蜘蛛巣城のレビュー・感想・評価
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完璧では無い脚本が完璧な映画を作る。
もちろんシェイクスピアのマクベスという素晴らしい原作があるのだが映画脚本としては決して優れているとは言えない。むしろ優れた脚本を書こうとはしていないようだ。原作が舞台であることから舞台を意識した脚本になっている。だから映画としては地味すぎ、説明的すぎる部分もかなり目立つ。例えば、危機を逃れたの若者が、その後どのように怒っているかというところは普通は脚本に描かれる。あえて城と森からカメラを出さないことによってまるで我々が舞台という限られた一面しか見ていないかのような錯覚を与えているのである。そのような制約を設けた脚本から黒澤明はこのような素晴らしい映画を作った。この映画の素晴らしさはそのスローペースにあるのだろうと私は思う。話の展開そのものはスピーディーに進むのであるが、ひとつひとつのシーンが極めてスローに進む。その絶妙な演出が素晴らしい。またカメラは基本的には静止しているのだが時折まるで生き物のように動く。静と動のバランスが素晴らしい。または三船敏郎の甲冑姿がすばらしく良く撮れている。前半はストーリーの退屈さをカバーするために甲冑姿をアップで美しい角度からたくさん撮ってている。クライマックスあたりになるとわざとそれを抑え極端な煽りとかを使って真正面から撮らないようにしている。そして最後の最後に真正面から美しく…私はあのシーンを敢えて美しいと表現するが…捉えているものにカタルシスを与えているのである。また城の造形とその造形を美しく見せるカメラワーク、軍兵、馬、軍兵の持つ旗などが動く動きの美しさ、面白さと言ったら極めつけである。
もっとも素晴らしい映画とは新しいイマジネーションを生み出している映画だと私は評価する。これは1つの最も素晴らしい映画であり黒澤明の代表的な傑作の一つである。
もしかしたら本作は黒澤監督による、溝口監督への追悼作品であったのかもしれません
マクベスの翻案であるというのは有名なので、筋書きは最初から決着まで誰もがどうなるのかどう展開するのかを見通して本作を観ているはずです
それでも面白いのです
いや、分かっているからこそ一層面白いのです
なるほどこう移植されるのかと納得して、整理されている脚本にまず感心するのです
そうして能の要素を駆使していることによって、日本の美意識、諸行無常の死生観をこの西洋の物語に注入することによって、完全に日本の物語にして映画として観せていることに驚嘆するのです
その映像世界は溝口健二監督の作品世界を思わせます
特に山田五十鈴が演じる奥方の主人公への献策シーン、中でも大殿の殺害を教唆するシーンや懐妊告白のシーンは、雨月物語での彼女の出演シーンを彷彿とさせるものです
そのシーンを含め正にカメラもワンシーン・ワンカットの長回しで異常な緊張感をもたらす溝口監督の作風が本歌取の如く多用されているのです
溝口監督は本作公開のわずか4ヶ月前に白血病で急死されています
もしかしたら本作は黒澤監督による、溝口監督への追悼作品であったのかもしれません
それでいて第一級の娯楽作品なのです
クライマックスの雨あられと飛来する矢射けのシーンはありとあらゆる弓矢の戦闘シーン、銃撃戦を含めても古今東西の映画に勝る迫力です
CGを駆使できる現代であっても、いやだからこそこの迫力はだせないのです
三船敏郎の恐怖に歪む顔は嘘偽りのない本物の恐怖です
こんな演技はできるものではありません
本物だからこその迫力があるのです
蜘蛛巣城の巨大セットもまた画面のスケールと物語に於ける強欲の巨大さを見事に表現しています
夜に大量の鳥が場内に飛来するシーン
もしかしたらヒッチコックの鳥のインスピレーションの出発点だったのかも知れないと思いました
それほどの不気味な迫力のあるシーンでした
こんな映像は当時全く誰も観たことのないものだだったはずです
世界最高峰の映画の一つといって間違いないと思います
・こんなに人の言葉に流されやすい侍が強気でいるのがおもしろい ・タ...
