お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価
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民主主義とは個人の豊かさである故のお供え物
2025年劇場鑑賞1本目 優秀作 71点
公開当初から好評で、ブータンの歴史や文化に触れられる良い機会だと思い、24年年末から新年1本目に鑑賞予定を立てる
作品全体の輪郭が終始脇をくすぐられている様なユーモアがあり、世界中の誰がみてもその心地よさに好感を抱く作りである
鉄砲の取引をする異国の人と通訳とおじぃさんの会話や、お坊さんに頼まれて取引締結の前に鉄砲を強奪し、それを耳にした異国の人と通訳が追跡して、山頂あたりで新たに取引を始める会話、物語終盤の選挙後の上記二人の集団に抗えず、目論みが果たせずやるせない挙動、登場する警察や贈呈されるシンボル(?)の真剣なコメディなど、至る所に前述したユーモアが楽しい気持ちにさせる
民主主義に移行が決まり選挙を開催すると報道された初動で、弟子(?)に鉄砲を満月の日までに用意せよと告げるのが、個人の豊かさ、もっというと個人の声や言葉を尊重する国家になる上で、それまでその声や言葉を問答無用で捻り潰す暴力の象徴である鉄砲を、これからを生きる国民の地深くに埋めるという動作を集いの場で行うことを早くに企んだ先見の明が、物語を引っ張るドラマやコメディのアイテムとしても、象徴としての説得力としても秀逸でした
是非
民主主義と格差社会と幸福と・・・
2024年の大晦日の夕方にとても素敵な作品に出逢えました。
この年、最初に見た映画が『PERFECT DAYS』で、最後がこの『お坊さまと鉄砲』・・・。
全然タイプの違う作品ではあるものの、[幸福]についてヒントを与えてくれたという意味では共通項を見出せるところがあったかもしれません。
同監督の前作『ブータン 山の教室』を事前に見て惹き込まれたことがきっかけで、迷うことなく映画館に足を運びました。
選挙と鉄砲・・・?
(日本では一般的に考えられない)とても物騒なモノ(鉄砲)が出てきますが、「そっか・・・、こういう使われ方なのか・・・」と、共感しながら納得しちゃいます。
人間にとって[自己肯定感]と[他者貢献]、この両輪さえ回せるのであれば選挙も必要なく、戦争だって起こりえないのかもしれません。
道祖神のモチーフが出てくるシーンには思わず「フフッ・・・」と微笑んでしまいました。
人工的に作られた豊かさではないところに[幸福]が育まれるのでしょうね。
改めてそんなことを思わせてくれた作品です。
ピュアさと無欲さ
お坊さま、さすがです!
幸福に暮らすとはどのような事なのか、この映画を観て考える事が出来ました。
物欲が満たされることや、特に必要としていないのに選挙権を行使することは、大切なことだと教育されるのは、毎日笑って生活するのに本当に必要なことなのか。
みんな武器を捨てて平和に笑って暮らせればいいのにという願いが、穏やかに伝わってくる、心がキレイになる映画でした。
高僧の小粋な企みに乾杯
キアロスタミの時間や空気を感じる。圧倒的に新しい空間と時間。僧侶と...
キアロスタミの時間や空気を感じる。圧倒的に新しい空間と時間。僧侶とて、保守的で男根が出てくるなど、何も希望があるわけではない。ただそこには争いを諌める象徴的な技術、知恵があり、それはまだこの国に生きている。選挙広報に力を入れる政府女性や、無批判的にアメリカ民主主義に期待する補佐、007のテレビを見に来る民衆。このあと、簡単に収まるわけではないだろうけれど、今のところ、移行はうまくいってるとのことである。
お金よりも大事なもの
国王の退位により立憲君主制へと移行することになったブータン。模擬選挙が実施されることを知った僧侶は次の満月までに銃を2丁用意して欲しいと弟子に頼むが…。
銃を巡る展開はなんとも滑稽で、初めての選挙に戸惑う人々、豊かな自然などブータンの魅力が詰まった作品でした。
なぜ、銃が2丁必要なのか?と思っていたのですが銃を向け合う同士ということで2丁だったのかな…と勝手に解釈しました。
近年ブータンは色々と変化を遂げてきている訳ですが、この国が持つ心の幸せを重要視する様が滲み出ていて、銃を必要とした理由が判明する僧侶の言葉にはジーーンとしました。
年明けの1本目が本作で良かったと感じた今日この頃です。
ファンタジー❓
映画の日、元旦、新宿武蔵野館の午後でほぼ満席。王政から民主化へ田舎の小さな村を舞台に模擬選挙が開かれる事になるが、何故か瞑想中の高僧が修行をやめ銃を持って来いと弟子に命じるが。ブータンの知識が国力や国民生活を国民幸福度で計る小国と言うぐらいしか知らず、それって貧しさを誤魔化してユートピアみたいに見せているだけ❓と穿って見てしまうけど。
ストーリーはドタバタでもなくニヤリとするぐらいで、アメリカを皮肉り物欲を否定するスピリチュアルさがどうも気になってしまった。
でも、高僧が銃を欲しがる意味がラスト近くでわかるのは上手く、しかも弟子の僧が欲しがる銃が007慰めの報酬❗️世界一有名な銃、自由戦士の銃、カラシニコフ❗️
見終わり、ナイフまで仏塔に埋めていたけど、やり過ぎだよ。
民主化によって発生する争い、分断の面と 自由意思の尊重の大切な面と...
