美晴に傘をのレビュー・感想・評価
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テーマは良いのにな⋯
言葉の大切さを実感。
良い映画
渋谷さんの作品は小劇場では見たことがあったけど、映画では初めて観た。
いろいろなシーンの連続性が、舞台や短編映画の人のリズムだなという印象。
長編で見せたいシーンを見せるというのとは、ちょっと違う。
他の人のレビュー見ていて感じたのは、確かに美味しい食事のシーンはあっても良かったかなと思った。
個人的には桐生さんのキャラクターがとても好きだった。逆に舞台に輸入したら、もっと見やすくなるかもしれない。
オノマトペによって紡がれる美しい言葉の世界
息子との確執から抜け出せず素直になりたいのになれない父、美晴を守ることに精いっぱいで自分自身を縛りつけてしまっている母、姉の世話をすることで周りに気を使ってばかりのヤングケアラーになっている妹、不快な音の世界から逃げ出しているがそこにもどかしさをも感じている美晴。
登場人物たちは一様に何かに縛られているが決してそのままでいいとは思っていない、そんなアンビバレントな感情は、美晴のイヤーパフによって音が遮られる世界と町内の騒々しい人々の生活の対比にも象徴されているように思える。そして、騒音の雨から身を守る傘を美晴が手放して一つ一つの音に耳を傾け始めると、ようやく周りの人々も自分に素直になり始める。
父親の三雄が残した絵本のように、美晴の心情は彼女が紡ぎ出すオノマトペで表現されていく。そこに俳句や書道といった日本の言語表現がちりばめられることで「ことばの世界」が構成されていく。
希薄な人間関係の中でことばの重みが薄れ、SNSにはことばの暴力があふれている現代において、人の気持ちを前向きに動かしていく「ことばの力」を改めて信じさせてくれ、気持ちを温かくしてくれる美しい作品だ。上映館数が増えてより多くの人に届いて欲しい。
事前情報無しで観て欲しい!
ふわふわ・がやがや・もやもや
良いところと残念なところと半々ぐらい。
良い
・映像が美しい
・基本的に悪人がいない人間関係
・優しさを感じられる雰囲気
・傷付きやすい美晴を守る象徴としての傘の描き方
・美晴の想像上の世界
・主要な3人の独白をカットバックでうまく組み合わせた終盤
・3人が物語の中で一歩踏み出そうとするところ
残念
・登場人物の多くが自分のことしか考えていない、身勝手
・現実感が乏しい
それって真っ先に伝えておくことじゃない?という話をしないで
いきなり○○したら相手が迷惑でしょう、という謎の行動。
あの場面で○○するのは非常識にも程があるけれど、そうして欲しいと
言った人がいるわけで、要求する方もどうかしている。
相手への気遣いより自分の気持ちや都合を最優先する人。
北海道の小さな漁村という設定だが主人公が漁師っぽくないし
他のみんなも含め生活感がない。東京から来た人だけでなく地元民が
皆標準語で話すことに違和感。漁村という設定がただの美しいロケ地で
終わっている感じ。中村雅俊が地元のおっちゃんにしか見えなかった
サンセット・サンライズを先に観てしまったので尚更そう感じる。
地元の美味いものを食べる飯テロ場面なし。
言葉については、イタリアが舞台の話なのに全員英語で会話している
映画もあるから絶対ダメとは言えないが。
登場人物の行動や発する言葉が、物語の構成上必要だからそうしている
感じ。その世界で生きている人というより、役を演じている役者さんを
見ている感覚だった。各自が物語を動かすための道具のようだった。
飲み仲間との場面が、賑やかなだけでちっとも面白くなかった。
居酒屋が妙に照明が明るくて雰囲気が足りなかった。
ちょっと書きすぎた。このくらいにしておこう。
書道の先生とワイン職人がなかなか良い人で、その人の言葉には
人の心を動かす力があった。それによって主人公たちが変わる
きっかけができたのは良かった。
観終わった印象は決して悪くない。
安直な障がい者物語
良かった。
美晴の言葉。言葉の大切さ。言葉の持つ力。 言葉にしない人、余計な言葉の人。 言葉がリズムを繋ぎ、青い空に父の傘が羽ばたく。
言葉の大切さを感じる映画。
話す言葉は少ないがとてもユニークで温かい表現をする美晴。
詩人だった父親からの贈り物に違いない。
観てから時間を置くと色々考えさせられる。
言葉にしないと伝わらない。
けれど、説明しない人たち。
美晴の母は、義父や町の周囲の人々に対して、この子は、こういう症状だからなど一切説明しない。
