オークション 盗まれたエゴン・シーレのレビュー・感想・評価
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トレビアンとは…
30年ぶりに世に出たエゴン・シーレの「ひまわり」を巡るオークション関係者のドラマを描いたフランス映画。
鑑賞前は、事前情報を取得してなかったのもあり、エゴン・シーレの「ひまわり」を巡る歴史ミステリーなのか美術オークションでの騙し騙されのフレンチな駆け引きゲームなのか、とそれなりの心の準備をしていたが、私とは笑いのセンスがマッチしないコメディ映画だったようだ。
そもそも絵の所有者の青年を「夜間工場労働者」みたいな呼び名で連呼したり、気ままな助手の父娘の訳のわからない話のくだり、海原雄山みたいなドイツの絵画界の大物のチョイ登場、夜間工場労働者の若者は彼女もいないが、お風呂に浸かるのが大好きなハイソサエティの主人公の元嫁さんは「複雑な関係」のパートナーとチュッチュしたり、エゴン・シーレの子孫一族はご先祖様の名画を売り飛ばして祝勝会を開いているし、エゴン・シーレとは関係のない複雑な現代フランス人社会を見せつけられた感が強い。
私自身がフランス映画に不慣れなせいか、このあたりの物語のふくらみが理解できず、鑑賞後は消化不良な印象を持った。
果たして、この映画を天国のエゴン・シーレはどう見ているだろうか?
フランス人と付き合うのは、大変だと思い知らされる映画。
エゴン・シーレは今私が一番好きな画家だ。先年、東京で大規模な回顧展が開催された時、名古屋から駆けつけたほどだ。
観てみたら、エゴン・シーレの絵よりも、発見された絵にまつわる人間模様を描く作品だった。フランス人は個人主義の国だと聞いている。絵を発見した青年の家族を除くと一癖も二癖もある人間ばかりで、私などとても付き合えない。まぁ、面白くするため創作しているだろうけれど。絵の価値なんて関係ない。絵の付く値段(金欲)に動かされる人間を描く作品だった。これはこれで評価出来る。多かれ少なかれ、世界共通だからだ。オークションの裏側を見れるのも勉強になった。
ナチスが頽廃芸術として、強奪したエゴン・シーレを評価しなかったのも、私には興味をそそられた。
私は先ずクリムトに惹かれたが、弟子筋に当たるシーレの絵を観て驚いた。師匠を超えていると直感したからだ。50年前か。日本で人気を呼ぶようになったのは、ここ30年くらいだと思う。エゴン・シーレの伝記映画も作られたが、観てみたら今一つだった。
ナチスによる大罪
実話ではなかった…
Collector
オークションでの模様を90分尺で描く感じの作品でオシャレなフランス映画でした。
実話ベースというのもあって突飛な展開はなく、淡々と人間ドラマを見せる感じの作品で観る前になんとなく思いましたが肌には合わなかったです。
予告編くらいしか情報を入れてなかったのもあってオークションの中で起こるミステリーなのかなと思ったら絵画探しと意地汚い人間模様がメインなのもなんだかなーとなりました。
全体的に登場人物は特別多くないんですが、関係性が複雑かつ入り乱れまくっているのもあってややこしさに拍車をかけているようでした。
登場人物も性格がイヤ〜なやつが多く陰湿なドラマがメインなのもあってうだつが上がらなかったです。
普段見るオークションの様子から一歩踏み込んだ事情だったりは良かったんですが、流石にそれで見せ場を作るのは難しい、というか知らないものの値段を札を上げて金額が釣り上がる様子で楽しむってのに無理がありました。
ユダヤやナチスのエピソードも入ってくるんですが、そうなのか…というくらいの納得感だったのもあってのめり込めずでした。
終わり方もどうもあっさりしていて消化不良でした。
こればっかりは相性なんですが、何かフランス映画を好きになるようなきっかけがあればいいなーと思った次第です。
鑑賞日 1/12
鑑賞時間 17:10〜18:45
座席 D-13
複雑な人間関係。きちんと理解できたかどうかはわからないけど。
原題は「Le tableau vole」直訳で盗まれた絵。盗まれたエゴン・シーレを発見するのはキュレーターでもコレクターでもなく競売人であるところがこの映画のオリジナリティであるわけで邦題には納得する。
