「観客は試される」満ち足りた家族 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
観客は試される
さあ、自分がこんな事態に陥ったら、どうする?と試されているような気がした。
監督にはそんな意図はなく、2組の親の心理描写に注力した作品だとは思うが。
問題の事件は割と早い段階で発生。如何にも現代的な展開で明らかにされる。
そこから、ずっと続く重苦しい2組の親の心理・感情の移り変わり。
終盤にきて態度が逆転する兄と弟。
一貫して冷静な兄嫁と感情的な弟嫁。
罪の意識のない子供達。
それらを俯瞰して観られる立場にある私は、さあ、あなたはどう思いますか?あなたならどうしますか?と問いかけられ続けている気がした。
そう思えば思うほど、更に引いた視点でこの2組の家族の行き着く先を冷めた目で観ている自分がいた。
大人達は振り回されるだけ振り回されて、ズルズルとどん詰まりの自滅の袋小路に勝手に入り込んでいく。「怖い」という感覚ではなく、むしろ滑稽な悲劇の舞台を鑑賞しているかのような感覚に陥った。要するに、冷めた目で観ていた。逆説的に言うと、冷めた目で観られたので、心理描写、心象風景の描写が上手いな、と純粋に役者の演技や演出に目を向けることができた。
認知症、介護、大学受験、ネット、金が物をいう社会という、現代的な問題を散りばめてはいるが、こうしたことは主題ではないと思う。やはり人間の心の揺れ、脆さ、強さ、そういったものを描くことがこの映画の主題だ。
ラストの結末だが、兄夫婦が店を出て、兄嫁が携帯を取りに店に戻った時点で想像がついてしまった(兄が車道に出た時点で、序盤の伏線回収で死亡フラグが立った)。ここがちょっと惜しかった。最後に観客をあっと言わせる演出があれば、「やられた!」と思えたかも。
とはいえ、ホ・ジノ監督の演出と4人の役者の演技を堪能できた。
殺人をしても罪の意識のない子供達をそのままにして、親だけ悲劇の結末というこの胸糞悪さも、この作品の味わいでしょう。
共感とコメントありがとうございます。
>(兄が車道に出た時点で、序盤の伏線回収で死亡フラグが立った)。ここがちょっと惜しかった。
登場人物に対する先入観を徐々に覆していく様が緻密にできていたのに、これは残念でしたよね
コメントありがとうございます!TSさんの観点で見るか、でないかで違う世界が見えてくるんだと思いました。そうかーと思いました。私はひたすら芝居にくっ付いて見ていました。それぞれに面白いのかな