中でもツッコミがあったように地主ゲーム、モノポリー、モノポリー別バージョンがユダヤ教、キリスト教、イスラム教というのはだいぶ大雑把過ぎではある。けれどもなるほど感はあった。うわ、自分支配されちまうわ。
ショートのバーンズの方が抗っていて一見強そうに見えるが、であるがゆえに退場が思いの外早かった。
ロングのパクストンの方が流されやすい雰囲気を醸し出しつつバーンズ死後は戦う決意をするのは成長物語感があって良かったと思う。
序盤に写真撮る女の子達に騙されてマジックパンツさらされたのすら後半の伏線になっていた。
バーンズを刺す合言葉をマジックパンツにしている。
マジックパンツの合図でバーンズが刺すかと思いきや逆に刃物を隠し持っていたリードに刺される、という悲しい展開になるも。
終盤でリードが調子こいて「お前は周りから言うなりだ。例えば下着のマジックパンツですら!」みたいな発言をしたらパクストンがキーでリードをブッ刺すという綺麗な伏線回収。
ここら辺の脚本は本当にうまかったと思う。
思えば冒頭で自転車を持ち上げて階段を上がっていたのも「リードの家が普通では行きにくい高い場所にある」という伏線になっていたんだな。
家に入った最初の方で窓に蝶がとまる演出があり、中盤で胡蝶の夢の話が出て、ラストに脱出したパクストンの元に蝶がくる。これは死んだバーンズの生まれ変わりなのではと思わせてエンドロールに入る回収の綺麗さ。
毒入りパイを食べ死んだ女が生き返る奇跡を見せたかったリードおじさん。しかしそれは死体隠し入れ替わりトリックだと見破られた。
にも関わらず、終盤にパクストンが刺されて大ピンチ!なところを死んだはずのバーンズが立ち上がってリードにとどめの一撃をくらわす!という「死んだ人間が生き返る」奇跡展開をわざとやる対比のうまさ。しかもとどめの釘ついた板は前半でバーンズが柱にさりげなく立てかけていたモノの伏線回収でもある。
この映画はこういった伏線回収がとても綺麗。
「これ2人がかりなら結構前半で脱出できたんじゃない?なんなら他にも逃げるチャンスは割とあったような」感もあるはあるが、それを補う脚本と演出のうまさがある。
宗教は支配だ、と終盤でマイナスな雰囲気を示しつつも、でも相手のことを想って祈るのは美しいよね、というプラスの感情も忘れない。
どっちの扉選んだところで結局出れねえじゃねえかというリードの小狡さ含め。
とにかく本作はよくできた少人数サイコサスペンスの家になっている。
悪役ヒュー・グラントを満喫
予告を見たときはもっとギミックのある建物に閉じ込められた女性2人の脱出劇だと思ってましたが、実際の作品はかなり違いました。
昨今のヒュー・グラントの悪役ぶりが好きなので、そこを期待してたのでそこは大満足。胡散臭いヒュー・グラントの「宗教論」とそれに翻弄されるモルモン教の宣教師2人という見応えのある作品でした。
ラスト近くの展開は若干予定調和気味でしたが、しっかりと楽しめる一作でした。
A24のエッセンスが詰まったドントブリーズみたいな映画
宗教論破おじさんの家に忍び込んだモルモン教の若い女性2人が主人公。
モルモン教の知識だけでも予習をしていた方が良い。
人間が他の動物と違うところは、何かを信じることができるということ。
動物は本能で生きるけど人間には宗教というものがあり、それを軸に道徳観、人生観、死生観がある。
それを徹底的にいじくり回して論破してくる嫌なおじさん😢笑
ほとんど家の中のシーンでの会話劇だけど、テンポ良く進むので飽きることはない!上映時間もちょうど良し!
