「ディズニーアニメ実写の黒歴史姫」白雪姫 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーアニメ実写の黒歴史姫
『白雪姫』と言えば、世界映画史初の長編アニメーションであり、今も続くディズニーアニメの第1回作品。
アニメーションのみならず、映画史に残る名作中の名作。ディズニーアニメはここから始まり、白雪姫は以後のディズニープリンセス/ヒロインの原型となり、女王もまたディズニーヴィランを確立。ディズニーにとっては永遠不滅の至宝、美しさ。
後世への影響も多大で、本作を見てアニメーションや映画の世界に入った人も多い。ちなみにクリント・イーストウッドは幼い頃、初めて見た映画だとか。日本でも手塚治虫や鳥山明もリスペクト。
ディズニーとは関係ナシの映像化やパロディ/ネタ、実写化も数知れず。剣を持って闘うヒロイン・アクションになったり、『Dr.スランプ』では千兵衛さんが白雪姫に扮する話とかあったっけ。
本当にリスペクトされ続け、愛され続けている。
遂に、満を持してディズニーで実写化。
絶対失敗は許されない。失敗したら、偉大な作品と歴史とディズニーそのものに泥を塗るようなもの。
なのに…
ディズニー、やっちまったか…!?
昔々、とある国に心優しき王様とお妃様がいました。
待望の子供が産まれ、同じく優しい心を持ったプリンセスとなりました。
両親を相次いで亡くしましたが、優しい心を持ったまま、美しく成長。その名は…
白雪姫…じゃない?!
やっぱりね、イメージって大事だと思うの。『リトル・マーメイド』の時もそうだったけど。
勿論レイチェル・ゼグラーは注目株の魅力ある女優さんだけど、白雪姫のイメージじゃないんだよね…。
グリム童話の原作やディズニーアニメでは白雪姫は、白雪のような肌の女の子。それを褐色のラテン系が演じて白雪姫…?
今回、命名の由来がちと違うとは言え、でもやっぱり白雪姫のイメージじゃないんだよね…。白雪姫と言うより、『ウィッシュ』のアーシャ。
ハリー・ベイリーは『プリンセスと魔法のキス』の実写、レイチェル・ゼグラーも『ウィッシュ』の実写ならイメージ通りだったろうに。
『リトル・マーメイド』の時も書いたが、こんな事を言う事自体、私が頭が固く、人種差別と思われるかもしれないが、でもでもやっぱり、オリジナルを尊重し、その雰囲気やイメージのまま見たい…。これは変わらぬ私の意見だ。
王様とお妃様に変わって、新たな女王様が現れました。
女王様は大変美しいが、何より自分の美に執着し、恐ろしい魔女でもありました。
優しさの欠片も無く、民から自由や平和を奪い、国を我が物とし、白雪姫を使用人のように扱いました。
女王は魔法の鏡に聞くのです。
鏡よ鏡、鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?
それは勿論あなた様、ガル・ガドット様です。
今回、映画はここで終わっていいのである。
レイチェル・ゼグラーには悪いけど、今世界中の女優を見ても、ガル・ガドットの美貌に勝てる人はなかなか居ないって!
美しさは勿論、存在感、歌声も披露し、楽しそうにきっちりヴィランの役割を。
ガル・ガドットが居なかったら興味や関心はもっと薄かっただろう。
やはりガル・ガドットは救世主=“ワンダーウーマン”なのである。
ある時、城にコソ泥が入りました。
女王は処刑を命じますが、白雪姫は慈悲を乞いました。
それから鏡の答えは変わりました。
世界で一番美しいのはだぁれ?
白雪姫です。
女王は激昂しました。あの小娘をヤっておしまい!
そう手下に命じましたが、殺せず、森の中に逃がしました。
森の奥へ、奥へ、奥へ。
やがて家がありました。
疲れ果て、ベッドで寝てしまうと、“主たち”があの耳馴染みの陽気な歌と共に帰って来ました。
七人の小人たち…だが、ここも今回論争の一つ。
白雪姫はオリジナルのイメージから改変されたのに、小人たちはイメージのまま。
つまりそれはアニメチックにデフォルメされており、生身の役者と並ぶと違和感…。
小人たちの描写、CGIで小人症の俳優が演じてない事、小人症の俳優が生身で演じるべきだった…。ピーター・ディンクレイジらも苦言。
ポリコレに必死なくせに、彼らだけは“別”なのか…?
