BLUE FIGHT 蒼き若者たちのブレイキングダウンのレビュー・感想・評価
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これはいわゆる「不良バトル映画」と決め付けられないほど、多層的で幾つものサイドストーリーが伏線として用意されていて、さすが三池監督と唸らせる内容でした。
「1分間で最強を決める」という斬新なコンセプトで熱烈な支持を集める格闘技イベント「ブレイキングダウン」を題材に、少年院で出会った2人の男がブレイキングダウン出場を目指す姿を描いたバトルアクション映画。ブレイキングダウンの顔ともいえる格闘家・朝倉未来と起業家・溝口勇児がエグゼクティブプロデューサーを務め、「クローズZERO」の三池崇史監督がメガホンをとった。
●ストーリー
濡れ衣を着せられて少年院に送られたイクト(木下暖日)は、そこで出会ったリョーマ(吉澤要人)と親友になる。少年院で聞いた朝倉未来(本人出演)のスピーチに感銘を受けた2人は、格闘技イベントのブレイキングダウンに出場するという夢を追うようになります。出所後、ふたりは早速キックボクシングジムに登録。トレーナーの紺野(寺島進)の指導の下、ブレイキングダウン優勝を目指すのです。
それに邪魔が入ります。少年院時代のいざこざからイクトに対抗心を燃やす盾(久遠親)が仲間を引き連れて、キックボクシングジムへ乗り込んできます。そしてイクトにいきなりスパーリングを申し込むのです。ボクシングにいた吉祥丸は、かなりの腕前。イクトは苦戦を強いられます。
対戦後吉祥丸が元カノの玉木由希奈(加藤小夏)と共に帰宅していたところに、最凶の半グレチーム・クリシュナのメンバーたちが絡んできます。玉木を庇おうと応酬した吉祥丸は、多勢に無勢でメンバーたちに拉致され、クリシュナのアジトに監禁されてしまうのです。
事態を知った不良軍団を仕切るNo.2の井坂公介(仲野温)は、恥も外聞をかなぐり捨てて、土下座して吉祥丸の救出をイクトに頼むのでした。
けれども、この日はイクトにとってブレイキングダウン決勝の日。クリシュナを率いる最強の男御堂静(GACKT)が待ち受けるアジトに飛び込むなんて、夢を自ら捨てる自殺行為となります。
果たしてイクトとリョーマは、新しい人生に踏み出す事ができるのでしょうか?
●解説
これはいわゆる「不良バトル映画」と決め付けられないほど、多層的で幾つものサイドストーリーが伏線として用意されていて、さすが三池監督と唸らせる内容でした。意味なく不良集団がぶつかり合うだけの映画『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズとはえらい違いです。
義理と人情で単身敵地に飛び込むイクトは、まるで高倉健が蘇ったかのようでした。ですから、本作の本質は任侠映画がベースにあると思います。
けれども本作のメインストーリーは、『ブレイキングダウン』に勝利して、夢を実現しようとする主人公の少年ふたりのサクセスストーリーなのです。
そのための過程として、吉祥丸とのスパーリングシーンも、キックボクシングジムでの練習風景も、さらにブレイキングダウンでの対戦シーンも手抜きは一切なく、ガチンコ対決でした。
しかし後半クリシュナに関わってしまうことで、単なるサクセスストーリーから任侠映画にシークエンスがガラリと変わってしまうのです。
それでも夢に向かって最後まで諦めない二人の不撓不屈なところには、感銘しました。
さて本作にはメインストーリーの裏側に様々な因縁や秘密が隠されています。
先ずはイクトが少年院に送致されることになった強盗事件には、盟友のリョータが関わっていたことです。本当のことをずっとリョータはイクトにいえません。いつバレて二人の間が悪化してしまうのか、ヒヤヒヤする展開でした。