考察しようのある作品なので文句なし。
唯一あるとすれば配信で観ても大丈夫かなと。映画館で観るべき映画ではないのは、画に風格があるわけでも音が素晴らしいわけでもない。スマホで観ても評価は変わらないかなと。
ストーリーは素晴らしいので、映画が好きな人にはおすすめ👍
閉塞感半端無い❗️ヒューグランドサスガ👑
面白いのもわかる。面白くないのもわかる。
鑑賞した後、タイトルにある「異端者」の意味をしばらく考えていた。ヒュー・グラント演じる悪役が「宗教的な異端者」という意味ではなく、「思想的な異端者(危険思想者)」という意味だったのかと思う。原題の「HERETIC」も異端者って意味だし。
序盤は主人公二人と宗教論争をしていたり宗教的な問いかけを続けているから、この悪役も何かの派閥に属しているのかと思いきや、突き詰めると(宗教ではなく)危険思想にのめり込んでいる人物だった。
モルモン教の事は詳しくないですが、アメリカ国内でも「変わった教義を持つマイナーな分派」くらいのイメージ。つまり、彼らの論争部分の大半は理解しきれなかった。避妊インプラントを摘出するシーンも「わからんが、たぶん婚前性交渉の否定との矛盾を指摘しているんだろうな?」と思った。多分、日本人の大半が理解できない。
ただ、そういう不明な部分はあっても観客を引っ張り込む力があるのも感じた。序盤はジリジリした違和感に始まって家の奥に進む度に違和感が恐怖に増幅していく流れは非常に良かった。この手映画だと犯人の正体が暴かれると途端に萎えるものが多いが、悪役の正体を暴いた後もしっかり仕掛けを残していた点はいい感じ。
よく喋るのに本心や思想の根幹を見事に隠している悪役、「舌戦の攻防が巧み」でありながら、(最終的には負けなければならないために)ある程度弱い、といういい塩梅が出来ていたと思う。「よく考えたらあのトリックを全部独りでやって、独りで〇〇の世話とかやってるんだよな……」と思うと中々の努力家だ。あと、主役二人を閉じ込めるための仕掛けを操作するシーン、音とスピード感が合ってて好き。
良い意味でも悪い意味でも「きちんと閉じこもっている映画」だった。例えば死んだと思われていたシスターが起き上がって悪役にトドメを刺すのも、予め「復活」というキーワードが出ていて伏線になっている。
主人公二人が外の人間に助けを求めている間は家の外のシーンもあったが、二人が外を意識せずに目の前の悪役に相対するようになるとそれも無くなる、というように観客の意識の向け方が上手かった。
個人的には良し悪しありつつの良作、という感じ。ただ、ホラーシーンがちょっと少ない気もする、もっとビックリさせるカットを入れても良かったのではなかろうか。
邪悪なカルト宗教に追い詰められた女子大学生。
キリスト教の布教活動をする二人の女子大学生。
カルト宗教と、神学論争。。。
最後に、脱出した場面で、蝶が手に止まり、飛んでいく。
いろいろな意味に取れる
良いラストシーンだった。
てふてふ🦋
子が出来てからは特に、クリスマスパ〜リ〜もハロウィンもやるし、大晦日の除夜の鐘は心に染みるし、神社へ行けばおみくじも買うし、賽銭箱に100円入れて、有りとあらゆる事をお願いしちゃう。
食材をダメにしてしまった時は"罰当たりな事してもーた"って反省するし、困った時には"神様助けて〜"って思ったりもするが、実際どの神様から罰を喰らうのかも、どの神様を頼っているのかも自分でも不明だ。
"神様ありがとう〜!"とは言うが、上手くいけば自分の手柄♪( ´θ`)
心から"神様のおかげだあーめん"なんて思った事ないカモ(°▽°)
特定の"神様"に寄せる思いもないし、そもそも信仰心ってモノがありません。
だからこ〜ゆう宗教、神様の教えみたいな事を主軸にした作品はほぼ理解出来ていない自覚があります。
だけど、自分にはない感覚だからなのか、宗教物は結構好き。
加えて、コワオジになっちゃったヒュー様見たさに鑑賞。
予告ではホラーなのかと思っていたので、チキンだから超不安だったけど、違う意味の怖さだったので、大丈夫でした。
内容は、宗教に関してはやっぱり劇ムズで、いっぱいハテナだったけど、宗教をモノポリーに例えるくだりや、"Creep"の例えがわかりやすかった。
Radio headの"Creep"も、The Holliesの"The Air That I Breathe"をパクっていると揉めてたし、そんでもって"Creep"も、Lana Del Reyにまるパクリされてて騒ぎになっていたのを知ってたから「反復」「オリジナルはうすれる」っての、おおおお!!だった。
(語彙力ゼロ(°▽°)
そして、モルモン教については、何十年前?!に、日本でも、ある人が入信していると話題になった時にはじめてその存在を知った。
お酒やカフェインの摂取、婚外の性交渉禁止はまだ分かるが、避妊!自慰行為・ポルノグラフィなども禁止されているらしくとても驚いた事を思い出した。
私には理解出来ない厳しい戒律が定められていたと記憶していて、そこもその通り触れられていて興味深かった。
(強い信仰心を持っているように見えたバーンズが避妊インプラントを埋め込んでいたのにはびっくりね。
初めて見たけどあんな棒で避妊効果があるのですか?!)