美しい自然と欲のない国民
2006年、国民に愛されてきた第4代ブータン国王が退位し、王子に国王を譲位するとともに、行政の長(首相)を選挙で選び、民主化へと転換を図ることが決まった。そんなブータンで、選挙の実施を目指して、まずは模擬選挙が行われることになった。山に囲まれたウラの村で選挙の事を聞いた高僧は、なぜか次の満月までに銃を2丁用意するよう若い僧に指示し、若い僧は銃を探しに山を下りた。同じ頃、アメリカからアンティークの銃コレクターが幻の銃を探しにやって来て、南北戦争当時の貴重な銃がなぜかブータンのウラ村に有り、その銃を高値で買い取ろうとした米人に対し、仏に寄付する事を選んだ持ち主、その後のドタバタ劇が・・・そんな話。
本作だけを観ていたら、王国から共和国になったように誤解してしまったが、そんなはずないと調べてみたら、ブータン王国は現存し、イギリスなどのように王が行政を行うのではなく、選挙で選ばれた行政の長、つまり首相を決めようという事なのだと理解した。
選挙などしたことは無く、必要なのかもわからない、テレビもインターネットも無いような地方では、選挙をするということがいかに大変だったのかが観ていてわかった。
銃を何に使うのか興味深かったが、争いをなくす象徴として埋める、なんて発想が素晴らしい。
物や金に執着せず、必要なものを必要なだけ大切にするという、人間の本質のような住民の美しい心に打たれた。
ブータン山の教室、でも思ったが、これからどんどん世界中の情報が入ってきて、俗世間の金に汚い人たちも増えていくのだろうけど、心の綺麗な人々が多くいて、山の自然が美しいブータンにぜひ行ってみたい、改めてそう思った。
お坊様と説法....なら納得(笑)
予想できない結末に思わず涙した
ブータン王国について、我々は何を知っているだろう。場所はインドの北あたりか。政治?ワンチュク国王という今時珍しい王政国家。隣国でインドの強い影響下にあるだろう。価値観は国民総幸福。しかし経済的には裕福ではない。文化?インドの近くだから、カレーとか?最近では、高額の観光税導入なんてニュースもあった。映画のタイトルの「お坊さまと鉄砲」って?仏教国だろうけど、鉄砲くらいあるだろう。だから何?それくらいのこの国に対する知識を肉付けするのもいいかな。くらいの気持ちで映画をみた。そしてその知識が偏見でしかなかったことを知らされる。もう少し私が持っていた偏見が続く。
ブータンに突如もたらされた民主主義
2024年は選挙イヤーだった。国内は都知事選、衆院選、知事不信任に伴う兵庫知事選、海外ではアメリカ、イギリス、ロシア、台湾などなど。そして民主主義そのものが問われることにもなった。AIの進化に伴いAIを活用した選挙活動やフェイクニュース、AIに政治を任せると主張する候補者まで出現しただけでなく、SNSの影響など「危機に瀕する民主主義」のような言葉までも駆け巡った。そんな「民主主義」に対してどんな示唆があるのか?そんな期待を裏切る映画だった。強烈だけど優しい衝撃だった。ワンチュク国王の独断?で突如、民主主義で行政の指導者を国民が選択することが決められた。国民は民主主義に対して無知、というより興味を持っていない。それはお近くの専制国家における絶望的な民主主義とは全く異なる。国民は王政に対し何の不満も持っていない。それは自由主義を掲げる国家を見ていないからではない。為政者と国民が相思相愛だからなのだ。そんな国民に突如もたらされた選挙という仕組みに戸惑う国民をこの映画は描く。
今こそ民主主義を考える映画?という浅はかな先入観
選挙制度に対する無知な様子には思わず笑ってしまう。親族を巻き込んだ選挙活動、投票のための贈賄や恐喝まで繰り広げられ、それは子供達にまで浸透する。これまで世界中で繰り広げられたであろう選挙違反の姿の一端がここでも見られる。選挙委員会のような、選挙を啓発ではなく啓蒙しようとする機関が、対立を煽り、憎悪を伴わせる場面がある。それを目の当たりにする国民は、選挙制度そのものに対する不信感を募らせる。そうした人々の姿を上から目線で見ていた観客は私だけでないだろう。
