ディックス!! ザ・ミュージカルのレビュー・感想・評価
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エンタメの定型をみごとに再活用したアグレッシブなバカ映画
リンジー・ローハンが子役時代に主演した『ファミリー・ゲーム/双子の天使』、つまりは原作であるケストナーの児童文学「ふたりのロッテ」が下敷きになっていることは、わりと重要だと思う。つまり、生き別れた双子が再会し、別れた両親のよりを戻させようと奮闘するのは、王道ストーリーにパロディだからで、その王道展開にどれだけバカげた下ネタギャグやミュージカルナンバーを盛り込んで、世間の常識をつつきまくって笑い飛ばすかという勝負をかけているのだ。
下ネタ一辺倒かと思いきや、下水道ボーイズなどもっとシュールに突き抜けたネタも多く、不謹慎だがスリリングなアジテーションとしても成立している。もちろん中身は空っぽなんだけど、いや、空っぽだからこそ、ミュージカルや映画としての盛り上げが限りなく純粋に機能していて、エンタメって本来空っぽなものなのかもしれないし、それいいのだ、なんて思ってしまう。中身なんてなくたって映画は感動できるし、笑えるし、楽しめる。映画ってすごい。
いや、でも最後には「すべての愛は気持ち悪い」というみごとな真理を謳い上げてくるのだから、空っぽどころかとてつもないメッセージを投げつけてくる映画なのかもしれない。ほんと油断のならない二人組に大きな拍手を送りたい。自分ひとり分だけかもしれないけども。
観賞後いろんな人の多様な感想が聞きたくなる
A24がミュージカルに挑むと聞き大衆路線に舵を取り始めたのかと思ったが、完成品を目にして胸を撫で下ろした。A24は何も変わっちゃいないどころか、思い切り舵が振り切れて、今回はむしろ攻め過ぎに感じられるほど。仮にこの映画が大嫌い、やりすぎだと酷評する人がいても私は「まあ、そうですよね」と笑って受け流す。だが一方で、もし受け入れられないものと出会った時、それでも敬意を示せるか、尊重できるかこそが重要なのかもしれない。その意味でも、全ての面でトゥーマッチに突き抜けた登場人物らが中盤で全く意味不明の未知生物「下水道ボーイズ」と出会う場面は最高におかしくも、我々の意識を底上げする。彼らはこの世界におけるxyzのごとき変数であり、様々なマイノリティの価値観がここに代入可能なのだろう。表現し続けること、挑み続けることはある種の戦いだ。本作を観ながら脳裏に偉大なるジョン・ウォーターズのことが思い出された。
アメリカの福田雄一
ALL LOVE IS LOVE
ぜひおひとりで鑑賞を
Fワード乱舞、楽しげなメロディに一般的な思考回路では思い付かないようなとんでも解決策を晴れ晴れと歌い上げるミュージカル。劇中の演目名やポスターなどにも、ん? と二度見して目を剥いた。
作中の曲はミュージカルの有名曲のリスペクトが多いのか、なんとなく聞いたことがあるような気がするものの、詳しい人にぜひ解説してほしいところ。サウ○ド・オブ・ミュージックの年を数える歌のオマージュかな、とも思ったけど…(違ってたらすごく恥ずかしい)
下品なものも極端なものも、それはそれ、として切り分けて楽しむことが出来る人向けの作品だと思います。
あとは、この作品の極端さが不愉快とは感じなかったのですが、主張はするけれども押し付けはしないところがよかったのかなぁと。
普段、社会的に不適切なので自己抑制していることは誰しもあるかと思いますが、登場人物たちは言っちゃいけないことをガンガン言うし、やるし、思い付く解決方法はとんでも過ぎて正気の沙汰とは思えない登場人物たちに、どこか羨ましいような、まったく(一切、これっぽっちも!)お近づきになりたくないような気持ちになってしまいました。
個人的に好みに合致したので、やや加点気味しつつ。
体制に喧嘩を売るA24
タイトルは男性器とともに「嫌なヤツ」の意味もあり、この二人(後に双子の兄弟と判明)は最初、「男らしさ」を過剰に体現したまごうかたなき嫌なヤツらとして登場する。「アメリカン・サイコ」のベイトマンのように。あのホラーコメディ同様、男らしさをおちょくるのがこの映画のポイントの一つだ。その武器としてのゲイセクシュアル。ラストで「神」(しかもアジア系。とても良い役者!)が、「神はオカマ」と宣言し、ゲイの結婚を認めるのは、保守の神経を逆撫でするだろう。聖書を改訂する、とか言ってるし。血の繋がった双子だろうとセックスしても良いじゃん「愛」があれば! イヤさすがにそれはちょっとだめでは…となるが、勢いで良いことにしてしまうのがこの映画のノリだ。下水道ボーイズとか、大陰唇を羽根がわりに飛ぶ物体Xみたいな女性器が出て来る映画を相手にまじめになってもしょうがないでしょ。
