劇場公開日 2025年1月10日

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「金太郎の生きざまに学ぶ」サラリーマン金太郎【暁】編 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0金太郎の生きざまに学ぶ

2025年1月12日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

原作マンガは多少読んだことがあり、高橋克典さん主演のドラマも少しだけ知っているという程度ですが、型破りサラリーマンの痛快なストーリーだった印象があり、ちょっと興味があって鑑賞してきました。

ストーリーは、元暴走族のヘッドで、今は亡き妻・明美の忘れ形見の竜太と暮らすマグロ漁師・矢島金太郎が、海で漂流していたヤマト建設会長・大和守之助を助けた縁で、ヤマト建設に入社してサラリーマンとなり、学も知識もないが何事も恐れずぶつかっていく実直な人柄と根性で、派閥争いで腐敗した会社に旋風を巻き起こしていくというもの。

昭和の香りを色濃く残す主人公なだけに、ストーリーは単純明快です。そのため、あっと驚くような展開はありませんが、それなりに伏線回収もあってなかなか楽しめます。正直言って、かなりラッキー続きで、金太郎が出会う人々が芋づる式につながっていて、物事がうまく運びすぎている気もします。しかし、おかげでほとんど無駄な描写がなく、テンポよく描かれているとも言えます。

すべては人々を惹きつける金太郎の人徳のなせる技といった印象を受けますが、これこそが、令和の時代になって改めて本作を映像化した意味なのではないかと感じます。コスパ、タイパと、何かと損得勘定しがちな現代の風潮の中で、自分の信念に基づいて誰かのためになりふり構わず全力を尽くすという金太郎の姿勢は、熱く訴えかけてくるものがあります。

ただ、だからこそ、そこに説得力を持たせるために、もう少し金太郎の純粋な人柄や実直な奮闘ぶりをしっかり描き、周囲の人たちが彼に惹かれていく心情を映像で納得させてほしかったと思います。特に、同僚の若い3人が自身の進退をかけてまで協力する姿は、本作の根幹に関わる部分だと思うので、ここがより丁寧に描かれているとよかったです。

劇場で観なければならないほどの作品ではないかもしれませんが、観ても損はないと思います。本作は二部作で、1か月後に公開される後編も楽しみです。金太郎のさらなる破天荒な暴れっぷりを期待しています。

主演は鈴木伸之さんで、金太郎をのびのびと演じています。脇を固めるのは、榎木孝明さん、尾美としのりさん、橋本じゅんさん、浅野温子さん、城田優さん、石田ニコルさん、文音さん、影山優佳さんら。ともするとちょっとオーバーで浮きそうな鈴木さんの演技も、周囲のベテラン俳優陣の落ち着いた演技とバランスがとれていて、いい塩梅の雰囲気を醸し出しています。

おじゃる