「J・P・ホーガンの『ライフメーカーのおきて』のよう」エレクトリック・ステイト 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
J・P・ホーガンの『ライフメーカーのおきて』のよう
ルッソ兄弟が持つエンタメ作品(あくまでもエンタメ作品)における脚本構成力と、
緻密な伏線展開(伏線というよりも伏網)は、
『ウインター・ソルジャー』や『インフィニティ・ウォー』などで見せたものに匹敵するかと思われたが、
今回はその期待に応えるまでには至らなかった。
シナリオとしてはクレジットされていないが、
PとしてDとして当然シナリオ作成には参加しているだろう。
複雑な物語の展開を避け、
全体の世界観に重きを置いた結果、
物語は少し単調になり、
視覚的な魅力や設定のユニークさを重視したアプローチが目立つ。
特に、美術設定やキャラクターデザイン、
メカ設定は優れており、
ミスター・ナッツではなく、
ピーナッツが言う〈ブルー・スカイ・エーカー〉内の美術は非常に印象的だ。
各ロボットの個性、デザインやそのギミックも、
SF映画としてレトロ感と新鮮さと独自性を持っており、
これらが全体の世界観を支える重要な要素となっている。
もし、ストーリーテリングにもう少し深みが加われば、
さらに楽しめたことだろう。
とはいえ冒頭で弟が、
人間の意識が物理的境界を越える、
つまりテレパシーは現実化され得る、
簡単な量子論を姉に話す、
姉は弟の粒子の所まで遊びに行くよ、と。
そして、
アインシュタインの脳が奪われたような、
高度な技術の進化の狙いも背景に置きつつ、
目の前のアホみたいな現実は、
ぶつかり軍人さん。
科学と感情が交錯する瞬間をセリフに動作に置き換えながら、
物語の核心に迫る伏線として端的に機能させる高い演出技術で、
この世界における科学と倫理の対立をも象徴し、観客の好奇心を刺激する。
J・P・ホーガンの
「ライフメーカーの掟」
のようでもあり、
ハーマンはハカイダーのようでもあった。
ジャン・カルロ・エスポジートも、
珍しく悪役では・・・・た。
I fought the law And the law won