でも、発見された絵が、元々の持ち主(ユダヤ人のコレクター)の遺族に返還される、そして事情も絵の素性も知らないフランスの労働者の青年にも一定の所有権を与える、っていうところは理解できるものの、なぜ遺族がこれをいきなりオークションにかけるのかっていうのがよく分からない。コレクターの血筋にかかわらずコレクションを持つことに関心がなく全部、売っぱらってしまう主義なのか?まあ確かにエゴン・シーレの作品がアメリカにあるって話はあまり聞かない、ほとんどがオーストリアに戻っているらしいから。(実際の「ひまわり」もウィーンの美術館にあるらしい)分からないといえば、主役の一人でオークション会社のインターンでアンドレのアシスタントであるところのオロールさん。彼女の父親がどうしたのこうしたのというところもよく分からない。彼女は彼女なりに後半、オークションに貢献するものの、私生活の問題は本筋とは絡み合わない。なぜそのようなわがままがインターンの身で通用するのか、言ったもの勝ちの世界なのか。
最後まで謎でした。でも最後はアンドレさんの目が覚めるようなオークション仕切りが炸裂し、とんでもない金額がついてめでたしめでたしで終わるのでした。90分の作品。尺が丁度よいです。
憧れのインディ・ジョーンズ
等身大に生きることの幸せ
フランス映画好きにはたまらない
錯綜する登場人物と深い余韻、名作!
休日だが、1回目の上映のせいか文化村ル・シネマは空いていた。あんまり評判ではないのかな、と思いつつ、見終わった後の余韻は大きかった。今もまだまだ、なかなか消化できない感じである。
本作は事実を元にして、登場人物と物語は創作だという。その登場人物たちが錯綜して、だれが主人公なのか、自分を託して見る人物が定まらない。そこがこの映画の消化を難しくしている。
が、それこそが鑑賞後の考えさせられる要素の多さでもある。それぞれの人物が、この映画の軸となる事実に翻弄されつつ、自分の道を見つけていく、その様が魅力的だ。
軸となる事実はタイトルで示されている通りだ。エゴンシーレの絵が盗まれて、それが発見されオークションにかけられた。その歴史的事実も映画の中で丁寧に登場人物たちによって説明される。
ナチスの強奪した絵画だったのだ。しかし、エゴンシーレの絵は価値のないものとされ、無名のナチス関係者の手に渡り、その価値に無関心な労働者階級の家庭に引き継がれていた。
その名画の歴史的発見からドラマは始まる。現代においては、その名画の金銭的価値は途方もないものだ。その周囲に欲望と駆け引きのドラマが展開される。サスペンスたっぷりの展開に引き込まれる。
そして、たくさんの登場人物たちの個人的な想いが交錯し、その金銭的価値も膨れ上がっていく。その結果は…。
ということだが、ネタバレを避けつつ、一人の人物に惹きつけられた。
宝くじにあたり、途方もないお金を手に入れた人が必ずしもその後幸福になれないというのは、知られていることだが、ある人物はその富に惑わされない素晴らしい智慧を持っていた。意外な人物だ。
思わぬ幸運にも惑わされず、平穏に生きる億万長者が身につけている人物たちの共通点を読んだことがあるが、その人物は、そうした億万長者たちにつながる智慧を持っていた。
そのほかの人物たちもこの事件からなにかしらの人生の知恵を手に入れていく。
ハッピーな気持ちにさせてくれ、なおかつ自分の人生の選択に多くの示唆をくれる映画だった。映画館の混み具合からあまりヒットしているようではないが、ぜひオススメしたい。
整理しきれないほど多くの示唆に考えさせられると同時に、心温まる素晴らしい映画でした。
アイヒマン、またお前か
序盤の数分からもう面白い。
オロールは誰に何言ったか覚えてるのか?そもそもオロールが本名なのかすら疑わしい。
長く行方不明だった絵画が見つかるところから、金持ち同士の駆け引きが繰り広げられる。額が額だけに高く売りたい、おこぼれが欲しい周囲をよそに現所有者のマルタン親子は無欲で純朴。それが救いでもありイライラの種でもあり。
ピュアなマルタンと嘘つきオロールが展開を面白くさせる。
自分の人生にはない金額が飛び交うオークションを見守るマルタンの表情が秀逸。
最後までアンタは良い子だよと言わざるを得ない。
上映時間もちょうどいい。
オークションを取り巻く、人間模様が興味深い!
