「<ストーリーを追ってはいけない映画かも>」敵 HiraHiraHirappaさんの映画レビュー(感想・評価)
<ストーリーを追ってはいけない映画かも>
●今、流行りはストーリーではなく「人物」にフォーカスする映画か
一昨年の「Perfect Days」、昨年の「ナミビアの砂漠」など、いずれもストーリーを追う映画ではなく、ただただひとりの人物の行動を追う。説明的なシーンは少なく、一人の人物像を感じとる事で成り立っている。
現在公開中の「敵」も、そんな映画か。
老境の高名な仏文学者。 出だしは、まさに人物が違うだけでPerfect Daysのような描き方だ。説明的なシーン設定もなく、淡々とした毎日をひたすら描き出す。すると、人物像も自然と浮かび上がってくる。そんな日常の中に、ほんの少しのノイズがヒタヒタと忍び寄る。
「敵」とは何者なのか。「敵」はどこにいるのか。「敵」の正体は? と、こう書くと、ストーリーを追って推理するような映画だと誤解されかねない。重ねて言う、理解するのはストーリーではない。人物のありのままの姿だ。
どんなに学があり高名であり、何不自由ない生活を自分自身で送れていたとしても、逃れられない「老い」。 昨今、PLAN75やロストケア、正体など、老いの社会問題をテーマとした映画が続々と生み出されているが、この映画は、老いのパーソナルでセンシティブな部分にフォーカスした問題提起となっているようだ。
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