「鈴木おさむと若手有望株の俳優を、目を細めながら堪能しまくれる作品」遺書、公開。 ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
鈴木おさむと若手有望株の俳優を、目を細めながら堪能しまくれる作品
脚本を書いた鈴木おさむさんには、自分の中で2つほど、特別な思いがある。
1つは、ここ数年で映画やドラマの鑑賞に、
ハマりつつあった思いが、爆発した昨年の2024年、
新旧合わせ、250本ほど見漁る事になるのだが、
その中で最も良かったと思える作品が、
鈴木おさむさんが脚本を手掛けた「極悪女王」だった。
もともと「昔の」プロレスが好きだったし、
ストーリーや展開も面白く、80年代をテーマにした作品がいくつかヒットした年で、
おじさん世代のノスタルジーで憧憬的な欲求に、
グサっと突き刺さる感じがあって、なんかもう、たまらなかった。
もう1つは、私が鈴木おさむさんと同じ、高校・大学に進学したという、重なる経歴。
なんで私と同じ年齢の頃、同じ場所で過ごした、おさむさんと私とで、
片や才気あふれるクリエイターに、もう片や、凡した、しがない人生を送る私とで、こうも差がつくのだろうかと。
自分の不甲斐なさを棚上げするのはともかく、
おさむさんの地元は、本当に「ド」がつくレベルのド田舎。
なんの変哲もない漁師町なのだが、不思議なことに、
おさむさんの地元や通った学校には、芸能人やクリエイター系の有名人輩出数が人口の割に多く、
とりわけ、文章作家の才がある人物が、数年に一人は出てくる。
とは言っても数えるほどなのだけれど、
何せ人口が過疎人口なのだから、それを考慮すると凄まじい確率になり、昔から不思議でしょうがなかった。
そういう理由もあり、放送作家引退宣言前後で注目度が上がった付近から、
鈴木おさむさんが出てくる、テレビ・ラジオ・書籍・Youtubeなどは、
片っ端からチェックするようになった。
そこで気づいたのは、この方は話術にも才があるという事だ。
とにかく話が面白いのである。
人が経験しないような事を沢山してるもんだから、
エピソード自体のレベルが高く、そして濃厚で、
放送作家やラジオ等の経験から、それを面白おかしく伝える技術もある。
クリエイターとしてだけでなく、出役の演者としても魅力的で、
エンターテイメントにおけるマルチの才能とは、
きっとこういう人の事を言うのだろうと、常々思っていた。
そういう人が書いた脚本の映画。そりゃあ入院でもしない限り、
必ず観るだろう、という話なのである。
そういうわけで、映画の内容は、学園を舞台にしたクラスメイトが沢山出てくる、
ミステリアスな謎解きモノのジャンル。
クラスメイトに「序列」というものが、
ひょんな事から突然ついて、序列1位だった子が、謎の自死。
その1位の子が、クラスメイト各々に遺書を残しており、
謎を探るため、各々遺書の内容を明らかにしていく過程で、
「序列」に影響を受け始めた、生徒達の心の闇や本音が段々見えてきて、
謎の自死の理由も、徐々に明らかになっていく、というお話。
人間の「表と裏」「格付け」という、いかにもテレビバラエティー世界の裏方で、
活躍してきた人らしい題材のピックアップだなと思った。
芸能史に残るアイドルグループだった、SMAPと携わる事の多かった人物だし、
「ドッキリ」的な演出で、芸能人を片っ端から騙し、ハメてきた人物ならではの題材。
謎解きがベースであり、最後まで緊張感を保ち、
話が展開していくので、最後まで飽きなかった。
演者のメインは、高校生役の若手俳優が多数出てくるお話なので、
若手の群像劇にありがちな、演技の粗さを感じるシーンも多々あったが、
すでに映画やドラマで、主役経験者、ヒロイン経験者も何人か出てきていた事もあり、
話の本筋がブレることもなく、最後まで鑑賞できた。
とりわけ良かったと感じた俳優は、
1人目は、やっぱり「ベイビーわるきゅーれ」の髙石あかり。
朝ドラが決まった事もあり、一番知名度がある女優だと思うが、
サイコパスじみたキャラクターだったら、なんでもハマるだろうと思った。
容姿整った小綺麗なタイプ女優ではなく、才気溢れる演技派、本格派の女優。
「令和の樹木希林」の称号が相応しい。
2人目は、日髙麻鈴。
直近で観たやつだと「美晴に傘を」でヒロインを演じていた。
この作品自体は個人的にハマらなかったが、存在感だけは凄く印象が残っており、
ああ、あれに出てた人だとすぐ分かった。不思議ちゃん系の役柄が合いそうで、
今作品では、腐女子系の芋的な眼鏡っ子がハマっていた。
眼鏡を外してよく見たら美人、洗練されたらとんでもなく映える的な、
変身モノが似合いそうな女優だった。
数年後には、「身売りされた遊女が、大人になって花魁になります」の時代劇に、
きっと出演している事だろう。
3人目は宮世琉弥。
ティーン向けの恋愛作品に出てる印象が当初からあり、おじさん世代からすると、
いわゆる「男が嫌いなタイプの男性役」のイメージが、びっしりついて回ったが、
何度か作品を観るにつれ、見た目以上に演技上手いなと思い始めている俳優さん。
以前、何かのドキュメンタリー番組で、生い立ちストーリーの中に「3.11」があり、
そういう人物像の背景もあって、パブリックイメージが日に日に良くなっている。
今作品も重要なキーパーソンの役どころでよかった。
良かった演者
髙石あかり
日髙麻鈴
宮世琉弥
楽駆
志田彩良