劇場公開日 2024年12月7日

「「どうしてほしかった?」が気になった。」どうすればよかったか? にちさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「どうしてほしかった?」が気になった。

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

この作品をみて、「考えさせられる」とはあまり思いませんでした。撮影者であり家族の長男である監督は姉を「医者に診てもらって入院させるべき」という意見を持ち続けていたが、両親は姉を家に居させる方針で納得しており、意見の異なる両者の間で監督は両親が「もっと早く病院に連れて行くべきだった」と言うのを期待して「どうすればよかった?」と問うているように見えました。

統合失調症の方の家での様子や薬を処方した後の変化、そして家族の容姿の変容から30年という時の経過をまざまざと見ることが出来たのはまさしくドキュメンタリーで、印象的でした。私にとってはこの一人一人の「老い」を観ることができたのが一番の価値でした。他の方々の感想の中には「彼女の20年を無駄にした」などあるが、そんな簡単に人の人生のある期間が無駄だったかどうかを他人が判断できるものではないと思いました。現代で精神疾患と定義されるもののうちで治療(周りと同じ状態にする)が出来うるものは治療しないとその人の人生は無駄だ、とは思いません。統合失調症の薬が開発される以前、あるいは統合失調症という症状が定義される以前に同様の様態を示していた人々あるいはその周囲の人々は不幸だったのか疑問に感じます。

強いて言えば、薬を処方され会話できるようになった姉に「どうしてほしかった?」と問うた時にどのような返答があったのか気になりました。この姉は両親を恨んでいたのでしょうか。

もし自分の姉が統合失調症を発症したらどうするか。多分病院に連れていくような気がしますが、それは「姉の幸せのため」ではなく「自分のストレスを減らすため」だと思います。

にち