モルモン教の宣教師である、利発なシスターバーンズ(ソフィー・サッチャー)と、控えめシスターパクストン(クロエ・イースト)
この若き2人のシスターに信仰心を揺さぶる究極の選択を迫るMr.リード(ヒュー様)がオッカネェ(°▽°)
どう見ても異端者(サイコパス)であるリードが、宗教の本質を語るのが面白い。
説得力あったもん。
上記のモノポリーや反復の例えなんか納得しちゃった。
バーンズ退場から弱々しかったパクストンの変化も見所で、脱出ゲームとしてもハラハラ出来ました。
そして行方不明者の中には、こうして監禁されている人も多いのかもなとゾッとしました。
エンディングが「Knockin' on Heaven's Door」なのも深過ぎて唸った。
(だから大好きな曲なんだって!)
初めて聞くバージョンなんだが!!
この声誰やねん?!歌ってるの誰やねん?!って前のめりでエンドロール探したよね。
黒髪シスターのソフィー・サッチャーさんだった。驚いた!
そだそだ。
1番知りたかったリードの最期。
彼があの時どんな心境だったのかが、私には理解出来ませんでした(°▽°)
パクストンの言葉に探し求めていた答えを見つけ懺悔の気持ちになったのかなぁ??
「祈る事に効果はないけど、互いを想って祈る事は美しい」
この精神こそが、宗教の根源だと思うのですがね。。
宗教って支配なんですかネェ。。
宗教も信仰心も用法、容量を守って正しく使用して欲しいですね。
異端者の家に、異端者が伝導に
これが正解、モルモン教は、プロテスタント各派からそう見られているし。
それは、作品からもわかるはず。
聖書の奇跡は、その前からの他の宗教の教典でもみられていた。
だから、聖書は、その焼き直し。
あなたがもってきたモルモン書もおなじこと。
この説明を、モノポリーを使ったところは、なかなか。
となると、神は誰だ、本当にいるのか。
究極は、誰にもわからない絶対わからない。
死語の世界とて同じこと。
だけど、神はいると信仰を持って生きることが、楽だ。
ただ、悪魔崇拝やキリスト教異端はやめようね。
宗教という心理的支配
暴力も否定も圧力もかけずに、あたかも自分で選んだ道かのように静かに引きずり込まれていく話術。
最初から異変を感じつつも、人懐っこいイケおじのオープンマインドな笑顔とブルーベリーパイの香りになんとなく流されていくウブっ子のシスター2人。
玄関も開かず、電波も届かず、どんどん追い込まれていくけど冷静さを欠かさない黒髪シスター。
モルモン教を知らなかったから、会話劇部分はちと眠くなってしまったけど、途中からいい感じに危うくなってく。
勝ち気で冷静で頭が切れる…このままいける?ヒューグラントと頭脳対決するの?!と思いきや、黒髪シスターはサクッと喉を掻き切られ、二の腕をカッターで切り開かれて中を素手で弄られ、これ血管だわ、と間違えられながら避妊棒(あれで避妊できるの?初めて知ったよ)を掻き出すヒューグラント。うわって声が出ちゃった。でも、グロい演出というより、普通のことですわ、みたいなトーン。
金髪シスターを恐怖で支配するにはちょうどいいサイコパスっぷり。
ここから、金髪シスターのターン。
黒髪シスターを失って取り乱すかと思いきや、反論と挑戦…!って心を決めて、自分の意思で戦っていく。
頼れる人がいなくなると人って強くなるよね、の典型だけど、とてもいい。この極限の状態で諦めない心の強さよ。これが信仰心ってやつなのか。
でもヒューグラントは、信仰は支配だ、と。
自分で選んだつもりで知らぬまにそれに染められて従順に従う傀儡になってしまう、というのを実証実験し続けていたのかな。すんごいサイコパス味があのニコニコから漏れ出てて最高だった。
家の中の作りがあれ?ここ1Fで地下でそこ進むとあれ?なんか中地下?みたいな建造物の設計が気になったけど、なんか斜めを多用した家なんだろうな。
最後ヒューの首に刃物ぶっ刺したのに、よく生きてあんな動けたな、というのはドーパミンのせいってことで。
