「観る人次第」Flow キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
観る人次第
不思議なアニメ。
最近の、微細な毛の1本1本まで描写されるCGアニメとは異なり、筆で描かれる様な絵画的な動画。
「ゼルダの伝説の空気感」が近いかな。
しかし、登場する動物たちの動きはきわめてリアルで、擬人化を極力しない様にしてあるのは観ていて伝わってくる。
つまり「動物そのもの」をまずは表現したいんだな、と。
映画の中で起きていることは、我々の常識から考えて、かなり大きな災厄であるようには見える。
そしておそらくこの世界に人間は存在していた(いる)であろうことも明らかにはなっている。
一方で、この世界には我々が見たことのない巨大な生物も登場する。
これを観て「何が起きているんだ?」から始まり、観客はこれを人間社会に置き換えて何らかのメッセージを受け取ろうとする。
でも、実はこの映画の中で説明的なことはほぼされることはなく、結果として純粋に「動物たちの冒険」の物語として捉える人もいるだろう。
恥ずかしながら、私もいろんな映画を観る様になって、映画の言外に隠されたメッセージを(当然あるものとして)無理にこじつけて読み取ろうとしてしまうことがある。
象徴的に登場するいろんなパーツ。
手鏡とか。
ヒクイドリとか。
ヨットとか。
なんだか深い意味がありそうで、いや実は意味なんてものはそもそもないのかも。
そういう、ある意味「うがった」映画の見方が間違っているワケではないが、単に「スクリーン上で起きていることを楽しむ」という、映画本来の楽しみに立ち返ることも、この映画が教えてくれているのかも知れない。
ただ登場する動物たちが生き生きと活動する姿だけで、これだけ楽しめるワケだし。
もちろん、社会的・哲学的メッセージを捉えたのなら、それはそれ。
もし「描きたい何か」があったのなら私の不見識で申し訳ないんだけど、あえて作品の主旨を、受け手に委ねる作品の様に思えた。