劇場公開日 2024年12月13日

「鉄砲の意味するところに感動」お坊さまと鉄砲 ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0鉄砲の意味するところに感動

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

国民に愛されてきた国王が退位し、民主化へ転換、
そして選挙の実施を目指して模擬選挙が行われるという背景にあって、
高僧が弟子タシの僧に銃を2丁用意するように、と指示するところから始まります。

この銃をめぐって、
タシが道中テレビで観たダニエル・クレイグの007が大好きになって、
007の銃が欲しくなったり、
銃の売買を通して、コミカルなすれ違いと人間ドラマがあったりと
実に軽やかというか、微笑ましい作品に仕上がっているんですよね。
ここは唸らされる紡ぎ上げ方でした。

一方、選挙を巡っては、家庭の平和が乱されたり、学校でのいじめに発展したりと、
国王が治めていた「昔がよかった」という一面も。
民主化が必ずしも正しいのか!?を突きつけるところが、社会派ドラマとしても
実に深いなと感じましたね。
模擬選挙も結局「黄色(国王が身につけている色)」への投票が95%ということで、
国民性があらわれている結果になっているのも面白かったです。

高僧が仏塔を建てる前の儀式時に、
世界平和のために銃を埋めてその上に仏塔を建てるんだという話をしたときは
なるほどと思いましたし、そこでようやく銃の意味がわかって感動しました。
併せて、銃のコレクターとのやりとりもおもしろいんですよね。
(正しくない行動への末路を明るく描いていて、こちらも好感が持てました)

ブータンの映像も美しかったですし、脚本も素晴らしかったと思います。

パオ・チョニン・ドルジ監督の次回作を楽しみに待ちたいと思います。

ひでちゃぴん