黒髪シスターちゃんも最後の最後で奇跡が起きてヒューを殺して金髪シスターちゃんを助けるというまさかのラスト。
金髪シスターもお腹刺されてるのに窓から逃げ出して森の中で蝶が手に止まる、ってのも黒髪ちゃんが「よくやったね」って言いに来たってことなのかな。
刺されたショックで幻影を見ていたのだと思うけど、信じるものは救われるもんね。
宗教要素満載のサスペンス映画だそうですが・・
異端者の家(映画の記憶2025/4/27)
スリラーではあったが、作り手が前半のゲームの話で満足したと解釈したのでイマイチ。スリラーとしてのエンタメ感が足りん。もっと脚本として引いて押してのやり取りあって良いと思う。
ヒュー・グラント自体は悪くないけど怖くないという欠点があるなぁ、、、恋愛映画以外でということなら政治家、スリラーでも知的な追いかける方の刑事、ウォール街のフィクサーとかをやるのを観てみたい。
主演の片方が同じA24作品のMaXXXineにも出てるようなので次回の演技を期待。
一応作りとしてはまとまっているので映画はたまにしか観ませんという方にはちょうどいいかもしれない。ただありきたり感はあるかと。
瞬間的に出たボブ・ロスが懐かしすぎるわ。絵の描き方は斬新なんだがな。
一時期、某動画サイトで弾幕厚めで扱われてたけどw
ちなみに信仰に厚い方にはオススメしません。最後のあのキーワードはすべてにおいて理解してるから響かんかった。
(個人的評価5.5点/10点中)
ちゃんと、エンタメ
まったく予備知識なく観賞。
布教のために訪れた老人の家に閉じ込められた若いシスターの2人を描くサスペンスホラー。
警戒しつつも通された部屋で始まる、宗教論じみた問答。宗教が絡んでくると途端に話が飲み込みにくくなるのは洋画あるあるなんだけど、この問答は中身があるようでないようで。
でも部分的にはちょっと興味深かったり。
このやり取りが正直ちょっと長いので途中げんなりする感じもあるけど、私は面白い話だった。ただ結局お話の本筋とはそんなに関係なく観ることもできるので一生懸命付いていこうとしなくて大丈夫。
展開される物語も、我々観客が目を見張るような新味のあるものでは決してないし、「ん?アレは何か意味あったの?」みたいなパーツも多いんだけど、少しずつ、少しずつ、こちらの予想をずらしてくる感じが楽しかった。
モルモン教についてはちょっと知っておくともっと良かったかな。
おそらく、メインの3人がすごく上手いからなんだと思う。
ラブコメで有名な名優ヒュー・グラントは言うに及ばず、女性2人、個人的には黒髪のバーンズがすごく良かったな。
私はエンタメとして元を取れるくらいに楽しめた。
ヒュー・グラントの独壇場
結構面白かったです。
ただ自分の場合は、幼い頃から親に逆らって、キリスト教プロテスタント、ホーリネス系の単立教会に通い、小六で洗礼を受け、高3の頃には神学校を志望し、その後神秘主義に惹かれたり、性的な誘惑に晒される等して信仰を捨てた経緯があるので、やはりキリスト教もしくは神学的関心があまりない人には、前半はかなり厄介でいささか説教臭い内容かなと思う。
熱心なモルモン教徒の女の子二人(ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト)は、ゴシックホラーの典型のような屋敷を訪れると、ヒュー・グラント演じる、一見リベラルな穏やかそうな男リードに迎えられる。ところが居るはずの妻は一向に姿を現さず、雨が激しい吹雪に変わる中、次第に彼の饒舌な宗教論に翻弄され、閉じ込められたことに気付く…という物語。
モルモン教自体、キリスト教異端なわけだが、リードという男は輪をかけて面倒というか狂気の入った無神論者だ。監督のスコット・ベック&ブライアン・ウッズのインタビューをみると、彼のキャラクターのために参考にした人物の一人が、リチャード・ドーキンスと言うのは、一般的に宗教心が薄く、無神論に無警戒な日本人にはちょっと驚きではないだろうか?
