「混沌の妙味」敵 バーバヤガーさんの映画レビュー(感想・評価)
混沌の妙味
こわい映画でした。
大学教授だった男性が、
老いて内部から崩壊していく。
奥さんが亡くなり、一人暮らしの元大学教授。
なかなかシュッとしてカッコいい(長塚京三さん。このキャスティングはドンピシャ)。
昔の教え子が訪ねてきていい感じになっちゃったりする。
料理も淡々とこなし、レバーを牛乳に浸して臭み抜きをするあたり、ほんとにきちんとした生活をしていて感心する。
しかし、ポツポツあった仕事もなくなってしまうと、曜日、日付の感覚がなくなり、次第に昼なのか夜なのか時間もあやふやに。
生活がだんだん崩れていき、妄想が進む頃にはカップ麺を食べるようになる。
独居老人の生活の低下と老いの進行は比例するから、この辺りの表現は正確だし上手いなと思う。
白黒の画面が時間の区切れをいっそう曖昧にして、だんだん夢なのか現実なのか妄想なのかもわからなくなってくる。
老い、ボケを内部から見るとこういうことなんでしょうか?
内部はゆっくり崩壊していく。
外から見ると、ある日突然言動や行動がおかしくなったように見えるのだけれど。
結末に向かって混沌はどんどん激しくなり、見ている方も何が現実かわからなくなってくる。
彼が見る妄想を観客も一緒に見る
こわい映画でした。
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