「与えられた民主主義」お坊さまと鉄砲 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
与えられた民主主義
チベット仏教への信仰厚い、「幸せな」人々。
政府が民主主義を持ち込み、選挙なんか導入するもんだから、仲良く暮らしていた人々に対立が生まれる。「私達は今までもずっと幸せだったわ」と言う主婦の言葉は、ここに住む多くの人たちの代弁のよう。
こんな人達を敢えて近代化する必要があるのか、とも思うけど、世の中は甘くない。
ネイティブアメリカンとか、アボリジニとか、自分たちのペースで満足して生きていたであろう人々が、外から突然入ってきた知識と技術と武器を持った野蛮なこすっからい人々に騙され迫害され、生きてきた土地を追われ生きる術を奪われる理不尽は、歴史上たくさんある。
国内でも全員がチベット仏教への信仰に沿って善きように生きて、善き国王の善政に従う人々なら良いが、外部からの刺激はすでに一部に浸透していて、何も知らない善き人々を食い物にする者共が出てくることに、国民自らが身を守る知識が必要にもなってくる。
国の近代化は、生き残りのためには必須のよう。
なので国王はまずは自ら退位して国を民主化、国民の近代化を図る。さすが民に慕われる人物だ。
「幸せ」なのは「知らないから」という側面があって、ここの生活が貧しいとか不便だとか、相対的なことは他を知らなければ分からないので満足していられることもある。権利も、あることを知らなければ、そういうもの、と思うのでは。
全員が「知る」ことで困るのは、知らない人々の上でいい思いをしてきた、既得権のある人々でもある。
ウラの人たちが民主主義や選挙に困惑するのは、それが自分たちが希望して得たものではないからというのが大きいでしょう。
他にも、やはり民主主義を上から「与えられた」国を知っている。
「与えられた」当初は戸惑っただろうが、あっという間にそれがどれほど国民ひとりひとりを守るものであったかわかるようになったと思う。
そういうものではないでしょうか。
ブータンは今、どのように進めば良いのか模索している、とエンドタイトルに出ていた。
基本的にほのぼの笑える映画だが、困惑する様をちょっと面白く描くのみで、押し付けられた民主主義の皮肉を露悪的に見せているわけでもないのが良かったです。
銃が必要だったのは、平和を祈るためだという理由にぐっと来ました。
本当は全世界の人たちがこんな気持で生きていけたら良いのですけどね。
幻の高価なビンテージ銃を目の前で埋められ、大枚はたいてインドから取り寄せたでかいAK-47を2丁もお供えしたコレクターは可愛そうだけど、逮捕されたり命取られたりよりマシ。あの返礼品は、持って帰れないよね。
選挙の仕方を教えるのに、他の陣営と対立せよ、までするってどうなの❓
銃を担いだ物騒な仏僧とか、お坊さまの説法、じゃなく鉄砲、とかしょーもない日本語のダジャレが浮かんで来て脳内で脱力しました。
こちらこそコメントありがとうございました。「山の教室」も良かったですね。この映画の勢いで見ました。レビュー済みです。またのご覧頂ければ幸甚です。
共感とコメントありがとうございました。
持って帰って、税関や銃の入手を依頼した人物(彼のその先にいたとしたらですが)に、あの「鉄砲」を渡すシーンを想像するだけで、ちょっとワクワクしますけどね笑
いい映画でした。