ナポレオン ディレクターズ・カットのレビュー・感想・評価
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劇場版とここまで印象が違うとは!
ナポレオンの最初の妻で、ヴァネッサ・カービーが演じたジョゼフィーヌのエピソードをメインに、カットされたシーンをいくつか復活させたディレクターズカット版。劇場版にはピンときていなかったが、ようやくどういう意図を持った物語だったのかがわかった。タイトルはナポレオンでも、ジョゼフィーヌは明確にもうひとりの主人公だといえる。
ざっくり追加シーンをもとにジョゼフィーヌについて追ってみる。フランス革命の混乱の中、貴族階級だったために元夫が処刑、自らも牢獄に入れられ、いつギロチン送りかと怯えていたシングルマザーが、なんとしても生き延びようと決意する。そこには自分だけでなく、子供たちと一緒にサバイバルするのだという強い意志もあっただろう。
釈放されて家に帰ると、子供たちを守っていてくれたのはメイドのルシル。演者のインタビューによると、ジョゼフィーヌが生まれ育った植民地マルティニーク島からの付き合いだそうで、ジョゼフィーヌの決死の世渡りをサポートし、ときに背中を押す存在になる。ほとんど運命共同体である。
しかしどういうつもりだったのか、ルシルは恋人関係となったナポレオンの副官を通じて、エジプト遠征中のナポレオンにジョゼフィーヌの浮気をチクる。そして、ジョゼフィーヌ許さん追い出してやると怒り心頭のナポレオンに、後釜でも狙うかのように接近を図るのだ。
かといって(身分も違いすぎるだろうが)完全に裏切るわけでもなく、世継ぎ問題でナポレオンがジョゼフィーヌと離婚しても、ジョセフィーヌのもとに留まっていて、一筋縄ではいかないシスターフッド的なものを感じる。
とまあ、劇場版で完全にカットされてしまっていたのは、時代や社会に必死て立ち向かっていた女性たちのドラマだったりする。この映画のナポレオンはやたらとちっちぇえ人物に描かれているが、権力闘争と戦争にあけくれる男社会の皮肉な象徴として、あえて卑小に描いていたのだと思われる。
そしていろんな意味で不均衡な夫婦だったナポレオンとジョゼフィーヌは、やがて共依存的な絆で、互いの心の支えとなっていく。劇場版でもナポレオンのジョゼフィーヌへの過度な執着が描かれていたが、ジョゼフィーヌを描いて初めて物語の両輪が回りだすのだなと、ようやく納得がいった次第です。
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