劇場公開日 2025年1月17日

「老人と三人の女」敵 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5老人と三人の女

2025年1月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

筒井康隆の原作は未読。年老いた元大学教授の日常生活が丁寧に描かれる。焼き鳥を自分で作るほど、食事にもこだわりがあるよう。そんな平穏な一人暮らしに、見えない「敵」の影が忍び寄る…
とにかく長塚京三が主人公にぴったりはまっている。老体をさらしつつ、インテリで含羞を滲ませた役柄を演じられるのは、彼以外では考えられないほど。
亡き妻、かつての教え子、現役学生の三人の女性を、みな主人公が主観的に見た姿として描くことを徹底しているのも、面白い。芸達者な女優陣が、うまく色合いの違いを見せている。
後半の、現実と夢想が混然となり、侵食し合っていく様は、まさしく筒井康隆ワールド。しかし、滑稽さと情けなさを見せつつも、実写にすると、どうしても支離滅裂なものに見えてしまう。モノクロにしたのは正解だけど。
タイトルにもなっている「敵」は、素直に「死」のメタファーと読んだ。安らかで思い通りの死を迎えることは不可能なのだと、自分事として考えさせられる。

山の手ロック
ノーキッキングさんのコメント
2025年1月29日

死のメタファー、同感です。

ノーキッキング