恐らく何十年間、最初は説明していたけれど、あの性格だから、悪いことは何もないのになぜ説明して頭下げないといけないのかと思うようになって、それからは無視するようになったのかもしれない。
普通なら必ず入れるだろうシーン、こんな場面なのにヘッドホンするなと注意されてしまうとか、他人のお墓の花を勝手し差し替えて母がいちいちやめさせるとかも一切ない。
葬式の派手なワンピースも、ふつうなら皆の前で思い出を語って泣かせる場面がありそうだが、一切説明しない。
わかってもらおうと思っていない。
その性格もまた、義父との軋轢を生んでいる。
義父も、美晴の父も、言葉に出して話さない。
少ない言葉から誤解を生んで、すれ違う。
その反面、いらない言葉で、うるさい人々も多い。
観客がそう感じるのは、美晴が日常感じているうるささに通じるかもしれない。
美晴にあてられる言葉の暴力もある。
美晴の祖父の友人は、昔のHな表現の俳句で観客を引かせる。
居酒屋出禁の常連は、美人女性だと臆面もなく露骨に言い寄る。
昔は普通だったかもしれないけれど、今となっては聞くに堪えない言葉や態度になった。
皆、本人に悪気はないけれど、そうなら許されるのか。
過剰な対応で家にまで押しかけてくる書道の先生もうるさい。
けれど、そういううるさいおせっかいな人によって、無理やり心を開かせられることもある。
そうして物語の終盤では、それぞれが皆、現状から一歩踏み出すところが前向きでいい。
春の父や母が交互に話し、やがて言葉がリズムを繋ぐシーンが心地良い。
活き活きとした美晴を演じた日高麻鈴、姉に対してどこまでも優しい妹・宮本凛音、二度目の映画主演という升毅、母親の強さと弱さ表現した田中美里、父親の優しさを表した和田聰宏ら俳優陣が素晴らしかった。
印象に残る「傘」で表現したシーンが美しい。
美晴を守る父遺した傘。
カラフルな「傘」が美しい。
澄み切った青い空が美しい。
日髙さん宮本さん◎ ×は展開をになう掲載俳句がひどすぎる
まず、美晴役の日髙麻鈴さん、妹、凛役の宮本凛音さん、お二人の演技は素晴らしかったです。
特に日髙さんは発達障害を持つ女性のちょっと風変わりな感じを、実に上手に演じておられました。最初は「やりすぎじゃないか」とも思ったのですが、演技が一面的ではなく、そのエキセントリックな表現の中から、その時々の喜怒哀楽を見事に表現されていて舌を巻きました。そして時々に見せてくれる日髙さんの美しさに目を見張りました。
宮本さんもぶっきら棒でありながらも素直な演技が、周りの俳優さんの個性を引き立てる良い演技で、わかっていて役割に徹していた感じがして感心しました。
気になった部分は、升さん役の祖父は、そんなに狷介じゃないし悪い人でもなかったですよ。友人も多いし。ただちょっと自分の考えにこだわりすぎてる頑固な爺さんってだけです。世の中そんな人一杯います。だから熱くなりすぎることも、冷たくなることもなく、全体的にぬるいです。でも日本人はそういうホームドラマとか好きですので、大した問題ではありません。
ひどいのは、祖父が心を開くきっかけとなる自作の俳句で、これは俳句雑誌にのる優秀なものという設定です。
「たらればや冷酒(さけ)で飲み込むあの言葉」
これ俳句ではないです。
季語は? なんで「たられば」に「や」をつけるの? 「や」がついたら俳句になるとおもってるの? あの言葉って、安っぽい演歌の歌詞ですよ。下手すぎるんです。
※冷酒が、夏の季語、とおっしゃる方もおられましたが、その場合「ひや」と読まなければ季語になりません。芭蕉以前からのならわしです。
日髙さんとか宮本さんすごく細かなシーンまで考えて演技してたと思うんですが、この俳句のぞろっぺえこととんでもないです。だって言葉がテーマの映画なんでしょ。
言葉にすることで思いを伝えて、再生するんでしょ。それが「たらればや」だもん。伏線までいれてアピールしてるのがこれなもんで、映画見ながら頭が痛くなるくらい「これで全部だめになった」と思いました。
シナリオを書いた方が、自分で書いた「詩」や「俳句」を素晴らしいって自分で判断して良い作品ということにしちゃったの?
脇の俳優さんたちも演技が一面的であったとしても、それは一つの手法かもしれないし、一生懸命なのは伝わるんですよ。でもあの詩と俳句で柱がゆがんでしまった感じです。それでもう天井が落ちてきた。
採点は、若手二人の演技☆5、シナリオ☆1 、他☆3でその合計です。
しっとり、ほんわか、すっきり、じんわり
上映館数も少ないし、監督、俳優陣もすんごくメジャーな方々(何をもってメジャーとするかのラインはあるかと思いますが)なので、独りよがりになりがちなヤツか…と思いましたがあれ?思ったより垢抜けている(いい意味で)?