小人たちと楽しく暮らしていましたが、自分が居ると迷惑になると去りました。
森の中をさ迷っていると、出会ったのです。
王子様…かと思ったら、再びコソ泥と。
今回の大改変の一つ。王子様は登場しない。変わって、コソ泥のイケメン、ジョナサン。
『塔の上のラプンツェル』や『アナ雪』も相手は王子様じゃなかったけど、そういう設定だからいいんだけど、昨今の風潮だからとは言え、元々の設定を変えるかね…?
王子様が登場しないので、名曲『いつか王子様が』が使用されない。『アラジン』で『ア・ホール・ニュー・ワールド』が流れないようなもの。
でも結局は王子様の“代役”なので、このコソ泥と恋に落ちる。
白雪姫とコソ泥の恋。待望の『白雪姫』の実写化で、そんなのを見たいのか…?
ジョナサンは白雪姫の父親、王に忠誠を誓い、仲間の山賊たちと悪しき女王と闘う。
白雪姫が生きている事を知った女王の命令で兵たちが奇襲し、一戦。
白雪姫も機転を利かせて共に闘うのだが、
アレ…? 私ゃディズニーアニメ実写の『白雪姫』じゃなく、クリステン・スチュワートの『スノーホワイト』を見ているの…?
オリジナルをベースにしつつも、ここからかなり新解釈が多くなってくる。
ジョナサンが女王に捕まったり。
白雪姫が女王が化けた老婆の毒リンゴを食べて仮死するのは同じ。
目覚めさせる事が出来るのは王子様のキスなんだけど、今回王子様は“追放”させられたので、定番の真実の愛のキス。
するのはジョナサン。まあ、そうなるわな。
相手役の変更とか新解釈とか言うなら、小人の中でも特に心を通わせたおとぼけで良かったのでは…?
見た目や立場は関係ない。それを得意気に謳ってるくせに、それをやる勇気は無かった。結局、見た目なんだね。
目覚めた白雪姫は女王と対峙。
民や兵たちを思う。皆や自身も鼓舞。
白雪姫の内面の強さ、美しさ。女王を圧倒。
追い詰められた女王は割れた鏡によって自滅。
…アレ? こんなラストだったっけ…? いや、『白雪姫』は最後に見て久しいけど、間違いなくこうじゃなかったのは断言出来る。
昨今だからこうなったような新解釈ラスト。
そのメッセージも分かるのは分かるし、いいのはいいんだけど…、
でもこれで、新解釈や現代版『白雪姫』と言えるのか…?
王子様のキスを待ってるようじゃ今はもうダメ。自らが立ち上がり、立ち向かう。
ならばそれを『白雪姫』の実写でやるんじゃなく、オリジナルの作品でやれば良かったのでは…?
待望の『白雪姫』の実写で、新解釈と言うより意味を履き違えた改悪でやるような事…?
皆が見たかったのは、あの『白雪姫』。今時と思われてもいい。
だけど、白馬の王子様とか駆け付けてくれるとか目覚めさせるキスとか、今はもう絶対にやっちゃダメな事なの…?
そういう夢や憧れを見る事自体、愚かなの…?
それこそ差別や偏見を感じる。
変わらぬ夢や憧れ、自由があったっていいじゃないか。
それを映画で魅せてくれたって。
夢を描き続けたディズニーが変わらず魅せてくれたって。
それをディズニーが否定するな。
『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』コンビによる新曲もいいが、既存の名曲『ハイ・ホー』の心躍る感には敵わない。
マーク・ウェブは今回“アメイジング”な仕事ぶりとは言えず、共同脚本のグレタ・ガーウィグも『バービー』でやった事を『白雪姫』でやろうとして…。誰得の『白雪姫』実写…?
レイチェル・ゼグラーがオリジナルを古臭いと否定したり、今のディズニーで新解釈/現代版をやる時点で結果は目に見えていた。
ウォルト・ディズニーが心血注いだ世界初の長編アニメーションで自社の第1回作品。その待望の実写化。
それがこんな形で改悪されて…。
つまらなくはなかったが、ガッカリ感が半端ない。
こんな形で見たくなかった。ディズニーアニメ実写の改悪も、もういい加減勘弁。
ディズニーアニメ実写の黒歴史姫。