「信仰者から観る「Heretic(異端者)」」異端者の家 とうきさんの映画レビュー(感想・評価)
信仰者から観る「Heretic(異端者)」
予告編からは、何か脱出ゲームのような物語を想像していましたが、実際には宗教色が非常に強く、予想とは大きく異なっていたが、タイトルである「異端者」のテーマに非常に的を射ており、エンタメとしても宗教の観点からも興味深かったです。物語は大きく分けて、前半の会話中心のパートと、後半のホラー気味のミステリーパートという二部構成になっていて、それぞれ異なる面白さがありました。
人によっては前半の会話パートが退屈に感じるかもしれませんが、信仰を持つ者として、普段から似たような感じで他人と語り合ったり議論したりしているので、3人の会話は非常に面白く感じました。途中で男性は「これは不快に思わせるかも」「怖い話になるかも」と、世の中の宗教に対して挑戦的な姿勢が出てきますが、信仰心が強い者にとっては、日頃から学び続けているので、そうした問いに対し説明する機会を与えられるから、むしろ歓迎すべきだと感じます。正直、議論をしたいだけでしたら、扉が開く朝まで全然付き合いますよ(笑)。もちろん、あんな不気味な状況でなければ、ですが。
後半からは、本当の恐怖が始まります。途中まではスピリチュアルな物語なのか、それとも何か仕掛けがあるのか分からないように物語が発展し、3人の対峙を通して少しずつ真相が明らかになり、ややグロテスクな描写もありますが、巧妙な洗脳の過程と心理戦は非常に興味深く感じました。最終的に全員を救うことはできませんでしたが、1人だけでも救えたことにより、監禁されていた女性たちの救いに繋がったと、完全にバッドエンドではなかったのが救いです。
個人的な考察になりますが、異端者として描かれた男性は、「人間の傲慢」の象徴だと思います。彼は非常に頭の切れる人物であり、同じ手法で人を洗脳するたびに「自分こそが正しい」と確信し、それを繰り返すことで自分の欲望を満たしていました。ただ、彼が狙ったのは信仰心がまだ確立されていない、そして布教経験が浅い若い女性ばかり。本当は、自分と同等かそれ以上の相手に挑む勇気は持ち合わせていないのに、弱い者に勝つことで「自分は他人より優れている」と思い込む――まさにそれこそが「傲慢」であり、タイトルの『Heretic(異端者)』が示す意味だと感じました。実際、こうした極端な手段を使うわけではないにせよ、宗教者にわざと難解な質問を投げかけて、うまく答えられなかったことを理由に、自分の正しさを証明しようとする傲慢な“異端者”は、世の中に少なからず存在しています。
本作は最終的にスピリチュアル系の話ではありませんが、確かに「奇跡」が起きたと感じさせる展開でした。しかし、その奇跡を過剰に神聖化せず、控えめに描いている点は、個人的には好感を持てるポイントです。
PS:祈りには効果があります。しかし、それが人間の欲望を満たすためのものであれば、効果はありません。だからこそ、作中に登場する「祈りの実験」には本質的な意味はないです。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。