メインテーマである、伝えられなかった(伝えそびれた)想いには号泣と共感しかなく(観客側の、人生経験にもよるかと思いますが)でも堅苦し過ぎず、笑いもちょいちょい挟み、バランスがよい。
主人公にしても、ただ頑固で無口と言うだけでないキャラ設定。ストーリーをドラマチックにするために誇張されたやたら意地悪なだけの人、伏線を回収するためだけに現れたスーパーいい人もなく、それぞれがあ、こう言う人いるよねー、って無理がない。(酒場のシーンとか、下品過ぎ…と思いましたが実際地元の集まりってあんな感じなんだろうなと思わせる盛り上がり。)
例外的に書道の先生はやたらウザいオバさんで、笑いを取るためのキャラとしては押し付けがまし過ぎる、と思いきや、信念持って書道家を貫いてるからこその発言なんだとわかる、背筋がぴりっと伸びる気がする独白シーン。あそこ一番好きかも😆
自分にもあった、あの時ああ言っていれば…と言う想いを昇華させてもらったような気になった映画でした。
業界通の友人に語ったら、封切り以降…2/6まで?に観た人数よっては上映館数増えるかもよ、とのこと。あの人に観てもらいたい、あの都市で上映して欲しい…との想いが届いて欲しいなぁ。もし見るべきか迷っている人がいたら背中押してあげたい。
残念なこと
自閉症の娘を守るための様々な種類の傘を生前に描いた父親の絵本は納得だけれど、母親は、終盤に過保護な態度を取り、舅や下の娘から窘められる。それだけ自閉症の娘を守りたいなら、無知な舅に対して序盤から丁寧な説明をして理解を求めるべきだったろうに、あまりにも一方的な姿勢だったのが残念。揺れ動く舅の姿勢の方が好感がもてた。
三回泣き スリープロットストーリー
リアルな言葉がBGM
「北海道で暮らす漁師」が主人公の一人ということで、郷愁に誘われて観に行きました。
ウニ漁のシーンは、海辺の町出身の私には懐かしくて~それだけで見に来て良かったと思ったり。
夏の穏やかな北の日本海は、心によせてはかえす、さざ波のよう。
あんなベタ凪の日は少ないと思うけれども。
映画は心に傷を負った人間の再生ストーリー、と一括りにするのが憚られる濃い目の内容だったかな。
映画の中で口ずさまれる詩が心に響いて泣けてきました。
海辺の町出身の自分にハマったというか、リアルさに感心したというか、伝えきれなかった思いが詩の中に存在していたかな。
ポエトリーなシーンもあり、それも自然な導入で無理が無かったかな。
もう少しスッキリと整理されたらお洒落に仕上がったかもしれないけど、それでは薄っぺらくなるだろうし。
一寸泥臭い感じが漁師町に似合っているのかもしれません!?
佳作良作
ワクワクうきうきちょちょいのどん。一歩進む勇気ということかな。
目を皿のようにして画面を眺めていたのだが、舞台となる土地が特定できず。エンドクレジットを観てようやく北海道余市でロケされていたことがわかる。なるほどワイナリーがあるわけだ。お盆時期でもそれほど暑そうでないことも了解。
さて本作は冒頭1時間近くは我慢しなければならない。漁師の元に四十九日を機として亡くなった息子の妻が子ども二人を連れてやってくる。息子は昔、父親と仲違いして家を出ている。漁師は息子の妻子に会ったことがない。更に長女美晴は自閉症と聴覚過敏症の障害がある。ところが母子は何の前触れも説明もなくいきなりやってきて泊まり込む。漁師は戸惑うばかりだ。さらに母子はいきなりテーブルや椅子の脚にテニスボールをくくりつける。これは美晴の聴覚過敏への対策。そして四十九日法要に透子は場違いなワンピースを来て参列する。これは亡くなった光雄が買ってやった服で、それを着て会いに来てくれと言い残したから。
おいおい、言葉で説明すれば済むところじゃないか、と思うんだけど、そうしないから何かエイリアン的にこの母子が見えてあまりシンパシーを持てない。
さらに、俳句をひねる親父や漁港、居酒屋の仲間たちがやたらと喧しく(吉本新喜劇風とのレビューもあったがそんなにいいもんじゃない。ノイジーなだけ。特に玉岡役の徳岡っていう役者が悪目立ちすぎ)どうしても映画には入り込めない。
状況が変わるのは、後半、ワイナリーと桐生さんが登場してから。ここに至って美晴が変わり始めて彼女なりに一本踏み出そうとする。それぞれがそれぞれに対し、新たな働きかけや距離の取り方を模索し始める、つまり皆が一歩進もうとする姿が映し出され映画としては後味は良い感触で終わる。ただ、どうも最後まで透子さんにはエンパシーを持つことができないんですね。なんか違うんじゃないかと思ってしまう。次女の凛がとても可哀想な気がするんですね。最後の部分も蚊帳の外。取ってつけたような母親のフォローはあるけどね。とてもいい子なのに。グレちゃうよ。
なーんか嫌なシーンが続いてしまった
「傘」に込められた幾重もの意味
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