冒頭で少し書いたが、多少の信仰心があった自分にも、この男のキャラクターにはいろいろ自身を振り返るところもあり、訪れたモルモン教徒の一人が「現代は信仰心が一般的に薄い」といったリードの話に首肯してしまう場面には、思わずなるほどと考えざるを得ない気分にさせられた。
とにかく饒舌なリードの話に誘われ、未熟なモルモン教徒の二人は彼の導くままに罠にハマるのだが、面白いのは前半二人のリーダー的に振る舞っていたソフィー・サッチャー演じるシスター・バーンズが、物語後半の展開点で意外な策略に遭い、前半頼りなく見えていたシスター・パクストン(クロエ・イースト)の存在感が急に高まることだ。
この展開には賛否が割れる気がするが、全体にホラーというより神学論争の体を成す本作において、アクション的見せ場を創るには悪くない選択の気はした。
屁理屈が多く、ともすれば冗長なリードの独壇場になってしまいがちな本作では、美しい画作りと、理知的な構成美(ヒッチコックタッチ?)が物語を救い、映画的感興を呼び起こしてくれる。途中リードの話にあった「胡蝶の夢」の喩えを聞いたときは、なんとはなしに「潜水服は蝶の夢を見る」という映画も思い出してしまった。
意思決定を相手に委ね、それでも支配するーー恐怖の前半が秀逸
何となく観に来たが、オープニングクレジットでA24制作と知り、期待が高まった。予告編では無邪気な若い女性が監禁されるホラー映画であることしかわからなかったけれど、実際に観ると、そうでありながら、そうではなかった。
ホラー映画らしい怖さの演出は控えめ。しかし、暴力性を排除し、100%相手の判断を尊重しつつ、いつのまにか相手の主体性を乗っ取る知性的な対話の怖さが際立つ。
自我の未熟な人物に、宗教や思想が入り込んでしまう怖さでもあるし、なんか現代の企業組織でもコーチングや1on1とも相似形でもあると感じた。なんかおかしいなと思いつつ、自分の考えを問われて答えているうちに何か最初思ってたのと違ったところに立ってしまっている、そんな違和感を感じたことがある人なら共感して怖がれる映画ではないか。
主人公の二人は、キリスト教系の宗教が多様に存在するアメリカで、ある宗教団体の勧誘活動をしている。ノルマがあるのかはわからないが、勧誘活動に一生懸命取り組むことが良きことであると内在化されている。
その二人が訪れたのは、一神教について深く研究し、自ら宗教論を組み立てた中年男性の家だった。
村上春樹の「1Q84」ではNHKの集金人の姿で、現代の企業活動の潜在的暴力性が描かれていたけれど、この映画ではそうした暴力性に無自覚な勧誘者が、、逆に思想戦に巻き込まれて報復される流れになっていく。
ヒューグラント演じる最初は凡庸で気のいい中年男性に見える人物が、宗教が持つ共通性や矛盾を、論理的に、かつ冷静に語りながら、二人を精神的に追い込んでいく。
しかし、その語り口は終始暴力的ではなく、オープンクエスチョンを使い、相手の自由意思を尊重しながら進められる。それでも会話が進むごとに、明確な力関係が浮かび上がってくる。知識量や意識レベルの圧倒的な差、そして自己著述的な思考の有無が、じわじわと二人を追い詰めていく。
この前半が圧倒的に面白かった。だが、日本では宗教に関心を持つ人が少ないこともあり、この面白さに気づかない観客も多いかもしれない。
後半では、この前半の構図が具体的なアクションとなって展開される。ホラー映画としての展開ではあるが、むしろ前半の精神的な支配構造の方が、個人的には強く印象に残った。
ヒュー・グラント演じる男の姿は、自分自身を見るようで、嫌悪感も感じてしまった。彼は終始フランクに、オープンに、相手を尊重して会話を進める。しかし、これまで積み上げた経験と考察の量が違うため、たとえ対等に話そうとしても、力関係は自然と浮かび上がってしまう。これは何ハラスメントと言えばいいのだろうか。
いまの自分も、会社でかなり遠慮しながら意見を述べ、フィードバックを一つの提案として差し出しているが、それでも支配的な構造を生み出してしまうことを恐れ、距離を取ろうとすることがある。しかも今の若者は自己成長に貪欲であり、フィードバックをしないこともまたハラスメントになり得る。どうしたらいいのか、本当に難しい。
話がそれたけれど、この作品は知的な暴力とリアルな暴力、両方をバランスよく描き、A24ならではの多重的な引用を織り交ぜた、非常に知的で面白いホラー映画だった。単なるジャンル映画として消費するには、あまりにも惜しい一作だと思う。
何やこれ。
全280件中、161~180件目を表示