子供が消しゴム一つ買うのに苦労する国は貧しいのか
この映画の舞台であるウラという村で、一人の娘が学校で消しゴムを使わなかったために本を破ってしまったというなんとも小っぽけな理由で先生に怒られ、友達からも仲間はずれにされて悲しむ。住民の大半が周囲に流されて投票する中で、異を唱える父親。その娘にまつわるエピソードでは、たかが消しゴムが重要な役割を果たす。それを母親の仕事のおかげで出会えた選挙委員会の役員からもらうことになったが、そんな大事なものなのに、翻って与えた役人にとってはさほど大切ではないであろうものなのに、少女はなんの躊躇もなく、役人に返してしまう。豊かさとは富:物質的に、経済的に恵まれていること、ではないという価値観が子供にまで沁み渡るこの国を支えている基盤的な道徳感の盤石さが伝わってくる。
ブータンの人々が望む政治のあり方
模擬選挙では、住民が赤・青・黄3つの色の党に投票する。それぞれ自由、発展、伝統、どれを大切にするかを選択させてみよう、という試みなのだ。結果は黄色、つまり伝統に軍配があがるということだったのだが、圧倒的というかほぼ全員が黄色に投票しているという統計学的にはありえない結果。不正ではない。模擬選挙だから不正の意味はない。だから現状に満足しているから伝統を重視したブータン人の心に合致しているということか。これさえもどうやら違うのである。
無垢なブータンの人々の国民性
選挙人登録をしようにも生年月日を知らない、鉄砲は見たことがない。21世紀なのに外国の文化といって見聞きしているものは80年代の音楽、テレビ、映画にブラウン管のテレビなど、タイムスリップしたかのような懐かしさを感じさせる。それでもそうしたものがもたらしてきたものが少しずつでも浸透している様子を描いていた。しかしこうした国民の物に執着しない、豊かさを物質的なものだけで図らない価値観は経済成長を遂げていくことを発展と考える世界の国々の人々が考え直す必要があるかもしれない。
傑作!すごい才能!!
傑作! パオ・チョニン・ドルジ監督はすごい才能だ(『ブータン 山の教室』も素晴らしかった)。
まさにこの分断の時代に向けた作品。
どこが傑作なのか、どういうふうにすごい才能なのかは、僕がごちゃごちゃ書くより本作を観ていただいたらすぐにおわかりになると思います。
追記
コロナやインフルや風邪が大流行しているということもあってか、今日も鑑賞中、洟をすすったり咳き込んだりしている方が何人もおられました。
なかにはずっとゴホンゴホンを連発しているひともいて、大変な迷惑でした。
やはり体調のすぐれない時は出歩かないほうがいいと思います。
自分の欲求を優先したい気持ちも理解できますが、少しは周囲への気づかいもしていただきたいものです。
いい歳をして、こういう配慮が欠如した大人が多すぎるなぁ。日本は。
謙虚な心の美しさと清々しさに涙
初めての選挙に戸惑うブータンの山間の村民と、
銃を巡るお坊さんとコレクター(ブローカー?)の交流を軸に話が進みます。
なにより西欧的な価値観をもつ人たちと
村民、お坊さんのなかなか嚙み合わない会話のやりとり、展開が全編にわたって楽しい。
資本主義(お金を中心とした価値観)への問いかけ、
さらには戦争の否定はもちろんテーマのひとつではあると思うけれど、
それらを皮肉的ではなく、ユーモアに溢れ、
声高に主張せずに、拍子抜けするほど爽やかに描いているので、
ピュアな村民たちの様子も相まって、
清々しい幸せな気持ちで映画を観終わることができました。
映像もブータンの山間の広い景色がお坊さんの赤い衣装にも映えてほんとうに美しく、
異国ですが、お祭りの衣装、音楽もどこか懐かしい感じがしました。
今のブータンでしか描けない、また時勢的にも今こそ観られるべき映画だと思いました。
ブータンの雰囲気が分かった。
不思議で幸せな国
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