二人が仲良くなって映画館から出てくる、そのタイトルがEveryone Everywhere Cums At Once(誰もがどこかしこで同時にイク)なのは笑った。もちろんA24のヒット作「エブエブ」のもじり。A24は少し前の「MEN」とか「シビル・ウォー」もそうだが、間接的・直接的にトランプ政権に喧嘩を売る映画を今後も撮り続けるのだろうか。支持したい。
不適切にもほどがある
R18版ふたりのロッテ
生まれてすぐ引き離された生き別れの双子がひょんなことから再会し、お互いの両親を再び仲直りさせようと企む「ふたりのロッテ」・・・とあらすじはほぼ同じなんだが、主人公2人をミソジニー有害成人男性にしてクィアや下ネタのオンパレードにしたR18ミュージカルがこちらです。いやほんと。
ぶっちゃけ内容なんて無いような筋なんだが、曲が良いうえに、ミュージカルガチの実力を持つ歌唱力抜群のキャストが歌うのでなんとなく聞き入ってしまう、ただし歌詞の8割、いや9割は下ネタであるが。
見る人は選ぶだろうけど下ネタ大丈夫な人なら是非。ナンバーが良いのでサントラが欲しいところ(歌えない曲ばかりだが)。
一点、ミュージカル作品の映画化するならロケーションにこだわったりカメラワークにこだわったりと「このシーンは舞台では出来ない。映画ならでは!」という演出やシーンが見せ所なのだが、そういった魅力あるシーンがそこまで見受けられなかったので、元のシンプルな舞台のほうが面白いのでは?とはやや思ってしまった。まあ映画の「プロデューサーズ」よりマシではあるが・・・。
お下品で不謹慎でハッピーで愛
これ以上、被害者を出さないために
当たり外れの多いA24だからと我慢していたが、冒頭、早々と退散。
今年一番の金返せ映画。
リベラル気取りのWOKEを許せるか許せないかの試金石映画。
壮大なテーマを扱った下ネタだらけで好きな人と嫌いな人に別れるA24初のミュージカル映画
昔洋モノの大人の雑誌に「DICKS」というのがあったけど知っている人いる?
2025.1.23 字幕 MOVIX京都
2023年のアメリカ映画(86分、G)
原作はジョシュ・シャープ&アーロン・ジャクソンの舞台『Fucking Identical Twins』
生き別れになった一卵性双生児の再会と、彼らの両親の再婚を描くミュージカルコメディ映画
監督はラリー・チャールズ
脚本はアーロン・ジャクソン&ジョシュ・シャープ
原題の『Dicks:The Musical』の「Dicks」は男性のアレを意味する言葉
物語の舞台は、アメリカのニューヨーク
商社でトップセールスマンとして活躍しているクレイグ(ジョシュ・シャープ)とトレヴァー(アーロン・ジャクソン)は、実は一卵性双生児だったが、両親の思惑で生き別れ状態になっていた
ある日のこと、二人がそれぞれ勤めている会社が合併をすることになり、新しいボス・グロリア(Megan Thee Stallion)のもとで働くことになった
二人はトップであることを誇りに思っていて、出会うなり戦いが始まってしまった
その戦いの中で、二人は同じ時間に生まれたことを知り、お互いの親についての確認をする
どうやら一卵性双生児のようで、二人が生き別れになったのは両親のせいだった
クレイグは父ハリス(ネイサン・レーン)に育てられ、彼は変なクリーチャーを飼っていた
また、トレヴァーは母エヴェリン(メーガン・ムラーリー)に育てられ、彼女はアソコが落ちたと言っては車椅子生活をしていた
映画は、この二人が両親を再婚させて兄弟に戻ろうというもので、そんな様子をミュージカルで描いていく
レストランで引き合わせることに成功するものの、お互いの生活は理想的なもので、元に戻るのはリスクがあった
そんな折、ハリスの飼っていたクリーチャー「下水道ボーイズ」が逃げ出してしまい、4人はそれを追って地下道に潜入することになったのである
かなり下品なセリフの連発だが、放送禁止ワードを巧みに交わしているためか、映倫区分は「G」となっていた
おそらく、原語鑑賞のアメリカだとアウトだと思うが、まあギリギリを攻めている感じはわかる
とは言え、かなり下品で低脳な感じがするので、合わない人は即寝てしまうくらいに内容はつまらないと感じた
いずれにせよ、なんとか完走できるかどうかの内容で、頭を空っぽにして感じるタイプの映画のように思う
ともかく悪趣味というよりはくだらない下ネタが多いので、たまには息抜きするかなぐらいのマインドでないとついていけない
個人的には全く合わなかったので、全く面白味を感じず、印象に残る歌もなかったように思う
ミュージカルとしてもイマイチな感じがしたので、いっそのこと映倫区分を上げてでも良いので、テレビで流せないワード連発の吹替版を作った方が話題になったのかな、と思った
圧倒的にくだらなくてバカバカしい最低映画……だけど心から離れない!