・こんなに人の言葉に流されやすい侍が強気でいるのがおもしろい
・タガが外れる女は五十鈴に限るな
・そこまでしてだまくらかすのか!という最後
よっく聞け
黒澤版Macbeth。
魔女は一人だけのようで、Macbeth夫人に当たる浅茅が、邪念に一層取り憑かれているように見えました。
ポジティブに取るも、ネガティブに取るも、
ものは受け取りよう…(^^)。
カメラはそのままで役者が奥に消えまた戻って来たり、ズームインとアウトで姿を現したり消したり、濃霧(に見立てた煙)を上手く使ったり、この頃の斬新な撮影手法でしょうか。枯枝で自然に蜘蛛の巣を表現している所が良かったです。白黒ならではですね。
山田五十鈴の気味悪さは半端ない。
志村喬の知恵者役はぴったり。
三船敏郎の眼力・顔力は衰え知らず。
千秋実の幽霊姿や終盤の矢の多さにちょっと笑ってしまいましたが、主人公の最期は、夢に出て来てうなされそうなくらいの迫力です。
疾走する騎馬武者の勇姿は、黒澤&三船が最強だと勝手に思っておりまして、そこも結構観ることが出来ました。
聞き取れない
古い映画なので仕方がないかもしれませんが、セリフが
聞き取れない事が多く、展開がよく分かりませんでした。
主演の三船さんの演技は迫力ある演技で、馬術も様になって
カッコよかったです。
つぎは日本語字幕が付いているものでしっかり見たいです。
ギランギランした眼!
未見だった黒澤の一作をデマンドで。
黒澤娯楽作のファンからするとなんとも重たく感じた一本。マクベス原作ってのは後から知る。映画的ではない能を取り入れたモンタージュは、リズムに合えば楽しめるがそうでなければちょっとキツイ…。
山田五十鈴演じる妻の存在が恐ろしい。(この人が一番悪いんじゃないでしょうか)
静から動のラストは見事!(後で揉める事になるのは先に知ってしまっていたのだが、それも納得のシーン)
黒澤好きならどうぞ、という感じです。
初めて観る風の映画で、現代にはあまり好まれ難い雰囲気もあるけど話が...
初めて観る風の映画で、現代にはあまり好まれ難い雰囲気もあるけど話が進むにつれて面白くなってくる
能が良い感じに奇妙な恐ろしさを出していて、マクベスを上手く日本風にされているなと思った
現代の映画ばかりでなく昔の映画も観るのも面白いと思った
シンプルな話に力のある映像で、目が離せない
久しぶりに黒澤作品を観たが、思った以上に良くて驚いた。
とにかく目が離せない。
シンプルな話なのだけれど、映像に力がある。
馬が良く撮れていて良かったし、三船の顔も良かった。
黒澤作品、未見の作品を残らずチェックしたくなりました。
作品は微妙??
物の怪が最初登場するシーンや手をひたすらに洗うシーンに狂気を感じて二十歳の自分でも怖かった。まぁそれが不気味さを際立たせていて良いんだけどね。でも、子どもの頃観てたらきっとトラウマ。
有名な弓矢のシーンが最高。あれを学生弓道部の部員が実際に三船や三船の周囲めがけて矢を射た(ただし、筒状の矢にワイヤーを通し、着点に誘導したもの。また遠距離からではなく、カメラフレームすぐ横からの射的)って言うんだから凄い。撮影が終了した後、三船が黒澤に「俺を殺す気か!?」と怒鳴るのも分かる。役では実際死んでるけど。(wiki参照)
三船凄絶
ラストシーンに至るまでの過程がすごい。
まさかと思うエンディングが待ってる。
そして三船という人のなんとも言えない魅力。凄まじいとタイトルに書いたがそれだけではない色気がこの作品の中心にある。
こんなに色っぽい役者がいたろうか。
この人はone and onlyなのだと考えずにはいられない。
この人こそ本当に今必要な役者だ。
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