劇場公開日 2025年1月17日

「老いゆくひとの生の姿」敵 pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0老いゆくひとの生の姿

2025年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なかなかの力作。
多くの人が抱えている潜在的・顕在的な不安を、独特の物語世界をもとにして映画で表現した作品——ということでいいでしょうか。

とりわけ中年以降の男性には(あるいは女性にも)切実に響くのではないでしょうか。

容赦なく迫り来る老いと、その先に待っている死。生きている限り誰もそこから逃れることはできません。
老境の生活の不安、将来の不安……。

この作品には、生々しいともいえる生の姿が描かれていると感じました。
生きるって、人間の生って、残酷だなぁ。
「敵」というのは、人間の「生」そのものなのかもしれないなぁ、なんて考えたりして。

何度も映し出される料理と食事のシーンが印象的でした。
食べるということは、まさに生きるということ。
それから、「音」も。主人公の発する様々な生活の音。生きているということは、音を立てるということなのだと今更ながら思った。音を立てなくなったとき、ひとは死ぬのだな、と。
情報量を絞ったモノクロの映像で表現することによって、それらの「音」が際立っていると感じました(これも監督の狙いであることは確かでしょう)。

主演が長塚京三というのもよかった。熟練の役者の演技は、安心して鑑賞ができました。

追記
それにしても、河合優実ちゃん。これだけ多くの監督がつかいたがるということは、やっぱり「持ってる」んだろうなぁ。相当に。
まあぼくも『サマーフィルムにのって』で彼女の魅力の虜になった一人ですが。いずれにしても“選ばれたひと”であることに間違いはないですね。

peke