登場人物がそれぞれに魅力的。上司と部下、友人同士の諍い、それらも、あるあるな状況が沢山出てくるのだが(日本より直接的で、そんなこと言っちゃうの?という場面も多々あるのだが)、
お互いに折り合いをつけつつ、許し、前に進んでいく姿が良かった。
オークションという、全く馴染みのない、想像もつかない世界の事がよく分かったのも良かった。鑑賞後のトークショーで、オークション会社の代表の方が、ほぼ忠実に描かれていると仰っていたので、きっとそうなのだろう。浮世絵を、後刷りだと思って、値段を安くつけて出品し、実際にはみるみる上がって、君もまだまだだな、と言われたという話、とても印象的だった。
主人公のアンドレも、オークションが成功に終り、最後は会長職までオファーされるまでになるが、田舎から出てきて、若い頃は様々な経験を経たんだろうなと想像した。
内容とは関係ないが、アンドレの部屋、部下の女性の部屋、あとは、青年マルタンの家が出てくるが、それぞれの部屋の内装に注目していたら、大変興味深かった。
観た後、前向きな気持ちになれ、個人的にはとても好きな映画。
周りにではなく、仕事に誠実な人
絵画という価値
まず言う、言う、言う!そして冷静と理性と観察
脳と心がビリビリ痺れる映画だった。登場人物達の頭の回転の早さ、自分が何を言うかが先決、言葉少なくピリッとしたスピード感溢れる台詞に心臓が掴まれた。相手に悪く思われたくないとか空気を読むという概念がそもそもない!但し: 大事な人には後で謝る。頭を冷やしてから。その謝罪に耳を傾けてもらえる。そのやりとりが何回か繰り返され相手を観察し自分を客観視する、の繰り返しを経て(彼らの人間観察眼は半端なく凄い)初めて人間関係が構築される。フランス人は人間が好きなんだと発見した思い。イタリア人は人間好きだけど家族&親戚が優先で少し重い。日本人はどうだろう?日本人はあんまり人間好きではないような気がする。
フランス人のお洒落は男女ともにイタリアと異なる。フランスは色づかいが控えめでナチュラルでラフなぞんざいさが同居して決め過ぎない。ヘアスタイルとメイクもナチュラル。車や時計やオーダーメイドのスーツは男の復讐とガッツの源らしい。
ストーリー。ナチによるユダヤ人富豪からの絵画没収と退廃芸術の歴史と儲けたい詐欺が絡む。「黄金のアデーレ」のようにまたしてもオーストリア。オーストリアはドイツよりずっとナチ。現在のヨーロッパで極右政党政権はオーストリアから始まる。
絵画。やせ細って骨が浮かび上がるシーレの絵からは裸体の叫びが聞こえる。何も知らない子どもの目は大きく見開いている。この映画では人間の絵でなくてほっとした。ひまわりだ。ゴッホ、クリムトも描いたひまわり。シーレのひまわりはゴッホともクリムトとも異なる。好きな絵、見たい絵を求めて美術館を巡り巡り、一つの絵の前に腰を下ろし休憩兼ねてずーっと見ていたのをついこのあいだのように思い出した。
研修生オロール(この子、大好き)のパパの言葉:「我慢、妥協、下方修正。それが人生だよ」。目がきれいで純粋なマルタンの誠実な決断と生き方がこの映画を美しくおさめた。
おまけ
どうしても見たくて翌日の今日また見に行った。昨日よりずっとたくさん笑えた。あっさりして手練れの撮影と編集。演出と演技が何とも言えず素晴らしい。登場人物へのフォーカスをあちこちに移動させるのが見事で過剰な説明もなく全部見せたりもしない。フランス映画、Enchante' ! (2025.01.11.)
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