「衝撃的なラストには大きな違和感も残る」満ち足りた家族 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃的なラストには大きな違和感も残る
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運転中のトラブルを発端とした死亡事故が発生したり、弁護士と医者の兄弟が、認知症の母親の介護をどうするかでもめたりする序盤は、いったい何の話なのかが分からず、展開もモタつく。
やがて、兄弟の子供達が、ホームレスに対する傷害事件の犯人であることが明らかになると、子供を自首させるか、このまま隠蔽するかで葛藤する親達の苦悩が描かれて、俄然、面白くなってくる。
親達が悩むのは、子供の未来を潰したくないからだけでなく、子供の起こした不祥事が、自分達の仕事やセレブな生活にも悪影響を及ぼすからで、この辺りの事情は、日本の社会にも相通じるものがあって、妙に納得してしまった。
中盤以降は、金のためには悪人でも弁護する兄と、清廉潔白な弟という、価値観の異なる2人の対立が大きな見どころとなっていくのだが、ラストで「善人」と「悪人」が入れ替わる展開には、思わず「そうきたか!」と唸ってしまった。
ただし、弟が、どうしてそれほどまでに子供達の自首に反対するのかについては、今一つ腑に落ちない。
自分だって、一度は息子を自首させようとしたのだし、その息子が、実は全く反省していないということが明らかになったのだから、反対する理由が見当たらないのである。
しかも、エンディングでの暴挙は、頭に血が上ってついやってしまったというレベルの話ではなく、もはや常軌を逸しているとしか思えない。
仮に、兄を亡き者にしても、その妻が真実を証言するだろうから、事故に見せかけることも、口封じをすることも不可能だろう。
確かに衝撃的なラストではあるけれど、どう考えても辻褄の合わないことに対する大きな違和感が残った。
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