「異端者はどっち?」異端者の家 すーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
異端者はどっち?
予告編からは、布教に行った先がたまたまサイコパス男だった、くらいのお話かと思っていましたが、もっとヘビーなやつでした。
あらゆる宗教に疑問を抱く男、Mr.リード(ヒュー・グラント)が、自分が信じる「唯一神」を証明するため、他宗教を布教してくる輩を論破してやろうと待ち構えており、モルモン教の布教に訪れた若いシスター2人に宗教観の揺さぶりをこれでもかとかけていきます。
否が応でも、観客も自分にとって「宗教」とは何か?という問題と向き合わさせられる羽目に。
※モルモン教はキリスト教を源流とする新興宗教で、立ち位置的には日本でいうところの統一○会、エ○バの証人、みたいなものですね(教義は全く違いますが)。劇中に出てくる「魔法の下着」はモルモン教徒が身につける特殊な下着です。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は劇中では「ビッグ3」と揶揄されていますが、どれも同じ「神」(ヤハウェ、父なる神、アッラーなど、それぞれ呼び名は違いますが)を崇める一神教です。同じ神様を祀るなら仲良くすればいいのに、互いに「他宗教の神は神にあらず」と異教徒を敵視しているのが傲慢だなーと常々思っていました。
Mr.リードのやり方は過激ですが、自分の意に沿わない出来事に対して「神様の与えた試練」「全ては神の御心のまま」などとこじつけのようなことを言って思考停止しているように見える人々をネチネチいたぶりたくなる気持ちも…わかる。
(私は中高6年間たまたまミッションスクールに通っていましたが、キリスト教について知れば知るほど偽善的な部分が目につき、絶対に信者にはならん!と固く誓ったひねくれ者です)
ちなみに、キリスト教の「神」とは「三位一体」の「父なる神、イエス・キリスト、精霊」があわさったものです。
イエス・キリストは、人間の原罪を贖わせるために「父なる神」が地上につかわせた「神の独り子」で、奇跡を起こし、十字架にかけられて死に、40日目に復活しました。イエス・キリストの復活を信じること=神の御業信じること、ひいては「父なる神」を信じることに他ならぬことで、この映画でもリード氏が「復活」にこだわっていたのはそのあたりの感覚が染み付いているのかなと。
キリスト教圏の人間にとって、復活の奇跡を信じることは信仰の証明につながるんでしょうね。
終盤になって判明するリード氏の信じる唯一神に私は妙に納得してしまいました。
宗教って言ってしまえばそのためにあるものでは、と前々から思っていたので。
(その文脈でいえば、仏教は宗教ではなく哲学ですね)
異端者なのは彼とシスターたちのどちらなのか?という目線で見ておりましたが、原題は「HERETIC」(異端者)、かつ、ラストに出てくるタイトルがぼやけていて見えない…ということは?
…と、色々と考えさせられる映画でした。
映画的な側面に目を留めると、ヒュー・グラントの巧みな話術を交えた悪魔的な演技がすばらしく、恐怖演出も相まって本当に怖かったです。
モノポリーの話の最中に、ボブ・ロス版のモノポリーが出てきて、くすっと笑ってしまいました。
「ボブの絵画教室」、懐かしすぎる。
あんなのあるんですね〜。
他のミームに関してはわからない物もあり、かつとても情報量の多い映画で一度では理解できず。
これから、ネタバレサイトやここのレビューで勉強させていただきます。
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