またリョーマに追い込みをかけて、強盗に手を染めさせたのが不良軍団の井坂だったのです。リーダーを助けてほしい土下座した井坂を、リョーマはどんな気持ちで見ていたことでしょうか。
さらにはリョーマの父親矢倉大輔(高橋克典)は殺人の容疑で家拘置所に収監されながらも冤罪を主張して最高裁にまで上告し争っていました。そんな父親とリョーマは微妙な関係でした。それを煽ったのが。ブレイキングダウンのオーディションでイクトとリョーマを挑発する佐渡島条威(大平修蔵)です。彼は東大キックボクシング部の主将で、検事の父親が、イクトの父・大輔の裁判を担当していたという因縁がありました。盛んにリョーマのことを殺人犯の息子とこき下ろす佐渡島。果たしてブレイキングダウン決勝戦と重なった最高裁の上告の結果も気になるところです。
ところで総勢2000人のオーディションを勝ち抜いた主演の木下暖日と吉澤要人は、今回が初めての映画出演となりました。
初めてとは言えない堂々とした演技で、ケンカシーンも格闘技シーンも気迫ある演技を見せてくれました。
そして印象的なのは、ラスボスとして登場したGACKTです。掴みどころのない性格だが、残酷な事も冷静に行う狂気も垣間見せるのです。敢えて殴らせてやって、ノックダウンしたフリをするところは、なかなかお茶目な性格の持ち主のようです。それにしても見事に鍛え抜かれた筋肉を見せつけ、相手を瞬殺してしまうところは、さすがGACKTさま!でしたね。
荒削りの美学
映画TikToker として
完成披露試写会お招き頂いた。
ブレイキングダウンも
この映画のオーディションバトルも
全部観ているからこその
“荒削りの美学”
を楽しめた。
三池組の技術部だ。
映画としては申し分ない。
では、どう撮るのか?
バイオレスの天才が料理するのは
“喧嘩芝居が上手い役者”ではなく
プロに成り立ての新人と、
ブレイキングダウンのファイター。
お世辞でも上手い訳がない。
攻め過ぎず
まとめ過ぎず
でも、
自由にはさせず。
この役者達の料理の仕方が
求め過ぎず丁度いい。
さすが三池組。
正直、熱さを冷ます
安い友情出演とかもあるが
(特に、ホリ◯モン)
“ブレイキングダウン THE MOVIE”
として十分に楽しかった\(´ω`)/
是非、劇場で!
若き魂と友情を描いた青春群像劇
12月9日に新宿ピカデリーの試写会で鑑賞しました。エクゼクティブ・プロデュ―サーの溝口勇児氏とDJふぁい氏のトークで語られた製作者・出演者が本作に賭けた情熱と熱い想いが全編に感じられる作品として感銘を覚えました。リングを舞台に人生の機微と友情を描いた『レイジング・ブル』(監督:マーティン・スコセッシ 1980)、『ミリオンダラー・ベイビー』(監督:クリント・イーストウッド)、『百円の恋』(監督:武正晴 2014)、『ケイコ目を澄ませて』(監督:三宅唱 2022)の中に、三池崇史監督が令和の日本を舞台とした本作を届けてくれたとの感を強く抱きました。樹林伸の奥行のあるポリフォニックな脚本と三池崇史監督のアクション・シーンを動的かつ詩的に捉えた北信康のカメラの秀逸さ、そして『明日に向かって撃て』(監督:ジョージ・ロイ・ヒル 1969)や『テルマ&ルイーズ』(監督:リドリー・スコット 1991)を連想するバディ(Buddy)映画である本作を東洋的寡黙さを有しながら見事に演じ切った木下暖日と吉澤要人は、この映画を観る観客の脳裏と心に強い印象を与えるのではないかと考えます。個人的に愛して止まない『さらば青春の光』(監督:フランシー・ロッダム 1979)と共に、社会の現実を受け入れるには時として強すぎて制御不能なエネルギーを抱える若き魂と友情を描いた青春群像劇として、映画ファンの記憶に残る作品の誕生ではないかと思います。
新感覚バイオレンス作品
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