生き別れた双子がひょんなことから劇的な再会を果たし……という感動大作ではない!
主人公である双子はバカだけどテンションが高いだけ、と解釈できなくもないが、その両親は明らかに何かネジが数本抜けており、とすべてがおかしく展開もバカバカしく、父親のペットや職場の上司なども、「普通」ではない。
ミュージカルとしても底抜けにおかしく、ラストの展開も頭がおかしい。
ただ、すべてが許せし、愛おしいし、そこにこそ奇麗事じゃない「多様性」が描かれているといってもいいでしょう。
こういう映画もあり。
そう思える作品だし、こんな映画も扱えるのがA24なんだな、と感じています。
「袋のハム」というタイトルの自伝
お下劣な内容の映画は好き嫌いが分かれるジャンルの一つだ。個人的には嫌いじゃない。ミュージカルはあまり好きではないが、かなりお下劣だから観てみようと思ったくらい。たしかにストーリーとしてくだらないし、盛大な悪ふざけを観ている感覚になった。でも悪くはない。
前半は少し退屈に感じたところもある。お下劣といってもそれほど過激ではないし笑えるところもあまりない。下水道ボーイズなんて何が面白いんだろ。思いのほか曲がいいいからかろうじて観ることができたレベルだ。
でも後半、ママのアレが飛びかかるあたりから笑えきた。なんというくだらなさ! 最後の「All love is love」と歌うあの曲もいい。LGBTQを否定する人たちの宗教観をぶん殴るようなシーンで痛快だった。そういえば、2人が住んでいるアパートの壁に貼ってある架空の映画のポスターもLGBTQが絡んだタイトルになっていた気がする。すごく意図的で戦略的なのかも(ただの悪ふざけだと思うけど)。
そしてエンドロールは、最近珍しいNGシーン。これもまたくだらなかった。ハムを下水道ボーイズに食べさせるシーンは全く面白くなかったのに、あのNGシーンは笑えた。「袋のハム」、そんなタイトルの自伝だったら読んでみたくなる。観終わった後、ニヤけながらくだらなかったなーと感じてしまったからあまり批判はできない。ただし、万人にはオススメできない。
けっこうよかった
ゲイを差別したい気持ちはないのだけど、ところどころ行き過ぎていて気持ち悪い。フルスイングしている感じは最高だ。表現に腹が座っている。だけど短いわりに長く感じて、コンディションがよくなかったのかもしれない。リズムやグルーヴが合わなかった。
LOVE IS ALL
タイトル(ディックス)からわかるように、下半身&LGBTQ+ネタだらけの下品でお下劣、エログロ満載な実にひどい内容(褒めてます)。
パンフレットに漫画☆太郎さんのイラストを使ってることで察してください。
わずかでも良識がある(残っている)人や、普通の映画好きには、あまりおすすめできませんが、「常識」「権威」「既存の概念」「信仰しててる宗教を絶対という価値観を押し付けてくる人間」をおちょくり、喧嘩を売るようにして笑いを取るベクトルの作品って、私には大好物。
「モンティ・パイソン」や、マット&トレイの作品群(『オーガズモ』『サウスパーク/無修正映画版』『ブック・オブ・モルモン』)を初めて観た時のインパクトを思い出しました。
何より音楽が素晴らしい。
さすが『コーダ あいのうた』『ラ・ラ・ランド』のマリウス・デ・フリースによる作曲&プロデュース。
歌詞はアレですが、観た後、非常に清々しい気持ちになりました。
「LOVE IS ALL 愛があれば全てOK」
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